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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第44回 お屠蘇(とそ)について

皆様におかれましては新しい年を清々しい気持ちで迎えられたことと存じます。お正月はやはり、なにか特別な月のように感じますね。古来よりお正月に無病長寿を祈って飲まれる『お屠蘇(とそ)』を、ご家族で飲まれた方も多いのではないでしょうか。今回はこのお屠蘇についてお話ししたいと思います。

お屠蘇の由来は、邪気を「屠(ほふ)り」生気を「蘇らせる」ために飲むという説があります。現代ではお屠蘇を飲むというと、単に日本酒を飲むことを指す場合もあるようですが、本来は「屠蘇散」または「屠蘇延命散」と呼ばれる5~10種類の生薬を合わせたものを小袋にいれて、それを漬けこんだお酒のことを指します。唐の時代の中国より伝えられ、平安貴族の正月行事に使われていたようです。紀貫之の「土佐日記」にも記述が残っています。生薬材料が手に入るようでしたら調合してもよいですし、今ではドラッグストアなどで販売されていることが多いですね。

屠蘇散の内容……時代、地域によっても異なりますが、多く重複している成分は以下のような生薬になっています。

  • 白朮(ビャクジュツ)キク科オケラまたはオオバオケラの根
  • 山椒(サンショウ)サンショウの実
  • 桔梗(キキョウ)キキョウの根
  • 肉桂(ニッケイ)シナモンの樹皮
  • 防風(ボウフウ)セリ科ボウフウの根
  • 陳皮(チンピ)ウンシュウミカンの成熟した果皮
  • 細辛(サイシン)
  • 乾姜(カンキョウ)

内容から見てわかるように、スパイス系のものが多いですね。胃腸の運動を改善して体を温める作用のある成分でできていますので、寒いこの時期にはピッタリと言えそうです。

【お屠蘇の作り方】
現代のお正月では日本酒がそのまま使われることが多いようですが、この時期しか出回らない屠蘇散を使って作ってみてはいかがでしょうか? 日本酒に5~8時間ほど浸しておくだけで、風味豊かなお屠蘇になります。大晦日の夜に漬けておけば、元旦に家族で頂けます。
年少者から順々に頂き、最後に一番年長者が飲むのが一般的なようです。消化促進の香りに酔いしれて、おせちなどをたくさん食べすぎないようにくれぐれもご配慮を。