サンダルウッドは日本でも古くから用いられている、白檀から採れる精油です。「白檀」と聞くと、お線香の香りと直結して感じられる方も多いと思います。それもそのはずで、仏教の伝来とともに広がったと言われています。
「香り」は英語ではperfumeですが、その語源はラテン語のper-fumum(煙を通して)だと言われています。祈りや思いを、植物や香木を焚いた煙に託して、空へと届けようとした古代の人々の無形の意識が、香りとして伝わってくる気がします。
さて、サンダルウッドの香りを嗅いだとき、その甘くて柔らかい品のある香りにうっとりとしてしまうわけですが、私の友人がうっとりとしていてはいけないときにサンダルウッドを使ってしまったという逸話が蘇り、今でも苦笑してしまうのです。それはちょうど、アロマテラピー検定試験の前日でした。以下は友人のノンフィクションのお話です。
彼女は一通りの勉強を終えたので、リラックスして明日を迎えようと大好きなサンダルウッドの精油でパックをしようと思いついたそうです。「鎮静作用があるこの香りを使えば、熟睡できるに違いない」……そう思ってクレイに少し多めのサンダルウッド精油を入れてパックを作りました。思惑の通りに癒されて、熟睡できたそうです。
そして試験当日の朝、目が覚めてからなんだか香りが気になってしょうがなかったそうです。電車を乗り継ぎ会場に行って、鼻に意識を集中させると、やはり白檀に包まれている感じがする……。
そうなんです。サンダルウッドの精油は揮発速度が極めて遅い、ベースノートが主であることを忘れていたのです。持続時間は約12~24時間。良質なものを多量に使うと、あと残りの香りがずっと続きます。しかも彼女が受けた試験には香り当てテストがありました。サンダルウッドの香りが終始気になり、大変だったとのことです。
彼女は優秀だったためテストには無事合格しましたが、これはとてもためになるお話となりました。それ以来、私のアロマ友達の間では「テスト前日にサンダルウッドでパックしてはならない」という約束事ができたほどです。万が一、テスト中にうっとりと癒されてしてしまっては大変です(笑)
特に他の人に香りをお勧めするときには、香りの好みだけではなく、持続時間や作用を弁えたうえでお伝えしなくてはと痛感した出来事でした。でもやっぱり、癒されたいときにはふっとこの甘い香りに包まれたいと思ってしまうほど、サンダルウッドは魅力あふれる香りと言えますね。
【サンダルウッド】
学名/Santalum album
科名/ビャクダン科
主産地/インド
蒸留方法/心材・水蒸気蒸留法