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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第49回 香りのメモリー 4.ユーカリ

ユーカリはあの独特な香りの変化が特徴的です。変種もとても多いため、葉の細長いものや丸いものなどさまざまあります。一番オーソドックスなのはユーカリ・グロブルス種ですが、ラディアタ種やシトロネラ種など、精油の世界でもたくさんの種類があり、一定の香りを思い浮かべることが難しいと思います。
そして何より、一つの精油の香りを時系列で追ってもどんどん変わっていきます。最初は、胸に塗るタイプの咳止めのようなスッとした爽やかな香りですが、数日、数か月と使っていくとどんどん酸化され、香りの質が大きく異なっていきます。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
それはユーカリ特有の香り成分である、1,8-シネオールの構造にあります。

1,8-シネオールはモノテルペン骨格を持ったオキシドです。つまり、Cが10個という小さな骨格の中に、不安定なOを抱きかかえている状態です。この1,8-シネオールが精油成分の約7割を占めているのです。精油の小瓶を開けた瞬間から、どんどん1,8-シネオールが酸化され、外に揮発していきます。オキシド類が多いということは、殺菌・抗菌作用がとても高く、また刺激性も強いといった特性があります。
そのため、ユーカリと言えば、風邪やインフルエンザ対策に香りを芳香浴として漂わせておくことが一番メジャーな使い方だと思いますが、ここで一つ注意が必要です。それは刺激性の高さです。あまり日常的にユーカリの香りを使ってしまうと、粘膜に刺激を与えますので、咳が誘発されたり、目に刺激を感じたりすることがあるのです。刺激が厄介だなと思うときには、同じフトモモ科のティートリーをお勧めします。1,8-シネオールは3割になりますが、抗菌作用はある程度高く、刺激性も弱い香りだからです。

話は大きく変わりますが、ヨーロッパ圏やオーストラリアの邸宅では、ドライリースが玄関に飾ってあるところが多いです。この中にかなりの確率でユーカリの葉が使われています。家の入口に香りの強いものを置くのは魔除けの意味合いからとも考えられますが、葉の形もおしゃれで、ドライになっても品のある香りがあるため、好まれるのも頷けます。
私はユーカリが入った花束をもらったときには、見ごろを終える頃にいつもユーカリだけを集めてドライにします。逆さにしてぶら下げておくだけで香りが立ち、ちょっと玄関が欧米化するのでとてもお得ですよ。

【ユーカリ】
学名/Eucalyptus globulus
科名/フトモモ科
主産地/オーストラリア
蒸留方法/葉・水蒸気蒸留法