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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第53回 香りのメモリー 8.ゼラニウム

窓辺の植え込みなどでもよく見かける、ピンクや赤の愛らしい花をつけるゼラニウム。精油は優しい花を連想させる甘い香りがしますが、意外にも葉の水蒸気蒸留法で得られる香りです。その愛らしい姿から愛好家も多く、園芸品種としても多種類知られています。

目で見ても香りを嗅いでみても魅力的な植物でありますが、葉っぱの裏側を指で少し擦ったときにふわっと香り立つあの驚きを多くの方に知っていただきたいといつも思うため、講座の一環で植物園案内をする際には必ず立ち寄る植物です。

ゼラニウム精油の女性らしい甘い香りの正体は、ゲラニオールという成分によるものです。
ゲラニオールはローズ精油などにも含まれている、人が好む香りランキングではトップ3に入る成分ですから、魅了されるのも頷けます。また、少し専門的な話になりますが、ゲラニオールには免疫力を高める可能性があることが多くの実験から示唆されており、女性ホルモン様作用に注目されています。

余談になりますが、生徒さんにこの香りの好き嫌いを訊くと、まちまちであることが分かります。面白いことに人にもよりますし、時期にもよります。つまり、この間はゼラニウム精油ばかりを好んで選んでいた人が、今日はなんだかしっくりこない、といったことが頻繁に起こるのです。これもひとえに、ゼラニウム精油の女性ホルモン様作用の影響だろうと思います。

もう一つ、ゼラニウム精油について忘れられないエピソードがあります。10年ほど前、タクシーに乗ったときのことです。次の仕事に向かう前に気持ちを切り替えるため、降り際に自家製のゼラニウムの香油を少しつけたところ、運転手さんが「とても素敵な香りですね! なんという香りですか?」とミラー越しに声を掛けてくれました。突然のことに驚いて話を聴くと、この運転手さんは香りに敏感な方で、いつも女性客の香水が鼻について仕方がなかったそうです。ですが、私がつけたゼラニウムの香りがあまりにも良い香りだったために慌てて声を掛けたというのです。

ひょんなところでアロマ男子を発見してとても嬉しくなった私は、持っていたゼラニウムの香油を運転手さんに差し上げました。後になって、こういうところが大阪のおばちゃんだなぁと我ながら反省した次第です。今となっては香りが繋いでくれた、私にとって懐かしいエピソードの一つです。

ゼラニウム

【ゼラニウム】
学名/Pelargonium graveolens
科名/フウロソウ科
蒸留方法/葉の水蒸気蒸留法
主産地/フランス・スペイン・モロッコ・エジプト・イタリア・
南アフリカ