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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第55回 香りのメモリー 10.ラベンダー

ラベンダーと言えば、アロマテラピーの代名詞のような存在ですよね。実際に、「アロマテラピー」という言葉を最初に提唱したフランスの科学者、ルネ・モーリス・ガットフォセも、実験中に火傷を負い、咄嗟にラベンダー精油を傷口に振りかけたことをきっかけに、芳香成分には何らかの薬理作用があることに気づきました。

どことなく洋風の香りであると思いがちですが、ラベンダーは日本人が好むアロマのトップ3には常に入っていますし、北海道富良野地方ではラベンダーが実際に栽培され、永く精油も抽出されています。富良野のラベンダー精油の香りも、プロヴァンス産と比べて決して引けを取らないと感じたことがあります。

ラベンダー精油の作用を見ると、殺菌作用、鎮静作用、抗炎症作用と、万能に思えるほどの作用が知られています。これは一番良く知られている精油ですから、歴史的に見ても研究テーマとされる機会も多いという背景もあると思いますが、「困ったときにはラベンダー」というアロマセラピストも多いと思います。
そんなポピュラーなラベンダー精油も、妊婦には慎重に使用すべきという点だけは押さえておくべきです。特に妊婦が使用して体調に影響があったという報告は、日本で推奨される濃度では確認されていませんが、筋肉を緩めてリラックスに導く作用とホルモンバランスを整える作用があることから、時期によっては要注意とされる専門家もいることを忘れてはいけません。

ラベンダーの有効成分はなんといっても酢酸リナリルです。高度が高いところで育ったラベンダーは酢酸リナリル含有量も高いと言われており、その生育地によって区別されて販売している精油メーカーもあります。また、多くの品種があり、一般的なラベンダー・アングスティフォリアの他にも、ラベンダー・スーパーやラベンダー・スピカなどもあります。

ポピュラーゆえに奥も深い、そんなラベンダー精油。ラベンダー自身は人に好かれようとして身にまとった香りではないはずですが、その香りが人を癒すがゆえに人に好まれ、自身の可能性を伸ばして、人と共に進化した、そんな不思議なハーブの女王と言えると思います。

ラベンダー

【ラベンダー】
学名/Lavandula angustifolia
科名/シソ科
花と葉/水蒸気蒸留法