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女性ヘルスケア専門薬剤師 松原爽が伝える 知っておきたい! 現代女性のヘルスケア

第7回「月経がはじまる前のココロとカラダの不調」

■月経がはじまる前のココロとカラダの不調を知っていますか? 多くの女性が感じている月経中の不調。しかし女性は月経中だけでなく月経前にも何らかの不調を抱えていることをご存知ですか?
月経中に起こる生活に支障があるような症状のことを月経困難症といいますが、月経前にもPMSやPMDDといった症状・障害が起こることがわかっています。月経前の不調に関しては「病気ではないから我慢しなくてはいけない」、「周囲が理解してくれない」など、苦しまれている女性も多いようです。

PMSやPMDDについてはまだまだ知られていないことも多いのですが、女性にとっては毎月繰り返すもので、個人差がありますが酷い場合は人間関係や社会活動にも支障をきたすこともあります。

女性は月経中だけでなく、月経前も何らかの不調を抱えています

■PMS(月経前症候群)とは PMSとはPreMenstrual Syndromeの略で月経前症候群のことです。
月経の3~10日くらい前から始まる精神的あるいは身体的な症状で、月経開始とともに減退または消失します。
症状としては、イライラやのぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着きがなくなる、憂鬱になるなど多岐に及びます。
程度の差はあれ、日本女性の7割近くが月経前に何らかの症状を抱えているといわれており、その症状が生活に支障を与えるようであれば治療が必要になります。
PMSの原因にはいろいろな説がありますが、排卵を抑制すると症状が抑えられることが分かっているため、黄体ホルモンが誘因であるといわれています。

■PMDD(月経前不快気分障害)とは PMDDとはPreMenstrual Dysphoric Disorderの略で月経前不快気分障害のことです。
PMS同様、月経の3~10日くらい前から始まり月経開始とともに減退または消失しますが、焦燥感や不安感、脅迫感、涙もろくなるなど精神症状がPMSよりも強く表れます。
PMDDは人間関係や社会活動など日常生活に支障をきたし、生活の質(QOL)を著しく低下させるため治療の対象となります。

■PMS/PMDDの治療 PMSやPMDDは医師による問診で診断され、症状に合わせカウンセリングや生活指導、薬物療法などが選択されます。

<症状の記録>
いつどのような症状が出たかなど症状の記録を取ることで、自身の症状と月経周期との関係を認識することができます。

<生活指導>
規則正しい生活や規則正しい睡眠、適度な量の運動を定期的に行うようにします。
また、コーヒーやアルコール、塩分は症状を悪化させる可能性があるので減量するようにします。

<薬物療法>
比較的軽症であれば排卵を抑えることのできるOCやLEPなどの女性ホルモン製剤を使用します。その他にも鎮痛剤、安定剤、漢方薬などを使用します。
症状が中等症以上になると、SSRI(セロトニン選択的取り込み阻害剤)などの軽い抗うつ剤が処方されることもあります。
なお、日本でも発売されているドロスピレノンを含有したLEPは身体症状と精神症状の両方に効果があることが分かっており、海外ではPMDDの適応*を持っています。

*日本では適応がありません

PMS/PMDDは月経周期における女性ホルモンの変動が関連している可能性があることから、婦人科の医師にも相談できます。月経前に不調がある場合は月経トラブルの一つとして相談してみてください。


<婦人科検索>一般社団法人日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
http://www.jmwh.jp/z-ninteisya.html
NPO法人女性の健康とメノポーズ協会 医療機関のご案内
http://www.meno-sg.net/?page_id=189