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女性ヘルスケア専門薬剤師 松原爽が伝える 知っておきたい! 現代女性のヘルスケア

第9回「40代! 女性特有の健康課題と対処法」

■40代女性の月経トラブル 40代は子宮内膜症や子宮筋腫などの女性特有の疾患の好発年齢のため、月経時の痛みが強くなってきたり、月経量も多くなったりと、月経困難症や過多月経の人も多くなります。月経時の痛みが以前より増してきた、月経量が以前より増えてきたなどのサインは婦人科受診の一つの目安となります。
このような、月経時の痛みや出血のコントロールには、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)という選択肢がありますが、40代になると体重が増えたり血圧が高くなったり女性ホルモン製剤のリスクを上げる要因を持つ人も増えてくるため、最近では局所的な効果が期待できる子宮内システム(IUS)といった医薬品も40代女性の選択肢の一つとして考えられています。

■意外と知られていない40代女性の避妊の重要性 国内の統計報告によると、実数としては少ないものの、40代後半女性の妊娠総数に占める中絶の割合は50%を超えており、10代の女性の次に高いことが分かっています。
40代になって閉経が近づいて月経が不順になっていたとしても、完全に閉経するまでは妊娠する可能性があることを知っておく必要があります。
意図しない妊娠を避けるためには、女性が主体的に使用できる低用量経口避妊薬(OC)という選択肢がありますが、LEP同様、40代になるとリスクを上げる要因を持つ人も増えてくるため、IUSも選択肢の一つとして考えることができます。

■40代から気になる更年期障害 40代後半になると個人差はありますが、エストロゲンの揺らぎが始まり、更年期の不調が出てくる人も増えてきます。更年期障害の治療には更年期にエストロゲンが減少することで引き起こされる症状を、エストロゲンそのものを補うことで治療するホルモン補充療法(HRT)がスタンダードとされています。
HRTに使われるエストロゲンには、経口タイプのもの、貼るタイプのもの、塗るタイプのものなどがあり自分にあったものを選択することができますが、子宮のある女性には子宮内膜の保護のために必ず黄体ホルモンを併用する必要があります。黄体ホルモンには一般的に経口製剤が使われるのですが、IUSに付加されている黄体ホルモンも子宮内膜に局所的に働き内膜保護ができるため、海外ではHRT時の内膜保護の適応も持っています。

■IUSについて IUSとはIntra Uterine Systemの略で黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システムのことです。
この医薬品は子宮の内膜に直接作用することで、子宮内膜の増殖を抑え出血量を減少させるほか、プロスタグランジンの産生を抑えることで月経痛を緩和します。
また子宮内膜が厚くならないので避妊の効果もあり、HRT時の内膜保護の作用もあります。
このように、月経トラブルや避妊、はたまた更年期の不調など、さまざまな健康課題を抱える40代女性にとって、IUSは局所的に作用することで様々な効果が期待できる選択肢として注目されています。

*IUSとは女性ホルモンである黄体ホルモン(レボノルゲストレル:LNG)を子宮内に放出するシステムで、1度の挿入で最長5年効果が続きます。


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