■女性とスポーツ
女性は思春期から性成熟期、更年期、老年期まで女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受けていることは連載第1回でも紹介しました。
スポーツにおいても同様で、このことをちゃんと理解することは、良い結果を出すことや健康な状態でスポーツを続けることに関係することが分かっています。
■女性アスリートが抱える健康問題
女性アスリートが抱える健康問題として、無月経や疲労骨折が挙げられます。
行き過ぎた運動は無月経の大きな原因であることもが分かっており、無月経はエストロゲン欠乏を引き起こすため、骨密度が低下して骨粗鬆症を引き起こし骨折しやすくなる他さまざまな症状や疾患に影響を与えます。
アスリートの場合、行き過ぎた運動による利用可能エネルギー不足、つまり「運動による消費エネルギー量に見合った食事からの摂取エネルギー量が不足している状態」が無月経を引き起こしていると考えられています。
このような女性アスリートに多い「無月経」、「利用可能エネルギー不足」、「骨粗鬆症」は女性アスリートの三主徴と呼ばれています。
なお、疲労骨折とは、通常では骨折が生じない程度の軽微な外力が繰り返し加わることによって引き起こされる骨折で、疲労骨折に影響を与える因子としてはトレーニング量・強度などの外的因子の他、無月経による骨粗しょう症などの内的因子があります。
女性アスリートの三主徴
■月経周期とコンディション
アスリートにとってコンディションを整えることは最高のパフォーマンスを発揮するためにとても大切なことです。コンディションの維持に影響を与えるものの一つが月経ですが、多くの選手が月経周期に伴う主観的なコンディションの変化を自覚していることが分かっています。
月経周期に伴うコンディションには個人差はあるもの、一般的に卵胞期と排卵期はコンディションが良く、月経期と黄体期はコンディションが悪い場合が多いようです。卵胞期と排卵期に調子が悪くなる理由としては月経困難症や月経前症候群の影響が考えられます。
■月経周期の調節
女性アスリートにとって大切な試合や練習日程に合わせて月経周期を調節することはよく知られていますが、月経周期の調節には一時的に調節する方法と継続的に調節する方法があります。
月経周期の調節には単に月経の時期をずらすだけでなく、月経周期のなかでコンディションの良い時期に試合が来るように調節するという目的もあります。
月経周期の調節には一般的にOCやLEPが使われており、使用にあたっては婦人科医に相談する必要があります。
なお、これらの薬剤はドーピング禁止薬物ではありません。
月経周期をOCやLEPなどで継続的に調整するということは、長期にわたって月経周期を調節できるだけでなく、月経困難症や月経前症候群がある場合はこれらの疾患の治療もできることになります。
■女性アスリートが気を付けること
女性アスリートには、「無月経」、「利用可能エネルギー不足」、「骨粗鬆症」という女性アスリートの三主徴があるため、食事量と運動量のバランスを心掛けエネルギー不足にならないようにすることが大切です。エネルギー不足の判定基準としてはアメリカスポーツ医学会の指針を参考にすると、成人の場合はBMIが17.5未満、思春期では標準体重の85%未満が目安となります。
また、無月経を早期に発見することも重要ですので、月経が毎月来ない、月経の間隔が不規則である、3か月以上月経が来ない、15歳になっても初経が発来しないといった場合は早期に婦人科医に相談することが重要です。それ以外にも、月経痛や月経前の不調がある、月経周期の調節など相談したい場合も婦人科医に相談することが必要です。
<婦人科検索>一般社団法人日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
http://www.jmwh.jp/z-ninteisya.html