新しい職場に行き始めて1か月ほどになります。“西日本矯正就労支援情報センター室”という今年度から立ち上げる部署です。(名称が長すぎるので公募して親しみやすい名称にする予定です)今は準備期間なので具体的な仕事はありません。この1か月間は研修を受けていました。(歳食ってますが一応新人です)研修と言っても同期は他部署にもう一人いるだけなので、ほとんど個人レッスンです。時間給をもらいながら研修を受けれるなんて夢にも思いませんでしたので、嬉しいやら申し訳ないやら複雑な気持ちです。
この部署は、受刑者・在院者の再犯を防止するために就職支援をします。全国の受刑者・在院者の個人情報をデータベースにし、雇用してくれそうな企業に対して情報提供をします。企業はHWを通じて、採用したいと思う受刑者・在院者が収容されている施設に求人票を出します。面接を行い双方が納得すればトライアル雇用という形で採用になります。再犯者のほとんどは仕事に就いていないことが多く、就職が決まった状態で社会に戻すということはとても重要なことなのです。仕事に就いていない状態というのは、一般の人でも良くない事がたくさん起こります。まして社会との関わりを一定期間なくしてしまった人は、猶更良くない事が起こりやすくなります。仕事は経済的な安定だけではなく、生活リズムを整え心身の健康を維持し、厳しい社会を共に生きていく仲間を作ることが出来ます。
法務省は数値目標として“2020年までに,犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍にする” “2020年までに帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る者の数を3割以上減少させる”としています。
研修の内容は、主に受刑者・在院者の刑事施設での過ごし方と、現在すでに実施されている就労支援の内容です。一般の人は刑務所での生活をテレビや映画などでしか見たことがないはずです。私も全く知らない世界のことなので、見るもの聞くものが初めてことばかりで驚きの連続でした。色んな部署の方に実際の現場のことも織り交ぜて話を聞かせていただきました。一番驚いたのは、刑務所は決して居心地の悪いところではないということでした。栄養バランスの取れた3度の食事があり(美味しいそうです)、祝祭日はおやつも出るそうです。テレビがあり新聞を読むことも出来ますし、自分のお金で食べたいお菓子やジュースも買えます。また適度な運動の時間も与えられ、入浴の時間も確保されていて、とても規則正しい生活を送っています。また出所後の就職のために職業訓練を受けることもできますし(審査はあるようですが)、必要な人には高卒検定のための講座もあります。
狭い世界での集団生活なので、表には出てこない問題も多くあると思いますが、少なくとも「二度と来たくはないところ」ではなさそうです。つまりこの居心地の良さが再犯を生み出しているとも言えるのです。受刑者の中には「娑婆の方が厳しい」と言う人も居るそうです。再犯防止のために就労支援を行う立場としてはちょっと複雑な心境です。日本の社会は失敗に寛容ではありません。どちらかというと厳しいと思います。再スタートをしても上手くいかないことは多いはずです。そんな時に手を差し伸べてくれる仲間がいなければ、忽ち逆戻りしてしまうのは無理のないことかもしれません。
とはいえ人間は社会の中で苦しみ悩み支え合って生きていくものです。色んなことがあっても「刑務所にだけは戻りたくない」と思える社会でなければなりませんし、それは全ての人の幸せでもあるはずです。新入社員の分際で偉そうなことを書きましたが、今の立場は一応国家公務員になる(ちゃんと辞令まで頂きました)ので、自覚を持って仕事をしようと思っています(笑)
研修中は新入社員になりきって“新人の心得”を実践しました。自分から大きな声で挨拶をする、言われたことはすぐにやり必ず結果を報告する、電話が鳴ったらすぐに出る、わからないことはまず自分で調べてから質問する、事前準備を怠らない、ということをやりました。
それにしても、ろくに仕事もしてないのに時給だけもらうのは本当に心苦しいです。