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カウンセライダー日並のこみコミ通信

第13回 刑務所見学

刑務所の見学に行きました。基本的には一生行かないはずのところだと思ってました。施設だけでなく、職業訓練の様子も見学させていただけるという貴重な機会でした。最寄駅を降りて15分ほど歩いたところにその施設はありました。外観は病院に見えました。もし、○○刑務所というプレートがなければ誰もそうとは気付かないと思います。ガラスの自動ドアを入るとエントランスがあり、刑務官の方が丁寧に出迎えてくれました。中に入ってからの印象はサナトリウムです。長期療養のための医療機関のように感じました。清潔感があり明るく、中庭には花が咲いてました。

ここは女性受刑者の施設で、男性受刑者施設と少年院の間くらいの綺麗さだそうです。少年の施設はもっと綺麗だということですね。まずは食堂を見せていただきました。500名が一度に食事の出来る広さで、厨房設備も整っており、その日のメニューの実物が置いてありました。献立のせいか料理の色合いは地味でしたが、学校給食と同じ感じでした。昔に言われていたような“くさい飯”ではありません。食事の時間ではなかったので食べている人は居ませんでしたが、500人が一斉に食事をする風景は一般の食堂とはちょっと違う雰囲気になるそうです。しかも周りに刑務官がずらっと並んで監視をされながら食べるので、食事中の会話は出来ません。和やか~な食事の時間ではないようですね。

受刑者の居室(個室)は、三畳の畳(ほとんどは養生テープで破れを補修してました)、奥には窓があり、その手前に洗面台があります。私物は小型のスーツケース一つ分だけが持ち込みを許されています。壁にはカレンダーが掛けてありました。テレビと扇風機があり、布団はきちっとたたまれていて清潔感があります。プライバシーがちゃんと確保されています。

その後に介護の職業訓練の様子を見学しました。外部から講師がこられて、とろみをつけたお茶をスプーンで飲ませる実習をしていました。外部から見学者が来て見られながらの実習は緊張があったと思います。受講者の表情が一様に強張っていて目線も尋常ではない感じでした。介護の仕事をするための訓練なのに、こんな感じのままではまずいのでは…と思ったところに講師の先生が『じゃあペアになって練習しましょ』と言った瞬間にみんなの表情が緩んだので、なんだかホッとしました。

作業場に関しては窓越しにしか見ることが出来ませんでしたが、町の中規模な工場という感じでした。ほとんどが手作業でみんな黙々と取り組んでいました。最近は受刑者が作った製品をCAPIC(キャピック)というネットサイトで買うことが出来ます。人気のあるシリーズ物もあり売り切れになる商品もあるそうです。たくさん売れると作業にも身が入るだろうし、社会との接点も感じられてとてもいいことだと思います。

生まれて初めて訪れた場所でしたが、最も印象に残ったことは若い刑務官の働く姿です。言葉を交わすことはありませんでしたが、物凄い緊張感を身にまとっていることを感じました。背中に定規でもさしてあるのかと思うほど背筋が真直ぐ伸びていて、額に汗を浮かべて所内を走り回ってました。彼女たちの小さな肩には見えない重責がズシリと乗っているのです。

我々が刑務官の働く姿を見ることはありません。おそらく一生お目にかかることはないのでは…。
社会の眼には触れない、縁の下のそのまた下で社会の安全を支えてくれているのです。

陽の当たらない場所でも、彼女たちは眩しいくらいに輝いていました。