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カウンセライダー日並のこみコミ通信

第18回 京都で学ぶ

今年度になってから初めて研修を受けに京都へ行きました。今回の会場はノートルダム女子大学というところで、前に一度だけ行ったことがありますが、京都の北の方にある静かで品のいい、いかにも女子大といった感じの学校です。宗教色が名前からも感じられてちょっと厳かな気分も味わえます。

臨床発達心理士という資格を更新するために、5年間で決められたポイントを獲得しなければなりません。定期的に全国の各支部で研修が開催されますので、日程と場所と内容で受講するかどうかを決めています。特に私の場合は場所で選ぶ傾向があります。内容よりも旅気分が味わえるかどうかを優先する不届き者です。ちなみに臨床発達心理士は民間資格ですが、2015年9月に公認心理師法が成立し、いよいよ心理の資格にも国家資格が誕生するようです。

今回はパイロット研修ということで事例検討会が行われました。
我々が支援する人たちは状態も実に様々で、生まれつき障害がある場合や、後天的に二次障害を被った場合、精神的・身体的な病気であったり家庭に相当な事情があったりします。そんな人たちに対して、適切な支援が出来ているかどうかを判断することは非常に難しい事ですので、一人でケースを抱え込むのではなく、事例として他者の客観的な視点をもとに関わり方や支援方法を見直す機会を設けたのが事例検討会です。支援機関によっては、“ケース会議”とか“ケースカンファレンス”が行われていますが、今回は研修という開かれた場で、直接支援に関わってない人にも客観的に事例を検討する機会として実施されることになりました。

事例は言うまでもなく個人情報ですから、発表するにあたっては慎重な手続きと配慮と準備が必要です。本人もしくは家族の了解を得て、所属する組織の了解も得て、個人が特定されるような情報は出来るだけ割愛し、事実に即した記録を分かりやすくまとめます。聞く側は、あえて記録には残されなかったことも含めて、発表者のコメントや思いを聞き、あるいは質問をすることで、直接は会ったことのないケースを出来る限りリアルにイメージしようとします。

今回紹介された事例は、最重度の知的障害と自閉傾向のある児童への適切な支援についてというものでした。詳しくは書けませんが、かなり大変なケースで、担当者個人の苦労も相当なものでしたが、支援施設全体を巻き込んで支援の枠組みを構築したそうです。様々なアイデアや工夫を凝らして手厚い支援が行われていることがわかりました。そんな中で最も目覚ましい効果があったのは体力を向上させた事でした。これも担当者の愛情のこもった鋭い観察力の賜物なのですが、体力がついたことで、これまで出来なかった色んなことにいい影響が出始めたのです。歩くという単純な運動をひたすら続け体力を向上させたことで内臓の動きも良くなり、適度な疲労が睡眠を安定させ、生活の質が上がりました。また『我慢する』ということが出来るようにもなりました。嫌なことに耐えられないのは体力がないという理由も大きく影響することに新たな驚きを感じました。

体力がなければ生活の質も上がらない、それは健常者も同じです。特に仕事においては集中力と緊張感を持続する体力が必要不可欠です。体力をつける、維持するということが、仕事の質を上げることにもなることを再認識しました。
事例検討会は、参加者一人ひとり感じることが違うと思います。自分のケースを持っている人は、日々現場で悩んでいることや経験と重ね合わせて、いろんなことに気づきがあったと思います。

研修は4時に終わったので1時間ほど京都をブラブラと歩きました。いつ来ても京都の町は本当に素敵です。どこを歩いても何となく気分を良くしてくれるし、どれだけ歩いても飽きない、旧いけど新鮮な感じがします。

京都という町は不思議な町です。学びの質も上がるような気がしました。