COVID-19治療薬やワクチンで「特例承認」が続いていますね。
こんなに簡単に承認できるのであれば、普通の医薬品もどんどん承認できるのでは? と思う方もいらっしゃるかもしれません。また逆にこんなに急いで承認して大丈夫だろうか? と不安に思われる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
今回はそんな特例承認制度の概要や適用されるための条件、過去の承認事例等について、簡単に見ていこうと思います。
■特例承認制度とは?特例承認制度とは「医薬品医療機器等法」の第14条の3第1項に定められている特別な制度です。
「疾病による健康被害の拡大を防ぐために、他国で販売されている日本国内未承認の新薬を、通常よりも簡略化された手続きで承認すること」ができる仕組みと言えます。
この制度は今回のパンデミックに突貫で作られた制度ではなく、きちんと法律で定められた制度なのですね。
■適応の条件この制度が使える条件はまとめると下記の2点です。
- 1.国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある場合、かつ当該医薬品以外に適当な方法がない
- 2.承認制度が日本と同等水準にある外国で承認・販売されている医薬品である
要は「非常に危機的な状況において、他に国内では適当な手段はないけど、海外にはある」というようなケースにおいて、「特例的」に医薬品を承認するということです。
例えば昨今のCOVID-19治療薬やワクチンにおいて考えてみると、1.「国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある場合、かつ当該医薬品以外に適当な方法がない」についてはパンデミック下ということで認められる事柄と言えるでしょう。
今回が危機的でないなら、いったいどんな時に適用するのであろうか? と思われてしまいますね。
一方、2.「承認制度が日本と同等水準にある外国で承認・販売されている医薬品」については、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは各先進国で承認されていることから満たされると考えられていましたが、例えば中国シノバックのワクチンは2.に該当しないから現状は特例承認の要件を満たしていないと考えられます。
治療薬においても「承認制度が日本と同等水準にある外国で承認・販売されている」という点では、日本独自の医薬品であるアビガンやイベルメクチンは残念ながら現段階では特例承認の要件を満たしているとは考えにくいと言えるのです。
アビガン、イベルメクチンともに、現在国内で臨床試験が行われている真っ最中ではありますが、仮に良好な成績が得られたとしても、特例承認制度に基づく早期の承認は難しいものと思われます。
別の制度として条件付き早期承認制度というものがあり、そちらの適用を狙っているのかもしれませんが、定かではありません。
いずれにせよ、規制当局と戦略については事前に相談し、治験を進めているものと思われます。
なお特例承認された治療薬やワクチンは、海外で承認されているからといって、国内の試験をスキップしていたわけではなく、既存の特例承認されている治療薬やワクチンは国内データも併せて申請しています。
今後はこの国内データの必要性という点においても、パンデミック下の早期承認・使用を鑑みて、変えていく必要性について議論が開始されています。
有効性や安全性の確認は必ず必要なステップではありますが、パンデミック下において、機動性や柔軟性という面も必要になのではないか? ということですね。
ちなみにCOVID-19のパンデミック以前にこの特例承認制度が適用された医薬品としては、新型インフルエンザの輸入ワクチン「アレパンリックス(H1N1)筋注」「乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1“ノバルティス”筋注用」といったインフルエンザワクチンが例として挙げられます。
2010年1月に承認されています。この制度は割と古い制度なのですね。
■まとめ今回はCOVID-19下で盛んに行われている特例承認についてまとめてみました。
疑問に思われる患者様がいらっしゃいましたら、制度について簡単にお話いただけると安心されるかもしれませんね。