カナダで薬剤師として勤務し始めてから6年が経ちました。つい先日ですが、こちらでビジネスパートナーとともに薬局を開設し、現在はオーナー兼マネージャーとして勤務しています。同時に日本から薬剤師や薬学生を研修生として受け入れ、広い職能により薬剤師が地域で信頼され活躍している様を実際に知っていただく事業も開始しました。
このコラムでは受け入れた研修生の視点から、薬局と薬剤師、さらに広くは医療制度も含めてカナダと日本の違いについての疑問や論点を提示して読者の皆さんにも考えていただく機会にできればと考えています。
先日は早速、東京から薬学生が研修生として私の薬局にやって来ました。将来のキャリアは薬局ではなく行政。政策決定に関わり薬局と薬剤師を活用して欲しいという思いがあるそうです。行政の採用選考も狭き門。指導教官からは行政がダメならカナダで薬剤師になればいいじゃないか、しっかり勉強して来いと言われたそうです。曰く「私には無理ですよ、若子先生だからできたんでしょう!」
カナダで薬剤師になるのは難しいのか?
結論から提示すると、難しくはありません。ただし、かかる時間と労力は年齢やその時点での語学力に依りますが。事実、私以外にも日本の大学出身でカナダで薬剤師として勤務している方は数多くおり、私の住むビクトリア市にも、私以外にも確認できているだけで他に4人の日本人薬剤師が活躍しています。
薬剤師国家試験は筆記試験と実技のOSCEに分かれ、準備も一筋縄ではいきません。が、筆記試験で問われる内容は大きく臨床的なものに偏っており、英語であることを除けば日本の国家試験の方が広範囲な分、難易度が高いという印象です。OSCEについても外国人薬剤師向けの対策プログラムが各州の大学に存在し、知識を服薬指導でアウトプットする方法はここで徹底的に訓練することができます。
私が計画を実行に起こすべくカナダに渡航した際は、その時点で薬剤師になっていた日本人たちからの情報も皆無で、ビザや試験も含めて全てのプロセスを手探りで進むしかありませんでした。なんとかすると決意してカナダに来たものの、それまで英語で会話した経験は殆どなく、また英文の科学論文を読めていたことなどなんの役にも立たないことを思い知りました。1週間だけ通った語学学校のグループディスカッションで、頭が真っ白になり殆ど何も喋れないと分かった日、帰りの地下鉄で悔しくて涙した日を思い出します。
現在は私も含めて何人かの日本人薬剤師が情報を発信しており、少なくとも渡航前に何を済ませておけば良いのかはインターネットで調べれば判明します。語学のスコアを用意するタイミングや上述の大学のプログラムの情報、費用の概算など日本で調べ、入念に準備してくればビザの心配も不要でしょう。確かに楽な道ではありません。しかし想像ほど険しい道でないことは、多くの日本人薬剤師が既に目標を達成している事実からも明らかではありませんか。カナダで薬剤師になれば、週に40時間程度しか拘束されず、夕方に仕事を終えれば家族で過ごします。地域によりますが時給は概ね4,000円以上です。医療職で最も信頼され、仕事への満足度も高いでしょう。チャレンジするか悩んでいますか?やり遂げる決意があれば、何とかなるものですよ。
株式会社オーラコンサルティング
若子直也
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