薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

日本×カナダ 若子直也による Topics from Canadian Pharmacy

第2回 「調剤業務の在り方についての通知を受けて」

観光地として有名なビクトリア市で研修をするため、滞在はホテルという選択肢はもちろん、あります。若い薬剤師、また特に薬学生たちには希望すればホームステイも勧めています。研修後に英語の練習もできて良いそうです。先日の参加者はイースター休日にやって来て、 ホストファミリーが七面鳥のローストと共に盛大なディナーを用意してくれました。 異文化コミュニケーションの貴重な経験だったようです。

調剤業務の在り方についての通知を受けて

研修生は私の薬局で積極的に業務を経験しています。
ボトル包装の錠剤を計数調剤するのはもちろんのこと、薬剤師の監督下で水剤の調製や一包化も機会があれば担当してもらいます。では、これはカナダでは法律上で何か問題はないのでしょうか?
カナダではほぼ全ての州で調剤室の対物業務は非薬剤師スタッフが担当しています。無資格のアシスタント、国家資格保持者のテクニシャンらの働きがあるおかげで、薬剤師は対人業務に時間と十分な手間を割くことが可能なのです。薬剤師のみができる業務ははっきりと規定されていますが、大きくは処方監査とワクチン接種のような臨床サービスの提供と言えるでしょう。ワークフローの中で作業の分担を目的として薬剤師がピッキングする場面もありますが、ほとんどの場合アシスタントがこれを担当します。つまり、日本からのゲストが無資格の状態で、調剤室で業務を体験することは特に問題ありません(*)。

先日、厚生労働省から調剤業務の在り方についての通知があり、これから境界線についての議論を経て対物業務の一部が無資格の非薬剤師スタッフへと移っていくことが予想されます。これまでこれらの業務を薬剤師が(少なくとも建前上は)独占的に行ってきた事実を鑑みると大きな一歩を踏み出したようです。これは大きなチャンスと言えるのかもしれません。
これまで以上に薬剤師の説明責任、結果責任が問われる時代、6年制でより専門的な教育を受けた薬剤師たちにはアドバンテージがありそうです。例えば、これまでピッキングをする薬剤師と監査をする薬剤師とで責任を共有していたとすると、これが全面的に監査をする薬剤師に所在が移ります。処方が適切か否か瞬時に判断しながら薬物療法を調整する役割を果たす事は大きな責任が伴うからこそ、薬の専門家としてのやりがいを感じる若い薬剤師たちも増えるでしょう。計数調剤のみを職域とできなくなった今、対人業務のあるべき姿をビジョンとして掲げ職能を拡大するチャンスとも言えます。逆にこの機会を逃し、病気の予防と処方の適正化という本分で薬局と薬剤師が職能を拡大できないなら、残念ながら一定の割合で薬剤師が職を失う時代の幕開けと取れなくもありません。カナダの薬剤師の業務は、この意味で面白い例を提供していると思います。

(*)管理薬剤師の監督下で患者のプライバシー保護遵守への誓約など一定の条件を満たした上で。

株式会社オーラコンサルティング
若子直也
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