ここ数ヶ月、ビタミンD製剤は供給が安定せず、全ての患者さんに調剤するのが難しい状況になっています。今回はそんなビタミンDについて振り返ってみます。
ビタミンDは脂溶性ビタミンで、丈夫な骨の維持や免疫調節、グルコース代謝などさまざまなことに関与しており、身体にとって重要なビタミンです。日本人の食事摂取基準2020年版では成人の1日当たりの摂取目安量摂取目安は8.5µgですが、実際の日本人の平均摂取量は多くの世代で目安量を下回っています。ビタミンDが不足することで血中のカルシウム濃度が低下し、成人では骨軟化症、小児ではくる病になる恐れがあります。
ビタミンDが多く含まれる食品としては、魚類やきのこ類などが挙げられます。特に、かつお塩辛、あん肝、しらす干し、干し椎茸、舞茸などに豊富に含まれています。また、皮膚にはビタミンDの素になる成分が存在し、直接日光に当たると反応が進行しビタミンDが生成されます。室内にいることが多い場合や、紫外線対策をしっかり行っていると生成量が低下してしまいます。過度な紫外線は皮膚がんの原因になる恐れがありますが、1日20分程度の適度な日光浴が習慣になることが望ましいでしょう。さらにビタミンDが活性型になるには肝臓と腎臓での水酸化が必要です。
ビタミンDは、カルシウムとリンの適切な濃度を維持する役割があります。濃度を維持する方法として、下記の作用があります。
- (1) 腸からの吸収を促進する
- (2) 副甲状腺ホルモン(PTH)の産生を抑制する
- (3) 腎臓からの排出を抑制する
血中のカルシウムとリンの濃度を維持することで、骨が脆くなることやテタニーを防ぎます。そのため、高齢者の骨粗鬆症の予防にも役立ちます。
ビタミンDのその他の働きとして
- ・ 細胞の分化促進、転移抑制
- ・ RAA系、血管細胞の増殖などの調節
- ・ 脳の神経細胞を介したうつ病への関与
- ・ 膵β細胞を介したインスリンの分泌促進、筋肉や肝臓を介したインスリン抵抗性改善
- ・ 免疫機能の調節
などさまざまなことが言われており、研究が進められています。
体にとって重要であるのに不足しがちなビタミンD。食事や日光浴、サプリメントもうまく取り入れて目安の量を摂取できるようにしたいですね。