「スポーツファーマシスト」という資格を聞いたことはありますか? 「スポーツファーマシスト」とは医薬品の知識を中心にアスリートをサポートとする薬剤師のことです。しかし、その薬剤師ですら「スポーツファーマシスト」について、よく知らない人が多いのです。その原因として「スポーツファーマシスト」として活動している薬剤師が未だに少ないからだと思います。2016年現在、JADA認定を受けている6949名の「スポーツファーマシスト」のうち、JADAのスポーツファーマシスト検索サイトに登録している薬剤師は、1360名と約6分の1しかいません。検索サイトに登録していない人の理由として、「質問されたら怖いから・・・」と聞いたこともあります。
JADA公認スポーツファーマシストは、最新のドーピング防止規則に関する正確な情報・知識を持ち、競技者を含めたスポーツ愛好家などに対し、薬の正しい使い方の指導、薬に関する健康教育などの普及・啓発を行い、 スポーツにおけるドーピングを防止することを主な活動とする、と定義されています。確かに責任の生じる仕事ですが、普段の業務も同じだと思います。経験しないとわからないこともたくさんありますし、何も行動しなければ何も変化はありません。
私は2011年から(公財)日本水泳連盟で「スポーツファーマシスト」としての活動をしています。2013年からは競技会会場で医薬品相談のブースを設置し、アンチ・ドーピング活動を行っています。当初はブース前を通るアスリートや関係者から、何の人? ドーピングは関係ないから・・・と、少々厳しい反応を受けました。しかし活動を続けることで、現在はアンチ・ドーピングは大切なことと認識されるようになりました。特によく必要とされる種類の医薬品を、現場に即した形でまとめた資料は好評で、「資料をください、とても活用しています」と、うれしい言葉が聞けるようになりました。
多くの場合「スポーツファーマシスト」の活動は自分の休みを使っての活動なので、プライベートな時間が減ってしまいます。それも薬剤師から嫌がられる理由の一つかもしれませんが、アスリートが真剣に戦う姿は自分への活力にもなり、また相談をしてくれたアスリートが結果を出してくれることで、もっともっと頑張ろうと思えるのです。
すでに資格を持っている人、これから資格を取ろうと考えている人は、とてもやりがいのある活動ですので、是非とも資格を持っているだけでなく積極的に現場に出てアスリートの声を聞いて、スポーツ関係者と関わっていってもらいたいと思います。