「花粉症の薬は眠くなりやすいから、パフォーマンスが下がってしまうのが怖くて飲みたくありません。」 「花粉症の薬はドーピング違反になってしまうから、花粉がひどくても我慢します。」という話をよく聞きます。
市販の鼻炎薬には様々な成分が混合されていますが、入っている主な成分は
①抗ヒスタミン薬:クロルフェニラミンなど
②抗アレルギー薬:ケトチフェン・フェキソフェナジン・エピナスチンなど
③抗コリン薬:ベラドンナ総アルカロイドなど
④抹消血管収縮薬:プソイドエフェドリンなど
です。
この中で眠気が出やすいと言われているのが①抗ヒスタミン薬です。また、ドーピング違反になってしまうものは④抹消血管収縮薬のプソイドエフェドリンです。前回も説明したように、プソイドエフェドリンは鼻粘膜の血管平滑筋を収縮させ、血流を減少させることにより鼻水や鼻づまりに効果を発揮します。しかし、交感神経系に作用する成分であるためアンチ・ドーピングの規則としては、「興奮薬」に分類され禁止されています。
では、鼻炎薬は眠気がでるため、ドーピング違反になってしまうから、花粉症は我慢するしかないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。競技者の悩みに対応するためには②抗ヒスタミン薬と④抹消血管収縮薬の入っていない商品を選択すればよいのです。
具体的な商品名としては
・ザジテンAL鼻炎カプセル、コンタック600ファースト(ケトチフェンフマル酸塩酸塩)
・アレジオン10、アレジオン20(エピナスチン塩酸塩)
・アレグラFX(フェキソフェナジン塩酸塩)
・コンタック鼻炎Z、ストナリニZ(セチリジン塩酸塩)
などがあります。
ただし、市販薬は商品名・成分の変更が多々ありますのでその都度成分表示を確認し、競技者に勧めるようにしてください。
また、鼻づまりのひどいときには点鼻薬を使用することもあると思います。
点鼻薬で禁止となるものは現時点ではありませんが、多くの点鼻薬には糖質コルチコイドやナファゾリン(イミダゾール系)などの血管収縮剤が含まれています。糖質コルチコイドは禁止物質ではありますが、点鼻としての使用経路は禁止されていません。ナファゾリンやテトラヒドロゾリン等のイミダゾール系も点鼻としての使用経路は禁止されていませんが、多量に使用し体内に吸収されるとドーピング違反として疑われる可能性があるため、用法用量の正しい説明を行うことが大切です。
「ドーピング」と考えてしまうと萎縮してしまう方もいらっしゃいますが、基本は普段の服薬指導にドーピング禁止物質について注意することだけなので、しっかり調べ競技者に安心して薬を使ってもらえるようにしたいです。