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スポーツファーマシスト活動報告

第5回 スポーツファーマシストとチーム

私は、日本水泳連盟のスポーツファーマシストとして活動していますが、普段チームとして中央大学水泳部のスポーツファーマシストとしても選手のサポートに携わっています。その活動の中で、私はスポーツファーマシストの活動は薬の相談を受けるだけが仕事ではないと感じました。
いつも監督やコーチから言われるのは、「時間のある時に練習に来て、選手とコミュニケーション取って、相談しやすい環境を作ってください。」という内容の言葉です。平日は勤務があるため、練習に行けるのは朝練がほとんどです。そのため、始発でプールに向かい、勤務に間に合うように帰宅します。とても大変ですが、行ってよかったなと思う出来事がたくさんあります。薬やサプリメントの相談だけではなく、監督やコーチに話せない色々な悩みも選手は相談してくるようになります。聞いてあげるだけでも選手の負担は減っているのだと思います。

大学生の一番集大成の試合である日本学生選手権大会の後、引退する選手からこのようなメールをもらいました。
「3日間お疲れ様でした。健康管理の面、メンタルケアの面では本当にお世話になりました。
正直レース前不安が過ぎったりしたのですが、最後悔いなく終えるためにマイナスなことは考えずにリラックスして自分のことを信じ泳ぎました!そしていろんな方から応援してもらえたことが本当に力になりました!ありがとうございました!
今後の人生でもおそらく壁にぶつかることはあると思いますが、落ち着いて自分のことを信じてさらに成長していきたいと思います!またいつかお会いしましょう!
本当にありがとうございました!」

1年以上ベストからほど遠いタイムでしか泳げず、引退の10か月前には故障もし、思うように練習ができていませんでした。しかし、日本学生選手権ではベストまでタイムを戻し、本当の引退試合であるワールドカップでは全ての種目でベストを出し、水泳選手を引退しました。このメールをいただいたときは、本当に頑張って朝早く練習に行き、土日の試合も応援に行き、マメにやりとりをしてよかったと思いました。薬を飲むときの、ドーピングになるかならないかの関わり方ではこのようなコメントはなかったと思います。選手との関わりも、人と人の関わりですので、携帯電話やメールだけではそっけなく感じられてしまうと思います。チームのスタッフの一員として、スポーツファーマシストの存在は薬の相談だけでなくもっと選手の役に立てることはあるのではないでしょうか。専門家だからこそ、信頼してもらえれば選手に大きな安心感を与えられる存在なのだと思います。