こんにちは。
さて私は、スポーツファーマシストを取得した方々は、どのようなことに興味を持っているのか、ファーネットマガジン担当者の方に伺ってみました。すると、現場のアレコレよりも、薬の話に興味があるようだ、とお話を頂きました。
そこで、今回から数回にわたり、WADA禁止表について解説していきます。
私が現場で受けた質問についても、併せて分かりやすくご紹介していきたいと思います。
WADA禁止表には ① 常に禁止される物質と方法 ② 競技会検査で禁止される物質と方法 の2パターンで分類されます。常に禁止されている禁止物質の服薬は、 “いつまでに服薬を止めればよい”というも のではなく、言葉どおり“常に服薬は禁止” です。
常に禁止されている物質
S0. 無承認物質
人体用の薬としてまだ承認を得ていない薬物がこれに該当します。
たとえば、前臨床段階、臨床開発中、デザイナードラッグ、動物用薬が該当します。危険ドラッグも大半がここに分類されます。
S1. 蛋白同化薬
1. 蛋白同化男性化ステロイド薬(AAS)
この物質の代表的なものが“テストステロン”、一般的に男性ホルモンと呼ばれるものです。禁止されている理由として、“筋肉量および筋力増加、骨量増加、赤血球新生の増加、闘争性・攻撃性の増加などが挙げられています。一般的には筋肉増強剤と呼ばれています。
それでは、もともとテストステロンが多い人は検査で陽性になってしまうのでしょうか?当然、このような疑問をもたれる方は多いかと思いますが、これは精密な検査で、元々体内にある内因性の物質なのか、薬などから摂取された外因性の物質なのか、判明させることが可能なので、ご安心ください。少し詳しく説明しますと、尿中のテストス テロン(T)/エピテストステロン(E)(テ ストステロンの前駆体)比、炭素の同位体比、質量分析法などで確認することができます。T/Eの通常値は、0.2~2で4以上だと、テストステロンを外部から入れた可能性が大きいとされています。テストステロンやメチルテストステロンは、市販の薬でも販売されているので注意が必要です。
2. その他の蛋白同化薬
気管支拡張薬として使用されている、スピロペント(成分名:クレンブテロール)が日本では使用されています。この薬は、β作用薬として、喘息治療や尿失禁治療薬として使用されているのですが、とくに蛋白同化作用が強いため、この項目で扱われています。
クレンブテロールで覚えていただきたいのが、海外での食事です。海外では、クレンブテロールは動物を肥やす目的で使用されることがあります。クレンブテロールを使用し、肥大した動物を人間が接種し体内から検出された事例があります。海外で食事をされる際は、注意が必要です。一般的には、男性ホルモンもステロイドと呼ばれ、のちに記載する、糖質コルチコイドもステロイドと呼ばれ、混乱する方もいらっしゃいます。男性ホルモンは、常に禁止される物質に分類され、外用薬も禁止です。 しかし、糖質コルチコイドは競技会検査で禁止される物質で、外用薬は禁止になりません。間違えないように注意が必要です。海外製のプロテインやサプリメントは以前紹介したように、この項目での蛋白同化ホルモンが多く含まれます。