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スポーツファーマシスト活動報告

第13回 ドーピングによって将来が左右される事件

2017年夏、プロボクシングのWBC世界バンダム級王者である山中慎介選手の敗戦は多くのメディアで取り扱われました。
山中選手は2017年8月15日、国内最多記録に並ぶ13度目の防衛をかけ、ルイス・ネリ選手(メキシコ)と対戦しましたが、TKO負けでした。山中選手は引退なのか現役続行なのか、タオルを投入したセコンドの判断は正しかったのか、様々な意見がありました。山中選手の敗戦を残念に思う報道も、多く目にしました。
しかし、この数日後、山中選手から王座を奪った新王者であるネリ選手に、ドーピング疑惑が浮上したのです。

検出された薬物はジルパテロールといい、禁止表国際基準のS1.蛋白同化薬に指定される薬物です。蛋白同化薬は、筋力の強化と筋肉量の増加によって運動能力を向上させるといわれています。ジルパテロールは本来、牛や豚などの家畜の筋量や体重を増加させる目的で使用されます。ネリ選手もメキシコ産の肉を大量に食べたため、ドーピングになってしまったとコメントしていました。確かに、過去に中国で肉を食べドーピングになった選手はいます。憶測ですが、ボクシングという体重制限のある競技で、ドーピング違反になるほど、たくさんの肉を食べたとは考えにくいと思います。

この事件で注目となるのは、ネリ選手にドーピング疑惑が浮上ことだけではありません。山中選手の進退や再戦なども注目されています。
山中選手のファンは当然山中選手へのタイトル返還を望みます。しかし、山中選手の所属する帝拳ジムの本田会長は「WBCがタイトルを戻す判断でも、負けたことに変わりはないのだから、拒否をする。」という見解を示しました。山中選手は敗戦により引退を考えていたようで、タイトルが戻り、復帰となっても前向きにボクシングに取り組むまでには時間がかかることだと思います。タイトルが空座となり、再戦となった場合でも、複雑な心境のままでは実力を十分に発揮することは厳しいでしょう。ネリ選手がドーピングをしていたと決定した場合、嬉しい幸せだと感じる人は誰もいないでしょう。

ドーピングをすれば競技力は上がります。欲しかった名誉・栄光を手にすることができるかもしれません。しかし、悪事が発覚してしまうとすべてを失うだけではなく、何も手にしていなかったときよりも悲惨な状況になることは明白です。
名誉、栄光や賞金がかかっているとドーピングに目がくらむこともあるかもしれません。
その誘惑に負けない強い気持ちを育てていくこともプロのアスリートとして重要なトレーニングであると考えます。

イベントのご案内

「薬と健康の週間」
開催日:2017年10月21日(土)・22日(日)

第47回板橋区民まつりにて、板橋区薬剤師会「薬と健康の週間」イベントを行います。
スポーツファーマシストに興味がある!
資格取得後まだ活動されておらず、実際の活動内容について知りたい!
…とお考えの薬剤師・薬学生の方は是非お気軽にお越しくださいませ。
2日間ともコラム筆者のスポーツファーマシスト・長谷川真帆さんが、皆さまの疑問やご質問にお答えします!

「薬と健康の週間」