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スポーツファーマシスト活動報告

第15回 2018年の禁止表国際基準の変更

ドーピング禁止物質や方法が記載されている1番の基準となる、禁止表国際基準は毎年1月1日に変更されます。昨年まで大丈夫だったものが今年から禁止になってしまっている場合や、逆に禁止だったものが禁止表から除外されることがよくあります。情報は常に新しいものを収集するように心がけてください。

さて、2018年1月1日より適応になった禁止表国際基準の主要な変更点としては
S1.蛋白同化薬
S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質
S3.ベータ2作用薬
S4.ホルモン調節薬および代謝調節薬
S5.利尿薬および隠蔽薬
S6.興奮薬
S8.カンナビノイド
S9.糖質コルチコイド
M2.化学的および物理的操作
M3.遺伝子ドーピング
の項目です。

また、特定競技に禁止される物質として、2017年までP1にアルコールが記載されていましたが、2018年はP1からアルコールが削除され、P2に記載されていたベータ遮断薬が繰り上がってP1に記載されています。
変更内容の詳細は今回記載しきれないため、日本アンチ・ドーピング機構のHPの2017年第二回加盟団体連絡会議資料を参考にしてください。(http://www.playtruejapan.org/code/members/

すぐに今までの知識を変更していただきたいのは、
2018年では、アルコールは禁止されないことと、グリセロールは禁止されないことです。
アルコールは2017年までは、航空スポーツ、アーチェリー、自動車、パワーボート競技において競技会時に禁止される物質でした。
グリセロールは障がい者スポーツ選手が尿道カテーテルを使用する際に使われる物質で、2017年までは使用する際に TUE(治療使用特例)の提出が必要でした。しかし、2018年からはTUEの提出が不要となります。昨年までの知識で禁止となります、と回答してはアスリートに負担をかけてしまうこととなります。ご注意ください。
また、吸入サルブタモールについては投与パラメーターを明確にするために、より詳細に24時間で最大1600μg(1日当たり16吸入)、いかなる容量から開始しても12時間で800μgを超えないことと注意事項の記載が変更になっています。

禁止表国際基準は毎年変更されるため、その年の禁止表国際基準を参考に回答するようにしましょう。競技者からの質問で困ったときは、スポーツファーマシストに相談するか、都道府県の薬事情報課に必ず相談し、誤った回答をしないよう気をつけてください。