なぜ利尿薬がドーピングになるのか分からない方もいると思います。選手も競技力向上に直接結びつくものではないので、まさかドーピングになるとは…と思う方もいるでしょう。利尿剤は医療の領域では血圧降下や浮腫み治療の目的で使用されます。
禁止される理由は以下の2つです。
①尿量を増加させることで尿中に含まれる禁止物質や代謝物の尿中濃度を下げることがあるため
②柔道、ボクシング、重量挙げなど重量制限のある種目で急激に体重の減量を行えることがあるため
日本では医薬品にのみ含まれる利尿薬ですが、海外では美容系のサプリメントに含まれることもあります。痩身効果のサプリメントにフロセミドが含まれており、ドーピング違反となった選手も過去にいます。海外製のサプリメントで注意が必要なのは蛋白同化薬や、興奮薬だけではないことも知っておいてください。
サプリメンントは自己責任となり、メーカーや製造業者は罰せられず、罰せられてしまうのは選手です。栄養補給のためにサプリメントは必要な場合もありますが、必要以上にサプリメントを選手に勧めないようにサポートスタッフは気をつけたいですね。
禁止表国際基準【禁止方法】
(M1:血液および血液成分の操作)
この禁止方法はツールドフランスで何連覇も成し遂げた“ランス・アームストロング”の事件が有名です。一般的に血液ドーピングといわれるもので、持久力の向上が見込めます。
以下の3つが禁止事項です。
①自己血、他者血、異種血またはすべての赤血球製剤をいかなる量でも循環系へ投与するあるいは再び戻すこと
②酸素摂取や酸素運搬、酸素供給を人為的に促進すること(酸素吸入は禁止ではない)
③血液あるいは血液成分を物理的あるいは化学的手法で血管内操作をすること
この方法を行うことによって、一時的に体内の酸素濃度が増加し、持久的能力の向上が見られます。酸素カプセルがドーピングになるかどうか聞かれることもありますが、この行為はドーピングにはなりません。
(M2:化学的および物理的操作)
この禁止方法は、2004年アテネオリンピックの時にアヌシュ選手が用いた尿のすり替えや、ロシアの検体すり替えなどが当てはまります。
以下の2つが禁止事項です。
①ドーピング・コントロールで採取された検体の完全性及び有効性を変化させるために改ざん又は改ざんしようとすることは禁止される。これらには尿のすり替え、尿の改質(蛋白分解酵素等)などが含まれるが、これらに限定するものではない。
②静脈内注入および/または静脈内注射で、12時間あたり100mLを超える場合は禁止される。
アヌシュ選手が用いた他人の尿を出すための道具。
注射や点滴に関しては理解が難しい場合が多いです。分からない場合はJADAや薬剤師会に問い合わせたうえで行うようにしてください。救急でどうしても必要な場合は遡及的TUE申請をしてください。
(M3:遺伝子ドーピング)
2018年現在はまだ違反として見つかっていません。
以下の3つが禁止事項です。
①核酸のポリマーまたは核酸類似物質の移入
②ゲノム配列の変更および遺伝子発現の転写および/またはエピジェネティック調節の変更を目的に設計 された遺伝子編集用物質の使用
③正常なあるいは遺伝子を修飾した細胞の使用
ドーピングには様々な手法が用いられます。阻止するためにも、スポーツマンシップの大切さの教育が必要です。