「糖質コルチコイド」とは、一般的にステロイドと呼ばれているステロイドホルモンのことです。
薬剤師の方々はもうご存じのとおり、糖質コルチコイドはドーピングに該当する成分の一つです。
代表的な飲み薬として、
- 「セレスタミン配合錠」
- 「プレドニン錠」
- 「プレドニゾロン錠」
があります。
整形外科では関節内注射として使用されることがあるでしょう。
花粉の時期、整形外科にかかるときの選手からの相談、虫刺されや湿疹での軟膏の相談など、今までスポーツファーマシストとして活動されている先生なら質問を受けたことがあると思います。
その中でも、一番厄介なのが「痔」の軟膏の相談と思います。
患部に塗る場合はOKで、注入薬として使用する場合にはNG。投与経路でOK・NGが変わってくる厄介な糖質コルチコイドですが、そもそもなぜ、禁止物質に該当してしまうのでしょうか?
【理由】
- エネルギー代謝を活性化させ、競技力を向上させることがあるため
- 抗炎症作用により、けがをした状態で競技が継続できるため
- 感染の増悪、続発性副腎機能不全、消化性潰瘍が発現するため
が主な理由です。(参照:薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2020年版)
競技力向上と健康被害の2点が理由に挙げられています。
前述のように、2020年まで、糖質コルチコイドは投与経路によって、禁止になる場合と禁止にならない場合がありました。
- 【禁止経路】
- ・経口(口からの摂取)
- ・静脈内(注射での使用)
- ・筋肉内(注射での使用)
- ・経直腸(注入軟膏などでの使用)
- 【禁止にならない経路】
- ・関節内
- ・関節周囲
- ・腱周囲
- (いずれも注射での使用)
しかし、2022年からすべての注射経路が禁止となります。
注射経路とは、静脈内、筋肉内、関節周囲、関節内、腱周囲、腱内、硬膜外、くも膜内、滑液嚢内、病巣内(ケロイドなど)、皮下および皮内などがあります。しかしながら、ルール変更を十分にそして広く伝えるために、そして通達および教育については十分な時間を与えるために、ルールの実施は2022年1月1日から施行されます。
今まで、ケガなどの炎症を抑える目的として関節内、腱周囲にステロイド注射を行っていた競技者は要注意です。
2021年は移行期間なのでまだ違反にはなりませんが、2022年から違反となります。
現在使用可能な糖質コルチコイドの使用経路が全て禁止となるので、今から意識して知っておきましょう。知らなかったからと言って違反を免れるわけではありません。
こうなってくると、ステロイドの点眼は? などの質問が出てきそうですね。
点眼は注射ではないので大丈夫ですが、経過を見ていきましょう。