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第1回 Norikoさん(薬剤師Noriko×医療通訳×クリエイター)

大人の独学を応援する、自身も永遠の学習者。
【所有資格】 薬剤師/医療通訳技能検定1級/TOEIC®920点/総合旅行業務取扱管理者/Udemyコースクリエイター/
ウェルスダイナミクスプラクティショナー

薬剤師として働き家庭も持ちながら興味のあること、必要と思ったことを突き詰めて学び続けるエネルギッシュなNorikoさん。そのモチベーションの高さとストイックさが、お話の端々から伝わってきました!

Norikoさんと英語の奇妙な関係

  • まずはこれまでのご経歴について教えてください。

    大学卒業後DSで 10年ほど働き、夫の転勤にともないアメリカで3年ほど暮らした後帰国し、30代後半で初めて調剤薬局へ就職しました。
    渡米当時は長男が小学校に入学したばかり、長女が1歳と手が離せず、英語も全然話せなかったため現地で仕事には就きませんでしたが、じっとしていられない性分なので学校で英語のボランティアをずっとやっていました。

    駐在というとキラキラしたイメージを持たれますが全然そんなことはなく、ずーっと英語の勉強をしていました。英語は嫌いでしたが、イヤイヤながらもモチベーションを保つために自分の勉強のことを細々と発信していました。

  • 英語は嫌い、帰国後に必要性も感じられなかったとのことですが、そこからどうして医療通訳試験を受験するに至ったのでしょうか?

    帰国して再就職する際、せめて「ちょっとだけ英語ができる」ということを強みにしたかったからです。帰国後まったく未経験の調剤薬局へ入社しましたが、すごく扱いにくい新人だったと思います。私は卒業後すぐDSに入社して薬の勉強から離れていましたから、よほど国家試験を受けたばかりの新卒の子のほうが薬の知識はあったと思います。薬剤師としての自信がありませんでした。

    ですが、英語を強みにしたいと言ってもアメリカで触れていた英語は生活に必要なもので医療英語ではなかったため、アピールするには中途半端なものでした。はじめはTOEIC®や英検にチャレンジしましたが、それでは医療英語はまったく身につかなかったためいろいろと調べ、この医療通訳試験のことを知りました。そこで実際に過去問を取り寄せ、「これなら自分が学びたいこと以上のスキルが身につく」と思えたため、取り組むことにしました。

  • 勉強を継続し続けること自体が簡単なことではないと思います。もともとのNorikoさんの性格も作用しているのでしょうか?

    それもあるかもしれません。私はもともとの性格が、めちゃくちゃ努力家らしいです。自分ではそうは思わないのですが…。
    私は母子家庭で育ちました。母は不器用で仕事も家事もあまりできず、何でも自分でやるしかなくて、小さい頃からお弁当も自分で作っていましたし、学校もどれだけ遠くても公共交通機関に頼らず自転車で通っていました。弱音を吐ける人がいなかったので、自己解決してしまう。それが当たり前だったのでまったく自覚がありませんが、努力家だと言われる理由かもしれませんね。

  • 通訳の資格取得までのことを情報発信されたり、教材を作られるようになったきっかけは何でしょうか?

    英語が嫌いながらも「ここまでやった」という経験と努力、そして”勉強を継続する”ことには自信があったので、そのことについて発信していきたいと思うようになりました。そのきっかけは、帰国後にできたママ友たちでした。
    ママたちの生活の中心は子供や旦那さんで、自分の成長のために意欲的に何かに取り組んでいる人は少数でした。その少数派には起業している人や自分の成長のために頑張っている人がいて、とても刺激になりました。

    そこで「医療英語で仕事をしないの?」と聞かれるようになったことがきっかけで、最初は自分が納得すればいいと思っていた勉強でしたが「確かにもったいないな」と思うようになり、Udemyで教材を作ることになりました。
    それを機にいろんなことが始まり、ブログやTwitterなどのSNSを始めたらまたネットワークが広がりました。今とてもワクワクしています。

SNSは実験?

  • とても好奇心旺盛なNorikoさんですが、もともと薬剤師になることが夢だったのでしょうか?

    いえ、はじめから薬剤師を目指していたわけではありません。学生の頃は数学が得意で、化学など実験も好きだったため理系の進路へ進みました。バイオの研究職に就きたかったのですがそのためには大学院への進学が必要だったため、経済的な理由で選択肢から外しました。そんな中、当時は4年制で完結でき国家資格も取れるということで薬学部へ進学しました。

    実験といえば、私にとってはブログやInstagram、YouTubeなどの投稿も実験です。どういうことを発信したらどんな反応があるかなど、実験的ですね。
    インスタでは、自分が実際に学んでいることやオリジナルの内容を更新するのがポリシーです。いろんな実験の結果、フォロワーが増えるような内容はわかっているのですが、それはポリシーに反するのでやりません。自分が納得したものしかアップしませんし、そうすることでフォロワーの方々とは利害関係のないフラットな関係でいられ、楽しく更新できます。

    情報発信するときは、見てくれた人が嫌な気持ちにならないよう気を付けています。何か一つでも発信したことが誰かのきっかけになれば嬉しいです。「面白そう」と思ってもらって、それが行動につながって、「行動しましたよ」と言ってもらえるのが嬉しいしモチベーションです。有名になりたいとはまったく思っていません。

「勉強することをやめる」ために頑張る

  • 現在、学ばれた医療英語を活かす機会はありますか?

    それほど多くはありません。薬剤師として医療英語を日常的に使うならば場所が重要で、都内か観光地、あるいは大きな病院の薬剤部に行ったほうが良いかと思います。個人的には場所を変えてまで活かそうとは思いませんでした。それに医療通訳だけではまだ食べていけるほどの仕事として成り立ちません。

    仮に医療英語を活かす機会に恵まれたとしても、もともと英語は嫌いなので自分がプレイヤー(スピーカー)になるつもりはありません。たまに勤務先の薬局で外国の方の対応をしたり、ボランティアの医療通訳を引き受けたりすることもありますが、どちらかと言えば医療通訳をしたい人のサポートに回りたいですし、その方が自分には合っていると思います。

  • 少々もったいないような気もしますが……。

    嫌い、嫌いと言っていますが(笑)、じゃあそもそもなぜ医療通訳1級の資格を目指したのか? という話ですが、再就職時の強みにしたかったことに加え、英語の勉強をやめたかったことが理由でした。
    アメリカに行ってからずっと英語の勉強を頑張っていましたが、やめ時を見失っていました。TOEIC®の勉強も取得する点数の上限をつけて達成したあとやめたのですが、自己満足な点数クリアではなく、せめて何か役に立つものを……ということで医療英語を勉強しました。医療通訳1級の合格をゴールにして、勉強をやめようと思っていました。

  • どの勉強にも最終ゴールを設けているのでしょうか?

    はい。ただ勉強ばかり続けても、勉強している自分に満足しているだけで活かせられないなら意味がないと思うので、マニアになってしまうのなら上限を決めて、満足いくところでやめたいと思っています。追い求め過ぎてしまうと、限られた時間を無駄にしてしまうかもしれないので。
    その代わり、自分が満足できるまではがむしゃらに頑張ります。達成できなかったときの言い訳を作らないために一切手抜きはしません。やるだけやってもしダメでも、“頑張ってみたけどダメだった”だけで、言い訳をする必要はありませんよね。

    “点数や資格試験のための勉強”は達成したらスパッとやめて、一度立ち止まり、次はどうしたらそれを活かすことができるか? という方向へ考えをシフトします。例えば、私は以前TOEIC®900点以上を取得すれば英語を活かすことができると思い900点を目標にしていましたが、最終的に920点を取っても、英語を活かすことはできませんでした。
    そこで勉強を完全に医療英語にシフトして医療通訳1級を取得、それを活かすことができるようになったため、やっと英語の勉強をやめることができました。

  • 「やめるために頑張る」、一見矛盾しているようにも聞こえますが、究極ですね。

    自分が納得するかどうかが大事です。勉強はやめても活かさないわけではないので、私はUmedyで教材を作りました。「勉強を教えてください」とよく言われるのですが、それはしません(笑)。自分の知識や経験を”教えている”つもりはまったくなく、自分がやってきたことや、勉強する中で自分が欲しかった情報を更新しているので。

    とりあえず形になっているもの(教材)を残せたので、それが今後医療通訳試験に興味を持たれる方々の参考になれば嬉しいとは思っています。
    語呂合わせや糖尿病についてのまとめも、いつも自分が欲しいものを作っているという感じです。発信することは、全て自分の成長のためでもあります。

プライベートのこと

  • お子様の教育においても、Norikoさんの信念は伝えられていますか?

    始めたことを途中で投げ出すことは許しませんし、やるなら責任転嫁せず何事もやり遂げてほしい、ということは言っています。もしダメだったとしても、やるだけやったのであれば結果がどうであれ自分を誇りに思ってほしいです。
    一番よく言っているのは「かっこいい人間であれ」ということですね。自分自身がかっこいいと思える行動をとっていると、自然と自分のことも好きになれると思いますし、そんな自分をかっこいいと思ってくれる人とつながれると思うからです。

  • 仕事、家庭、勉強、情報発信……毎日とてもお忙しいと思うのですが、時間のやりくりの秘訣を教えてください!

    まず手を抜くのが家事です。家電は最新のものを揃えてフル稼働させています。普段は物欲がないのですが、自分の時間を作るためにお金を使うことには価値を感じているのでこういったところにはお金をかけています。

    最近はコロナで来客もないので、掃除も頑張っていません。カビは嫌とか油残りは嫌とか、こだわりポイントはありますけどね。高校1年生の息子と小学校5年生の娘がいますが、夫が子育てにとても協力的なため、私は家のことに関してはまったく頑張っていません。一般的な主婦よりめちゃくちゃ手抜きしていると思います。

“かっこいいおばあちゃん”へ向かって。これからやりたいこと。

  • ずばり、薬剤師を辞めたいと思ったことはありますか?

    今は自分がやってきたことを活かせられているので思いませんが、活かせられない状況になったら、おそらくすぐに辞めると思います。もちろん薬剤師として働くことは楽しいですが、薬剤師にこだわっているわけではないので。ただ、もし他にもっと楽しそうだと思えることが見つかったとしても、完全に薬剤師をやめるのではなく週1~2日くらいのペースで働くと思います。

  • もし今また進路を選べるとしたら、薬剤師の道を選ぶと思いますか?

    今働いていて楽しいですが、現場の薬剤師にはならないかもしれません。また進路を選べるなら研究職か、教員ではない何か裏方で教育関係の仕事をしてみたいです。何かを黙々とやるか、サポートするか、ですね。

  • 次に勉強したいと思っていることや、やりたいことを教えてください。

    ものづくりをやりたいと思っています。英語に関しては満足するまでやり尽くしましたが、そうは言っても語学はやめてしまうとどんどん衰退してしまうので、自分の英語力を維持するためにも、楽しみながら薬剤師向けの教材をもっと作ってみたいと思っています。私はオリジナルのコンテンツを作ることが楽しくて、それを使って勉強してくれる人がいると嬉しいです。Udemyで作ったものが完璧なものとは思っていません。
    英語学習のアプリも作りたくて、プログラマーの兄と一緒に開発に着手しましたが、お互い忙しく現在中断しています。

    ウェルスダイナミクスのプラクティショナーの資格も持っているので、それを活かして人間関係に悩んでいる人や自分のやりたいことが見つからない人の手助けをしたいとも思っています。それらのために、現在150時間くらい働いているメインの薬剤師の仕事もちょっと削りたいなとか、またDSでも働きたいなとか……。やりたいことがいっぱいありますが、ちゃんと収入につなげないとただの過労死になってしまうなと思っています(笑)

  • これからどんな人になっていきたいですか?

    最終目標は、みんなから頼られる「かっこいいおばあちゃん」です。
    そうなるために、私自身の行動が、誰かの良い刺激になってその人の行動をプラスの方向へ導けるような、出会ってよかったと思ってもらえるような存在になりたいと思っています。

    それはお手本を見せるという大それたことではなくて、私自身も失敗をしながら試行錯誤を重ねて成長していて、それを隠さず等身大の成長を発信しています。
    そのため、英語の教材を作っていますが英語が苦手と正直に言っていますし、調剤の経歴も浅いので、まだまだ新米と堂々と言っています。背伸びしてしまうとしんどくなるので、常に等身大です。失敗したことも発信しています。

    そうすれば、私の発信を見てくれた方もハードルが下がって、完璧じゃなくても頑張ってみようと思ってくれるんじゃないかなと思っています。

    余談ですが、息子の通うそろばん教室の80歳の先生が、今から英語を学びたいと仰っていて、「年を取ってもこれから新しいことを学ぶ意欲のある人ってなんてかっこいいんだ!」と思いました。そういうかっこいいお年寄りに会うとすごく刺激を受けて、自分はまだまだだな、という気持ちになりますね。これからもまだまだいろんなことを学んでいける気がします。

薬剤師はあくまでも資格の一つ

  • 現役薬学生、若手薬剤師の方へエールをお願いします。

    薬剤師免許を持っているからといって必ずしも病院や調剤の道へ進まなくても、結局は薬剤師も資格の一つに過ぎないので、利用できるときに利用すればいいのではないでしょうか。薬剤師と関係のない仕事でも、本当に自分が輝けると思える仕事に出会えたら、突き進んでいいと思います。

    学生の中には、せっかく6年間頑張って勉強をしたにも関わらず免許が取れずに愕然としてしまう人もいるかもしれませんが、6年生まで進級できるだけでも努力家だと私は思います。
    薬剤師になった人や目指している人は基本的に真面目で学び慣れているので、何を始めてもきっと最後までちゃんと学べるはずです。それが薬学ではない何か新しいことでも、他の人よりも吸収が早いと思うんです。学び慣れていない人は気が散ってしまって最後まで学べないので。万が一国試に落ちて、薬学の勉強をやめてしまったとしても、絶対に違うところで仕事になるようなことを学べると思います。

    最後になりますが……私のインスタはバリバリの情報発信ではなく、主にアラフォーからの学び直しで”楽しみながら学ぶ”がテーマですので、勉強しようと固くならず、気楽に見ていただけると嬉しいです。また、「こんなの知ってる?」とフォロワーさんからの知識共有も大歓迎です。薬剤師向けの英語発信も続けているので、英語に興味がある方にも見ていただけたら嬉しいです!


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