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- 原田真季さん(薬剤師・俳優)
- 現役の薬剤師として都内の調剤薬局に勤務しながら俳優としても活躍中。
2020年放送「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」にも薬剤師役として出演。 - Twitter:@smilemaki2
- Instagram:@maakichaaan
薬剤師としてのキャリアと働き方。
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まずは簡単にプロフィールを教えてください。
埼玉県生まれ、埼玉県育ちです。実は現役のときに入りたかった薬学部は落ちてしまい、一度は東邦大学の理学部に進学しました。やはり薬剤師になることを諦められず、半年間仮面浪人をしたのち星薬科大学を受験・入学しました。
大学では緩和医療と薬物依存に関する研究室に所属し、主に培養を使った研究をしていました。具体的には神経変性疾患や精神疾患、薬物依存などのさまざまな疾患に関与するたんぱく質の細胞保護作用と、アルツハイマー病や糖尿病、がんなどに関するたんぱく質の二つの相互作用の可能性や機序についての研究をしていました。 -
編入するほどの強い気持ちがあったということは、小さい頃から薬剤師になることが夢だったのですか?
はい。私は8歳のときに入院したことがあり、そのときに担当してくださった女医さんや看護師さんにすごく憧れたことから医療現場で働くことに興味を持ちました。その後「ナースのお仕事」というドラマの影響で病院で働きたいと思うようになり、中学生になってからは美容や化粧品にも興味を持ち、薬品開発に関心を持ったことがきっかけで薬学部を目指しました。
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現役で薬剤師としても働かれているということですが、俳優業と両立しながらの働き方について教えてください。
現在調剤薬局で勤務していて、撮影などがない期間は、ほぼフルタイムと変わらない週40時間程度働いています。
今の職場は俳優業と両立する目的で入社したということもあり、俳優業について理解してくださっています。普通の職場だと個人の都合で勤務時間の調整をすることはなかなか難しいと思うのですが、前もって分かっている場合はシフトを代わっていただけたり、22時まで開いている薬局なので、撮影が終わった後に勤務したりと融通を利かせていただいています。 -
薬剤師としては病院勤務がキャリアのスタートですよね。当時のことをお伺いできますか?
薬剤師資格取得後、すぐに都内の大学病院へ入職し3年間勤めました。そこは救命救急やがん治療が有名な病院で、最先端の医療に携わることができてやりがいもありました。
1年目は注射業務や内服調剤、外来化学療法室で働きました。夜遅くまで働くこともありましたね。2年目からは病棟担当で、泌尿器科と脳神経外科の病棟に、3年目は小児科病棟に勤務していました。基本的には1年毎のローテーション勤務、部門によっては3年固定のケースもありました。もともとがん治療と小児医療に興味がありました。小児科では、外来診療も担当し、自己注射の必要な患者さんの指導も行ったり、元気になって退院されるお子さんの成長を見られることにやりがいを感じていました。例えば白血病のお子さんだと平均で1年半~2年くらい入院される子が多いのですが、2歳で入院した子が4歳くらいになっておしゃべりできるようになったり、退院後外来でたまたま会ったときに覚えていてくれると嬉しかったですね。
調剤薬局へ転職した理由は、小児科に勤務するという夢が叶い、やりたいことは実現できたかなと感じたこと、そのあとの配属部門が3年間固定の勤務体制になってしまい、俳優業との両立が難しいと感じたことが大きな理由です。
薬剤師×俳優が叶ったドラマ出演。
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俳優にも昔から興味があったのでしょうか?
はい。小学生のときに、ドラマやバラエティー番組で同世代の子役が活躍しているのを観て「私もやりたいな」と思い、ある番組のオーディションを受けにいったのがきっかけでした。子役の事務所に所属する手前まで至っていたのですが、親の反対などもあり諦めてしまいました。
その気持ちが大学に入ってから再熱しました。一度やりたいと思ったことはやりたいタイプだったので、大学時代はエキストラをやっていました。エキストラでも、せっかくやるならお芝居を上手にやれるようになりたいと思っていたので、きちんとレッスンを受けたり現在の事務所に所属することになりました。 -
昨年出演されたドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』は、薬剤師と俳優2つの夢が合わさった作品ですよね。出演が決まったときの気持ちはいかがでしたか?
すごく嬉しかったです。原作の『アンサング・シンデレラ』は薬剤師業界ではかなり有名な漫画なので、ドラマ化する前から「もしドラマ化するなら絶対に出たい!!」と思っていました。やっと両方の経験を活かせられるチャンスが来たなと思いましたね。
周りも薬剤師の友人が多いのですごく反響が大きく、自分のことのように喜んでくれました。 -
オーディションや撮影現場でのエピソードがあれば教えていただけますか?
オーディションでは自己PRの時間はほぼなかったのですが、何シーンか台本をやってみたときに「本当に薬を扱っているように見えるね」と評価していただけました。また、他の医療ドラマで看護師役を経験したことも多かったので、それはアピールすることができました。
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薬剤師の経験をドラマに活かすことができた場面はありましたか?
ありました。あまり映っていない部分もあるのですが散剤の調剤をするカットでは手技を任せていただいたり、実際の現場での動き方を周りの薬剤師役の方たちや助監督、スタッフさんにお伝えしたりしていました。
薬剤師として俳優として、もっと自分を高めていきたい!
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働く中で大切にされているポリシーやマインドを教えてください。
薬剤師業と俳優業両方に共通することは「責任感を持つ」ことです。あとは「常に見られている」という意識を持つことと、どんなところでもチャンスはあるということでしょうか。人とのつながりを大事にして、どの現場に行っても、真摯に取り組むよう努めています。
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二足の草鞋に、オフの日はレッスン、日々の自己研鑽……リフレッシュ方法は何ですか?
もともと3、4日休暇があれば一人でハワイや韓国に行くくらい旅行が大好きなので、コロナがなければふらっと旅行に行くことが多いですね。あとはサッカー観戦。ロシアW杯はロシア現地まで行き、テレビに抜かれたこともありました(笑) それほど大好きなので、Jリーグや日本代表戦の試合はよく観に行きます。最近は瞬発力や表現力を磨くためにやり始めたダンスがリフレッシュにもなっていますし、舞台やドラマや映画などの作品を観て過ごすことも多いです。何もやりたくないな~というときはYouTubeを観たり、カフェでゆっくりする時間を作るようにしています。
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これから挑戦してみたいことを教えてください。
俳優業だと、映画やドラマどんな役でもいいのですが、物語の中で必要不可欠な1人の役を演じ切りたいです。また、「この人あのドラマにも出ていたよね」と思ってもらえるように、いろいろな医療系の作品に今後も出演していきたいです。
薬剤師としては、今もそうですが、患者さんに寄り添った治療の提案がもっとできるようになりたいと思っています。薬局ですと患者さんの来局頻度で残薬も把握できますし、会話の中で服用しにくいタイミングなども聞き出せたり、実際に聞くと処方通りに服用できていない患者さんもけっこういらっしゃったりするので。それを医師に相談、提案できる薬剤師って素敵だなと思うので、自分もそうなりたいと思っています。
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具体的に憧れている人はいらっしゃいますか?
俳優では特に3名います。1人目はアンサング・シンデレラで共演した石原さとみさん。数多くの作品に出られていますが、どれもすごくお人柄が出ていると感じていて、実際に共演させていただいて責任感やプロ意識の強さにとても刺激を受けました。2人目は芳根京子さん。お若いのですが、学生のかわいい役からしっかりした刑事役まで、作品によって全然違う顔になれるのが私にはまだできないことなので、尊敬しています。3人目は平岩紙さんで、たくさんの医療系の作品に出演されていて記憶に残る方なので、私もそういう俳優になりたいなと思っています。
また、最近SNSを見ながら、トーク力のある人はすごく魅力的だと感じています。将来的には俳優を通して薬剤師の仕事ももっと知ってもらえるような、説得力と発信力のある人になりたいと思っています。
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原田さんの思う「素敵な薬剤師」像を聞かせてください。
薬剤師は常にアップデートが必要な職業だとすごく思っています。新しい薬や改定もどんどん出てきますし、だからこそ知識のある薬剤師や、学会や勉強会に参加して常に勉強している薬剤師は素敵で尊敬しています。最近ではSNSで薬剤師の資格を活かした発信をされている方も多いですが、一般の方に向けて薬のことを分かりやすく情報発信されている方を見ると素敵だなと思います。
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最後に読者へメッセージをお願いします。
私は、国家試験に3点足らずに落ちてしまったことがありました。6年も頑張ったのにこの先どうしようと思いましたし、すでに大学病院にも内定をもらっていたので、来年は採用してもらえないんじゃないかと不安にもなりました。なので、学生さんが抱えているプレッシャーはすごくよく分かります。
なんとなく薬学部に入った方、なんとなく資格を取った方、医療施設に勤務して認定の資格を目指されている方、直接的に資格を使わずメーカーや施設にお勤めの方……薬剤師を目指している方も現在働かれている方も、いろんな経緯の方がいらっしゃると思います。
私は薬剤師になったからこそ、薬剤師として働きながら自分の幼少期からの憧れだった俳優業を両立できています。薬剤師の仕事は多種多様にあって、その人次第で無限に広がるなと実感しています。趣味や挑戦したいことがあるけれどなかなかできていない方には、薬剤師の資格はいつでも活かせられるチャンスがあると思うので、今この瞬間にできること・やりたいことにチャレンジして、諦めないで突き進んでほしいなと思います。
当社が運営する薬剤師専門の転職サイト『ファーネットキャリア』でも、さまざまに活躍される薬剤師(薬学生)様の転職成功事例などを多数ご紹介しています。