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さまざまに活動、活躍されている薬剤師&薬学生の方のインタビューをたっぷりお届けします!

第6回 村阪敏規さん(こうなん薬局・代表取締役/「CloseDi」主宰/『医薬品情報のひきだし』著者)

高いバイタリティで、大学病院勤務から調剤薬局経営者に転身。

  • まずはご経歴をお伺いできますか。

    神戸薬科大を卒業後、三重大学病院の薬剤部に就職し、丸3年間働いたあとに薬局を独立開業しました。独立してから三重大学大学院修士号取得、現在は博士課程にも在籍しています。
    これまでに、地銀主催のビジネスコンテストで優秀賞を頂いたり、大学院時代に学会・シンポジウム発表、論文執筆を合わせて10回ほどしたり、薬学系の新聞に掲載していただいたり、今回『医薬品情報のひきだし』を出版させていただいたりしました。地域薬学ケア専門薬剤師、医療薬学専門薬剤師も取得しています。

  • すごいバイタリティですね! もともと独立したいと思っていたのですか?

    いいえ、そうではなかったのですが、25歳のときに偶然開局の案件が舞い込んできて「薬局ってどんな感じだろう」と興味を持ち、いろいろ調べる中でチャレンジしてみようと決心しました。当時は若かったので、失敗したときのことなどマイナスなことは何も考えてなかったかもしれません。もちろん独立にあたってたくさんの方々のご協力もありました。
    大学病院が嫌だったわけではまったくありません。同期や同僚に恵まれていましたし、尊敬できる上司もいたので、開局のご縁がなければそのまま病院でずっと働いていたと思います。

  • 薬局勤務も経営者としても0からのスタートで、ご苦労もあったと思うのですが……。

    調剤薬局をまったく知らない病院勤務で、しかも開業2ヶ月前までとギリギリまで病院で働いていました。本を読み漁ったり、周囲の方からアドバイスを頂いたり、他の薬局に研修に行かせていただいたり……なんとか情報を得ようと頑張りました。開局日は決まっていたので、火事場の馬鹿力が働きましたね。本当に忙しかったので、あまり記憶はありませんが(笑)

  • 大学病院と調剤薬局の両方の勤務経験から、双方の違いを感じることはありますか?

    病院も薬局も、患者さんに対して適切な薬物治療を行うことに全力を尽くすというミッションは同じだと思います。そのうえで、私の経験した急性期病院と地域薬局の違いになりますが、薬局は長期的に患者さんを看ていくことになりますよね。”地域の薬のスぺシャリスト”として、オールラウンドな知識が必要だと思ったんです。マリオテニスでいうところのマリオみたいな。外来の待ち時間削減を考えると、ヨッシーみたいなスピードタイプな一面も必要でしょうか。

    一方で病院は、当然ですが入院患者に介入する必要があります。私が病院にいた当時は病棟ごとに担当薬剤師が決まっていて、その病棟での活動をメインで行っていました。病棟では医師や看護師とのコミュニケーションや電子カルテや多職種の方からたくさんの情報が得ることができました。そのため多くの患者さんの情報を個別に踏まえたうえで薬学的な介入をする必要があり、より専門的な知識が求められると感じました。

    ただ、最近は院外処方せんに検査値やレジメンが記載されているなど、開局当初と比べてかなり情報が得やすくなったと感じています。また在宅医療は退院時カンファレンスの場や医師、訪問看護師、ヘルパーなどさまざまな職種から情報が入ってくるので、病院・薬局の情報格差が縮まっているのではないかと思います。

  • 今後の薬局の展望を教えてください。

    当薬局は在宅医療に積極的に取り組んでおり、クリーンベンチも置いています。できれば在宅に特化した店舗をこの店舗の近くに作って、2店舗拠点にすることでより精力的に在宅医療に取り組んでいきたいと思います。

病院でのDI業務経験を活かして作ったサイト「CloseDi」と『医薬品情報のひきだし』出版。

  • 運営されている医薬品情報編集室(サイト)「CloseDi」について。サイトの概要や立ち上げの経緯について教えてください。

    約3年前にサービスを開始しました。大学病院時代はDI室に所属しており、病院の医師、看護師、薬剤師から日々届くさまざまな質問に対して情報提供を行っていました。
    問い合わせ内容を大学の中でデータベース化していたのですが、同じような質問もあるなあと感じていました。一人が疑問に思うことは多くの方も疑問に思うし、それは薬局勤務の薬剤師も同じだろうなと考えました。でも仕事が忙しくてなかなか調べられないということを想定し、どうにか効率化を図れないかと思い作ったのが、CloseDiの前身「SAGASU- DI」でした。自分で1から作りたかったので、オンラインのプログラミング講座を受講してサイトを作りました。

    おそらく利用者で一番多いのは薬剤師だろうと思っておりましたが、のちにアンケートを取ると薬局薬剤師がダントツで多いことがわかりました。SAGASU-DIは医師や看護師など薬剤師以外の医療職種も対象としていましたが、臨床現場で薬剤師がより活用できるサイトにするために、また医薬品情報を適切に伝えるのは薬剤師の役割だという想いもあり、対象を薬剤師に絞ることにしました。さらには効率化だけではなく、医薬品情報の質の向上を目指して会員制にしたものが「CloseDi」です。

    CloseDiには質問機能もあるので、会員同士のコミュニケーションも取ることができます。現在(2021年8月現在)会員数は1,540名、20~30代くらいの若手の薬剤師が多く、勤務先は病院・調剤薬局が半分ずつくらいです。
    記事の大部分は私が更新していますが、会員からの質問に対して会員が回答しているものもあります。登録費用は無料ですが、一部DLが必要なコンテンツは有料です。

  • サイトの管理だけでもかなり大変そうですね。

    とても大変です(笑)。薬局業務と並行しながらの管理になるので、時間が取れるときにまとめて更新しています。CloseDiになってから専門的な機能を持つようになったので、このサイトは自作ではなく制作会社に依頼しました。

  • ユーザーの反応はいかがでしょうか?

    実はそれを確認する機会が無くて……。たまに問い合わせ窓口から改善のアドバイスを頂くことはありますが、このサイトの評価はわからないですね。3年で1,540名という会員数が、一定の評価を得ているということだと言えるでしょうか。

    会員数の伸びについては、学会で薬学系のメディアから取材を受けた際にCloseDiのことを話して新聞に掲載していただいたのですが、その直後は会員数がぐっと伸びました。今回の書籍化も、新聞を見た編集者の方から声をかけてもらったことがきっかけです。書籍化したことも会員数の増加につながったと感じています。積極的な情報発信や、学会という信頼度の高い場で発表することは広報的にも良いことだなと思いました。

  • CloseDi。取材時点では573記事が公開されていた。
    そのすべてに村阪さん自身が目を通し、情報の質の高さを維持している。

  • CloseDiを書籍化した『医薬品情報のひきだし』についても教えてください。

    だいたい過去2年分くらいまでのサイト掲載記事をベースとしています。サイトの内容をそのまま載せているのではなく、思考のプロセスを紹介しています。Webでは疑問に対する答えを簡潔に、書籍では回答に至るまでの思考のプロセスを丁寧に説明しているという違いがありますね。

    こだわりポイントは図をたくさん載せていていることです。最初に図を見て内容の全体像を把握したうえで本を読み進めると理解度が深まりますし、本を読むのも時間がかかるので、図を使うことで理解の効率化を図ることもできます。

  • 最後に読者へメッセージをお願いします。

    地域連携が今の薬局のトレンドで、”地域の医薬品情報室”としての役割を求められていると思います。そこでCloseDiや『医薬品情報のひきだし』がお役に立つと思いますので、ぜひ会員登録や書籍購入をしていただければと思います。

CloseDi


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