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今月のPickUpファーマシスト

第10回 KOUTYさん(病院薬剤師・ブロガー)

今月のPickUpファーマシスト

さまざまに活動、活躍されている薬剤師&薬学生の方のインタビューをたっぷりお届けします!

教えてくれるのは

KOUTYさん(病院薬剤師・ブロガー)

元CRC、病院薬剤師10年目。NST専門療法士。薬剤師のための豆知識ブログ「薬剤師のすゝめ」やSNSを通して薬の豆知識や参考書のレビュー、実践的な情報を発信している。漢方にも詳しい。

薬・栄養・漢方の豊富な知識が頼りにされる病院薬剤師。

―簡単にこれまでのご経歴について教えてください。

薬剤師の父の影響を受け、薬学部へ進学しました。卒業後はCRCとして大阪で約2年間勤め、現在勤務している北陸の病院に転職して10年ほど経ちます。CRCも素敵な仕事でしたが、臨床で働きたいという気持ちが強まって転職しました。

 

―新卒時代の就活では、病院は考えられていなかったのですか?

そうですね、当時は製薬メーカーしか受けておらず、縁あってMR職として内定も貰っていたのですが卒業延期になってしまい(笑)、白紙になってしまいました。再度就活をしたときにCRCという職種に興味が沸いて、その道へ進むことにしました。

 

―現在は病院でのご勤務が充実されているとのことですが、具体的なお仕事内容について教えていただけませんか?

入職2年目からNSTとして働いています。栄養に関してはまったく興味がなかったんですが、病院に入職してから食べること(栄養)も大事なことだと感じました。いくら薬を飲んでも、そもそも栄養が摂れなければ治るものも治らないですよね。当病院のNSTは医師、看護師、薬剤師、栄養士、検査技師、歯科医、言語聴覚士でチームを組んでいます。嚥下能力を含め、患者さんがきちんとご飯を食べられているかどうかを見ています。

いろんな理由でご飯を食べられない方は点滴で栄養を補う必要がありますが、点滴でどうバランス良く栄養を入れるか考えることが僕の仕事です。少しずつ食事が食べられるようになればその分点滴も減らしていったり再計算したりします。普通にご飯を食べられる方でも吐き気や下痢、食欲不振になる原因がある薬を飲んでいるか・いないか、改善するためにはどの薬を入れるか・入れないかなどを考えています。

 

―かなり重要な役割ですね。

点滴となると、チーム全員口をつぐんで僕に振ってくる感じはありますね(笑)

チーム内ではそれなりに意見は通るので、その分責任が伴うので身が引き締まる思いです。現在は内科系と集中治療室あわせて12名くらいの入院患者さんを看ています。

 

―漢方・生薬の認定もお持ちということですが、こちらも業務にどのように役立っていますか?

漢方を勉強するきっかけになったのは、まったく漢方が解らなかったからです。大学時代は国家試験に出題される漢方の問題は捨てていたくらいなんですけど、臨床現場で働いていると漢方薬を処方する機会がけっこう多くて。薬剤師は、良くも悪くも資格を持っていれば知識がなくても薬を出せてしまえるのですが、自分がまったく解らないまま処方して患者さんに説明するのは良くないなと思ったことがきっかけです。

実はコロナ禍ということもあり、昨年資格を失ってしまいました。住んでいる地域が漢方の単位を取れる勉強会が極端に少なく、コロナ禍で他府県へ単位を取りに移動することもなかなか難しかったので。ですが、NSTでもよく漢方は使うので知識はかなり役立っています。すぐに効果が出るのは西洋医学の薬ですが、効き過ぎてしまうこともあります。入院患者さんは高齢の方が多いので、漢方薬のほうがゆっくりマイルドに効くため使いやすいと感じます。それもダメなら西洋医学の薬を使うなど、臨機応変に使い分けています。

これから認定試験を目指される方に、一つアドバイスを。僕が受験したとき、花の写真から何の生薬かを問う問題が出ました。主にネットに公開されていた過去問で勉強していたのですが、全部白黒で出力していたので花の色がまったく分からず……(笑)。なんとか合格しましたが、カラーコピーしておけばよかったと後悔しています(笑)

 

―仕事に対するポリシーがあれば教えてください。

当たり前かもしれませんが、患者ファーストを意識しています。もちろん、患者さんそれぞれのご家庭にさまざまな事情があるので、それらをきちんと汲み取って、それぞれの患者さんにベストな薬を提案したいと思っています。そして薬のプロなので、どんな質問にも答えようと頑張っています。常に病棟にいるので、医師や看護師など他業種の方からよく質問を受けることがあります。「薬のことなら僕に聞いてください」という気持ちで一緒に仕事をしています。集中治療室にいると、毎朝のカンファレンスで医師から薬の使い方やより良い薬の有無について質問をもらうことがあります。自分の治療方針が採用されて患者さんが元気になると、大きな達成感とやりがいがあります。

 

―患者さんへの指導で苦労されることはありますか?

自分の考えを持っていらっしゃる患者さんもいるので、それが間違っているものの場合説得することに骨が折れますね。例えば食後に飲むと副作用が強まってしまう薬を、食前だと忘れてしまうからと自己判断で食後にしてしまうケースなどがあります。そういうときに一方的に指摘しても聞いていただけないので、食後に飲んではいけない理由をきちんと丁寧に伝える必要があります。転職して2年目くらいまではけっこう一方的に言ってしまっていたので、聞いてもらえないこともありました。うまくできるようになったのは最近ですね。

ブログやTwitterも、そういった上手な指導方法や新しい薬について勉強しようと思ったことがきっかけです。コロナ禍で学会がなくなってしまったので、意見を交わす場をオンラインに求めたのかもしれません。

 

―ブログやSNSではどういう情報を発信されていますか?

病院に勤務して10年も経つと日々の業務がマンネリ化してしまって。新しい薬に関して学ぶ機会もなかったので、自発的に調べて、あわよくばそれが誰かに読んでもらえたらいいなという軽い気持ちで発信していました。調べて執筆するのはどうしても時間がかかるので、最近は本業が忙しくて更新できていませんが、今年は頑張って再開したいと思っています。

Twitterもブログと同じタイミングで始めました。始めて半年くらいはほとんどリアクションがなかったのですが、ある参考書に載っている”イスラム系の患者さんに、とある薬が処方されているが問題ないか?”という問題についてツイートしたことが、フォロワーが増えたきっかけでした。その薬のカプセルに使われている成分に牛(=イスラム系の方にとって神聖な動物)が原料のゼラチンが入っているためNGというものでしたが、なかなかすぐにわかる問題ではないなと感じたので、「こんなのわかる人いますか?」とツイートしたところちょっとバズって、そこから少しずつフォロワーが増えていきました。それから毎日1~2つずつくらいのペースで薬に関するツイートを心掛けています。

最近は薬学生のフォロワーが増えています。たまにリプライや質問箱から質問が届きますよ。看護師さんからも頂くことがあり、2年で500件くらい質問が来ていると思います。一つひとつきちんと調べて返答するようにしています。

 

―お一人ずつ回答されているのはすごいですね! 薬以外での相談はありますか?

卒業後の進路相談をたまに頂きます。あと、自分の学習のために定期的に参考書を読んでそのレビューを書いているので、おすすめの参考書について訊かれることもあります。

医療関係者ではない本当の患者さんから薬の質問が届くこともあって、やりとりを5~6回することもあります。これは通常業務と変わらない感じですね(笑)

 

―これからサイトやSNSをどう活用していきたいですか?

去年からInstagramを始めたのですが、そちらも不定期なので更新に力を入れていきたいですね。ブログのほうは新しい薬に関する記事更新に注力して、TwitterやInstagramと特徴を分けていきたいと思います。コロナが落ち着いてきたら、SNS上で知り合っている人にも会ってみたいですね。将来的に本を一緒に作るなどできたら面白いですね。

栄養は治療の根本。

―薬学生や若手薬剤師に向けてメッセージをお願いします。

薬局に比べると確かに給料は劣るので病院を目指す方は少ないかもしれませんが、それを差し引いても他業種の方々から学ぶことも多く、薬剤師人生では決して無駄にはならないので、迷っているならチャレンジしてほしいと思います。NSTについては、薬剤師だから栄養のことは別に勉強しなくても……と思われる方もいらっしゃるかもしれません。専門ならばがんや感染症が花形ですしね。ですが、栄養はすごく根本的なことなので、それを改善してあげられるとすごく弱っていた患者さんが元気になられることがあるので、とてもやりがいがあります。栄養は奥が深く、医師と話す際の良いコミュニケーションツールでもあると思います。

 

―最後に、ブログやSNSを通してユーザーに期待することを教えてください。

僕のブログやSNSでは小難しいことはあまり書かずに、薬学生や新人薬剤師向けに薬の違いなどを解説しているので、そこで得ていただいた知識が患者さんへの指導に役立てば嬉しいです。たまに感謝のコメントを頂くこともあるのですが、更新するモチベーションになりますね。ゆえに、嘘の情報は流さないように心がけていますが、万が一間違っていることがあれば、バンバン指摘していただければと思います。お互いに成長できることが目的ですから。