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第14回 スペシャルインタビュー
木村美紀さん(薬学博士・東邦大学講師)×福井セリナさん(タレント・現役薬剤師)

生島企画室所属の薬学博士で東邦大学講師・木村美紀さんと、タレントで現役薬剤師の福井セリナさんにインタビュー!
それぞれの学生時代のお話や、現在の働き方から感じる薬剤師という職業の可能性 、今年1月に立ち上げられた「理系クイズ研究会」の展望などについてたっぷりとお話を伺いました。

木村さん・福井さん

左:木村美紀さん(薬学博士・薬剤師・大学講師)

東京大学薬学系研究科博士課程修了。おくすりのことを分かりやすく伝えるスペシャリスト。学生時代から多数のクイズ番組への出演経験があり、おくすりをキャラクターにした著書「くすり図鑑シリーズ」(じほう)は、シリーズ累計6万部を突破。東邦大学薬学部の講師も務める。一児の母でもある。

右:福井セリナさん(タレント ・薬剤師)

慶応義塾大学薬学部卒業。グラビアで活動後、現在はタレントとしてテレビ番組のコメンテーターやラジオ番組のパーソナリティ、雑誌でのコラム執筆などマルチに活躍しながら、週2日薬剤師として都内の調剤薬局に勤務中。

多忙な薬学生時代と、今の薬学生に思うこと

―学生時代からテレビ出演など芸能活動をされているお二人ですが、やはり二足の草鞋は大変でしたか?

 

木村さん(以下木村) 私は大学院時代の研究が本当に大変でした。自分の都合ではなく細胞の都合を中心に日常が回ることもあったので(笑)テレビ番組も、時間をなんとか調節しながら出演していました。

大学院では“薬のもとになる成分を生き物の中から見つける”ことが研究テーマで、海の生物に注目して、海綿動物から成分を抽出、解析をしていました。海綿は、先生が実際に海に潜って採集してくださったんです。「研究」という答えの無い世界で答えを出すことは大変でしたね。

 

―具体的にどんなところに苦労されましたか?

 

木村 既知の成分はいくつか出てきたんですけど、未知の、誰にも発見されていない成分を見つけることにすごく苦労して、本当に宝探しみたいでした。ある程度目途はつけていましたけど、新規化合物を発見できたのは奇跡に近かったですね。
ちなみに私はフラスコを洗っているとき、フラスコの丸みを触っている瞬間に「この構造は!」とひらめきました。何気ない日常の瞬間に潜在意識の中の何かが繋がったみたいです。

 

福井さん(以下福井) フラスコの一体何に……?(笑)

 

木村 手の感触と……いろんな偶然がたまたま重なって、予想もしない瞬間だったから、どうやってひらめいたのか自分でもよくわからなくて。脳って不思議ですね(笑)

 

―福井さんはいかがですか?

 

福井 私は国家試験勉強と芸能の仕事の両立が大変でした。国家試験の時期とグラビア全盛期が被っていて、体型管理のトレーニングをしながらも国家試験のことが頭によぎって、「一体何してるんだろう?」というジレンマはありました。実習期間と仕事が被ったときは実習が優先だったので、仕事のほうは事務所でスケジュール調整をしてもらったり、仕事量を少しセーブさせてもらった時期もありましたね。

余談ですが、卒業式と国家試験の発表日が一緒だったので全然晴れやかな雰囲気ではなく、みんな顔が青ざめていました(笑)スマホで合格発表を見て、自分の番号を確認できて袴で飛び跳ねたのを今でもよく覚えています。

 

木村 でも、もともと国家試験は受けるつもりがなかったんですよね?

 

福井 そうなんです。理系科目が好きという理由で薬学部へ入学したので、薬剤師を目指していたわけではなかったので。慶応は意外とそういう人が多かったですね。薬剤師と全然関係のない仕事へ就いた友達もいます。

 

―何がきっかけがあって、薬剤師として働こうと思われたのですか?

福井 資格を取ったからには一度薬剤師として働いてみようと思ったのと、ちょうどコロナ禍で薬剤師が不足しているという噂もあったので飛び込みました。実際に働いてみたら楽しくて。別業界にいたからこそ薬剤師の良さがわかりましたし、人の役に立てることってこんなに面白いことなんだと感じることができました。なので、私は別の仕事を経験していて良かったなと思っています。

 

木村 東大は研究志向の学生が周りに多かったので、卒業後は何をしようと考えている人が多かったですね。一度社会に出て働きながら国家試験合格を目指してもいいわけですし、学生さんには万が一結果がうまくいかなかったとしても、挫折せずに他のいろんな道も模索してみてほしいなと思いますね。

 

福井 薬局ってかなり狭い世界だと感じます。そこで勤め上げるのももちろんいいと思いますけど、せっかく地球は丸いので、いろんなところへラフに行ってもいいんじゃないでしょうか。研究で海に潜ることもありますしね。

 

―木村さんは実際に東邦大学で講師として学生と接していらっしゃいますが、学生に対して何か感じることはありますか?

 

木村 6年生に授業をしていると、モチベーションや意識が高くて真剣だと感じます。今の国家試験はかなりのエネルギーを注がないと受からない難しい内容になっているので、6年生は本当に必死ですね。それに向けて、低学年時からベースを作るようにサポートもしています。

 

福井 確かに、6年生になったときに、なんで1年生のときからちゃんと勉強しなかったんだろうってすごく後悔しました。結局、低学年のときから地道に勉強したほうが楽です。学生さんにいっぱい言ってあげてください!

 

木村 1年生や2年生には、学生同士でディベートをするなど学生が主体の授業も担当していますが、グループで楽しそうに課題に取り組んでいて、好奇心旺盛で活発だと感じます。あと最近は学部の垣根を超えた授業もあります。

 

福井 いいですね。私の学生時代は年に2度くらい、イベント程度でしかそういう機会がなかったです。医師、薬剤師、看護師、介護士などもっと医療従事者どうしが一緒に学ぶ機会があれば、もっとお互いを知ることができていいのにと思いました。相手が具体的に何をしているのか理解できれば、きちんと感謝もできますよね。

逆算からの薬の勉強は楽しいもの

―木村さんは、2020年のご出産が大きくライフスタイルが変わるタイミングだったと思いますが、ご自身の考えや気持ち面での変化はありましたか?

 

木村 子供が小さいときはしょっちゅう熱を出して病院へ連れていくことが多かったのですが、そのときに、日本は乳幼児医療費助成制度のおかげで無料で医療を受けられることの有難さを実感しましたし、薬剤師としては、子供ならではの体内動態に合った薬物治療などを間近に見ることができて、薬がより身近になったような気がします。
そして、そういう現場で活躍されている薬剤師さんを見たり直接話を聞いたりする中で、“薬剤師を育てる”という自分の仕事に還元したいという想いが大きくなりました。

あとは、成分、形、味……やっと子供の口に入るまでの、薬に関わるたくさんの人の想いやさまざまなストーリーをより感じるようになりましたね。

 

―薬にまつわることで、お子様に苦労されたことはありますか?

 

木村 薬を飲ませるのが本当に、本当に大変で(笑)教科書どおりの方法をいろいろ試してもうまくいかないので、いろんな食べ物や飲み物に混ぜて試して。世の中にはすごく苦労している親御さんもいらっしゃるんじゃないかと思います。

そういえば、もうちょっと子供が大きくなって「どうしてこの薬は効くの?」と聞かれたときにちゃんとわかりやすく説明できるようになりたいなと、そういう発想も持つようになりましたね。

 

―幼少期に薬の作用に興味を持ったことがきっかけで薬剤師になったという方、けっこう多い気がします。

 

木村 そうですね。そのわりには、児童向けの薬の絵本とか、意外と少ないですよね。

 

福井 薬の絵本、やりたいですね。お口に入るところからストーリー仕立てで。

 

木村 薬を飲ませるときにも使えそうですよね。アニメの『はたらく細胞』が大好きなんですけど、その薬バージョンみたいな感じで分かりやすく作れたらいいですね。

 

福井 そういえば、なんで小学校の保健の授業で薬のことを勉強しないんだろうって不思議です。具合が悪くなったら、おうちで薬を飲まないといけないのに、その薬の勉強を全然しなかったなって。

 

木村 家庭で親が教える機会も多いですもんね。そういうところに役立つことができる活動ができたらいいですよね。

 

―高校までのかじる程度の生物や化学だけでは薬のことまでは学べませんし、薬学部や薬科大へ進学しない限り、薬について勉強する機会があまりに少ないですよね。

 

福井 実は繋がっているんですけどね。本当に高校で学ぶ生物や化学の延長上にあるんですけど、触りの部分だけだと薬の話とは嚙み合わないだけで。反対に、薬(ゴール)を知ってもらうと化学や生物の勉強ってとても面白いんですよ。

 

木村 それは私も本当に感じています。担当している2年生の科目では、薬物治療と基礎科目を関連付けて“薬と結びつく生物や化学”という視点で授業をすると、学生さんがすごく楽しんでくれて反応が違うんです。臨床と基礎を結びつける授業を、私も目指しています。

 

福井 私も木村先生の授業、受けたかった~!

学ぶことの楽しさ、薬剤師の可能性を世の中に広めていきたい

―今年の1月にお二人で立ち上げられた「理系クイズ研究会」についても教えてください。

 

木村 私が今の事務所に移籍したときに、事務所の方が同じ薬剤師の資格を持つ福井さんと一緒に何かやってみないかと提案してくださったことがきっかけで立ち上げました。情報番組への出演や、先ほどお話したような薬の本を作ったり、薬のクイズ問題を作ったりしたいですね。一般の方向きに発信できるような題材も探しています。

 

福井 そうですね!YouTubeで一日一問動画配信とか。無限に作れる気がします。

 

木村 薬ってどんどん新しいものが出てきますしね。

 

福井 おうちで使う薬や病院の難しい薬とか、難易度も変わってきますよね。あと、実際に働いていて感じるのは、意外と「食間」「食直前」の意味など、わかってもらえないワードが多いなと。そういうのをクイズにしても面白いかもしれません。

 

木村 クイズを通して、楽しみながら健康になってもらえたら嬉しいですね。

 

―そんなお二人の今後の目標をお聞かせください。

 

福井 SNSやYouTubeなどを活用して、“身近な薬剤師”としてのキャリアを重ねていきたいと思っています。例えばダイエットだと、薬剤師目線だとプロテインの飲み方一つだって変わってきます。薬剤師は日常生活でも活用できるさまざまな知識を持っているので、そういう身近な情報を届けられるようなタレントになっていきたいですね。美容ネタも大好きなので、薬剤師として製品開発にもどんどん携わりたいという目標もあります。

 

木村 薬学部6年間を通じて、いろんな科目の勉強を集大成として理解できるときに初めて見える世界があるんですけど、それを体現化できるような参考書を今執筆していて、今年中にリリースすることが目標です。私は薬学教育の道を極めたいと思っていて、科目や領域の垣根を越えて多分野の知識が繋がるような教育を志しています。授業や参考書など、次世代の教育にさまざまな面からアプローチしていきたいです。

 

福井 掛け持ちで働いていますが、普段薬局で働いている薬剤師さんは、自分たちがすごいことをやっているということを忘れているんじゃないかなと、すごく感じます。基本的にルーティンワークなので無理もないかもしれませんが、毎日とても尊いことをやっていますし、健康や体形維持などの日常生活で向き合ういろんな場面で使える知識を網羅している脳があるのに、日々の業務をこなすことに集中してしまっていて、薬剤師としての誇りが薄くなっているというか とてももったいないですよね。薬局内だけではなくその知識を使える場面がたくさんあるので、もっと自信を持ってほしいなと思います。

 

木村 私の同級生も、薬学部を卒業したうえで弁護士になったり起業したりと、薬学の世界を飛び出している人はいます。薬学の知識は活かしつつ違うステップに繋げているので、世界は広いなあと感じますね。今やっていることは、きっと何かに結びつくということを伝えていきたいですね。

 


\木村美紀さんの新刊情報/

①東大卒ママの親子で楽しむ ぬりえ算数 1ヵ月でぐんぐん伸びる(さくら舎)

定価:1,650円(税込み)

発売日:2022年7月7日

 

②つながる薬学 科目と科目の垣根を越えて、多分野の知識がつながるニュースタイル!(じほう)

定価:3,960円(税込み)

発売日:2022年9月(予定)