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今月のPickUpファーマシスト

第15回 北川亜依さん(トリコ株式会社)

今月のPickUpファーマシスト

さまざまに活動、活躍されている薬剤師&薬学生の方のインタビューをたっぷりお届けします!

北川亜依さん(トリコ株式会社)

2018年立命館大学薬学部卒業、薬剤師免許取得。
新卒でインターネット広告会社に約1年勤務したのち、
オンラインピル処方『スマルナ』を展開するネクストイノベーション株式会社(現 株式会社ネクイノ)にて
約2年間勤務、マーケティングチームに所属。
現在はパーソナライズサプリメントなどを提案するトリコ株式会社にてプロダクト開発に従事。
https://tricot-inc.com/

新卒から薬剤師じゃない道へ。

―まずは、薬学部に入学されたきっかけを教えてください。

昔から化粧品の開発に関わりたいと思っていて、考え至ったのが薬学部でした。ただ、いざ入学してみると薬学部=薬剤師免許を取るための学部だとすぐに実感しました。私の周りも薬剤師を目指している人が大半で、大学も国試に合格させるための指導という感じが強く、当然といえば当然かもしれませんが、それ以外の進路は想定されていないのだなと強く感じました。

 

―4年制学部の方たちと同じタイミングで就活をされたと思いますが、そのときに夢だった化粧品関連の企業にはチャレンジされたのですか?

いいえ、結局在学中に気が変わったので、化粧品関連の企業は受けませんでした。というのも、研究室に所属する中で、実験がそれほど得意でなければ化学が特別好きというわけでもないなと感じてしまったので別の道を探すことにしました。

その中でインターネットやIT関連のほうが自分の興味に合っているように感じて、その方面で就活していました。

 

―「薬剤師にならないの?」と、企業の採用担当者からきっと聞かれましたよね。

それは何度も聞かれました(笑) なので、在学中に気持ちに変化があったことや自分の考えは面接の場で正直に話しました。高校生の進路選択のタイミングでそんなに先の未来まで考えるのは難しかったということもありますし、例えば経済学部に進学したら経済学者になると決まっているわけではありませんよね。そう思ったら、薬学部に在籍しながら薬剤師以外の進路へ進むことも、特別おかしいことではないなと思っていました。

実務実習を通して薬剤師がとても大事な仕事だというのはすごくよくわかったのですが、自分がやっていきたい仕事かというとやはりそうではなかったので、薬剤師として就活をする同期たちを見ていても、迷ったり焦ったりすることはありませんでした。

 

―多額の学費がかかる薬学部で、奨学金を借りている方も多くいらっしゃいます。それを思うと、たとえ興味があったとしても「今更ほかの道に進めない」と思ってしまうのも仕方がない気がしますが、そのあたりはいかがですか?

確かに、給与面では同じ新卒でも薬剤師のほうが一般企業より高いことが多いので、若いうちから差がつきますよね。満額ではありませんが私も奨学金を借りていて、現在も返済中です。かかった学費を回収できるタイミングなんかも考えると、薬剤師として働くほうがいいんだろうなあと思うこともありました。授業が多過ぎるあまりアルバイトも満足にできなかったので奨学金を借りましたが、ほかの学部だと借りずに済んだのかなあと思うこともあったり。

ただ、働きさえすれば返せない額でもありません。薬剤師として働かなくてもきちんと返していけているので、あまり心配はないかと思います。

 

今はいろいろなスキルを身に着けたい。そしてフットワークの軽さは無くさずにいたい。

―ネクストイノベーション(現ネクイノ)勤務時代について伺います。代表の方からTwitterのDMが届いたことがきっかけで入社されたと聞きましたが、なかなかないケースですね。

そうですね。私の『スマルナ』に関するツイートを見つけてくださったことがきっかけで誘っていただきました。私が元々ユーザーだったこともあったのですが、薬剤師免許を持っていることにも親和性を感じてもらえたのかなと思います。意外と薬剤師が、薬局・病院・製薬企業以外の普通の会社でも需要があるのだなあと実感した機会でもありました。

こちらではマーケティングチームに所属し、SNS運用をメインに顧客コミュニケーションの一環でメルマガ配信をしたり、アプリでメッセージを送ったりしていました。直接的に薬学の知識を活かしていたわけではありませんが、知識がある分、言えること・言えないことの判断はできましたし、採用時に信頼してもらえたポイントでもあったと思います。

たまにイベントで会社のブースを出展した際には、薬剤師として参加させてもらっていましたね(笑)

 

―そんなネクストイノベーションを退職され、現在のトリコへ転職された経緯もお聞かせください。

今後のキャリアを考えたときに、もっと広い視野で物事を考えられるようになりたい、もっとマーケティングの上層に関わりたいと思いました。また、オンライン診察は薬事法の規制がとても激しく表現の難しさを感じていたので、違う事業やサービスならもっと違う打ち出し方ができて、学びになることが多いかもしれないと感じたのも理由です。

『スマルナ』は医療機関とユーザーを繋ぐプラットフォームサービスですが、形のある商品を販売することに興味を持ったのもきっかけの一つですね。

トリコはサプリメントやプロテインなどの自社商品を展開する成長企業というところに魅力を感じました。加えてもともと化粧品に興味があったこと、薬学部出身者としてまったく知識がない分野ではなかったこともあり親近感が沸き、入社を決めました。

 

―改めてトリコはどんな会社で、北川さんはどんなお仕事をされていますか?

オンラインでの美容分析をもとにお客様に合わせて商品を提案するパーソナライズビューティケア『FUJIMI』を展開し、サプリメントやプロテイン、フェイスマスクを販売しています。社員同士の距離は遠すぎず近すぎず、でもみんなで一つの目標に向かっているという実感を持てるとても働きやすい会社です。

私はプロダクト開発に従事しており、新商品の開発はもちろん、既存商品のリニューアルも担当します。「どういうものを作るか」社として大枠が決まってからコンセプトを設計や処方を考え、どのような容器や配送の箱にするかを考えるなど……業務は多岐にわたります。そのため、他部署や社外の方とも密に連携を図りながら仕事をしています。

『FUJIMI』サプリメントとプロテイン

 

―やりがいを持って従事されていらっしゃると思いますが、今後の目標やビジョンはありますか?

うーん……現時点で「こうしたい・なりたい」と強く描く具体像があるわけではないのですが、今までも、その時々でやりたいと思ったことをやってきたと思っているので、そのベースはこれからも変えずに過ごしていきたいなと思っています。もちろん現在の仕事も楽しいですが、チャレンジしたいことは他にもいろいろあります。全然違う分野のことにも興味がありますし、いつかは国内外のいろんなところに滞在しながら働けるようになったらいいなとも思います。

未経験なので難しいかもしれませんが、その中で薬剤師として現場に立てるような機会がもしあれば、できることの幅はもっと広がるかもしれないですね。

 

―最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私は薬剤師にはなりませんでしたが、薬学部へ進学したことに後悔はしていませんし、無駄だったとも思っていません。薬学部に進んでいろんな経験や気付きを得たから、今の自分があります。

入学して間もない頃には薬学部を選ばなければよかったと思ったこともありましたが、そのときに大学の先輩から「後悔しない選択なんかなくて後悔しない道があるだけだ」と言われたことが心に残っています。どんな道を選んでも後悔のないように、ここからどうしていくかを考えていくしかないんだなと、本当にそう思っています。

人生一度きりなので、やりたいと思ったことにチャレンジできることが一番の幸せではないでしょうか。実際にやってみてわかることもたくさんあると思うので、とにかく経験してみる。薬剤師を経験してみてすごく合うのか、なんだか違うなのか……それを判断するのもいいと思います。これからはいろんな選択肢を選べる時代になってくるので、「これしかない」と思わず、いろんな選択肢があることに気付いてほしいなと思います。私も誰かの選択肢を広げるお手伝いができるようになればいいなと思いながら、日々チャレンジしています。