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今月のPickUpファーマシスト

第16回 西島翔希さん・べんぜんさん(株式会社Micelle)

今月のPickUpファーマシスト

さまざまに活動、活躍されている薬剤師&薬学生の方のインタビューをたっぷりお届けします!

西島翔希さん・べんぜんさん(株式会社Micelle)

1万人を超える薬学生が登録している公式LINE「Micelle」の運営やSNSを中心に薬学生に“本当に”役立つ勉強情報を数多く発信。大手就活サイトの集客や企業向け公式LINEの作成等も行う。それぞれの活動を統合し、2022年に法人化。

【西島翔希さん経歴】
2016年関東の某大学薬学部に入学。
5年生のときにYouTubeで薬学生に向けた生物・薬【理学・病態生理学の解説の配信を始める。 
2022年薬剤師免許取得。

【べんぜんさん経歴】
2016年関西の某薬科大学に入学。
薬学生に「めっちゃ覚えやすいゴロ!」を中心にSNSで情報発信、電子書籍化も実現。
2022年薬剤師免許取得。

同じ薬学生、同性、同学年……息ぴったりの2人がSNSで出会い、ビジネスパートナーに。

―薬剤師を目指すことになったきっかけをそれぞれ教えてください。

西島 高校2年生のときに「薬剤師は給料が高いらしい」ということを聞いて、初めて興味を持ちました(笑) 当時から営業職や人前で話す機会がある仕事に憧れていたので、薬剤師と営業を掛け合わせられるような仕事を調べてMRの存在を知り、薬学部受験を考え始めました。

べんぜん 僕も特別なエピソードがあるわけではありませんが、片親のもとで育ったので親を安心させてあげられるような仕事を考える中、薬剤師も選択肢の一つに入っていました。高校時代は化学が得意で文系科目が壊滅的(笑)、薬剤師だったら親にも楽をさせてあげられるなと思い、いろんな面から一番現実的で自分も幸せになれると思って薬科大へ進学しました。

 

―お2人はお住まいのエリアも大学もまったく違いますよね。それぞれどんな学生生活を過ごされていたかお聞かせください。

西島 1~2年生の間は勉強・アルバイト・ディズニー(最大の趣味)の3本柱な充実した生活をしていました。ただ、本当に偏差値の低い高校に通っていたので、1年生の頃は授業についていくことに必死で、絶対に留年するだろうなと思っていました。友達にしつこく勉強を教えてもらって再試も受けつつ、なんとかやっていけていました。

3年生のときに、今の事業につながる転機がありました。抗がん剤を教えてくれた教授が薬の背景にある生物的知識もきちんと解説してくれる方で、スルスルと覚えることができたんです。「勉強さえすれば点数が取れる」ことがわかり、おかげで学年トップクラスの成績を取ることができました。ちゃんと数字で成果が見えたのが嬉しかったですね。
そこから、周りから勉強を教えてほしいと言われるようになり、まとめて教えられるようにするためにYouTubeで動画配信を始めました。MRを目指していたので、プレゼンの練習にもなるなと思っていましたね。

べんぜん 僕も勉強にサークル活動、アルバイトと至って普通の学生でしたが、1年生のときにできた彼女がきっかけですごく勉強するようになりました。
テストの勝負に負けたことで火が付いて、2年生になると朝6時過ぎには学校に行って誰もいない部屋で黙々と勉強して、バイトがない日の夜は図書館にこもって勉強して。そのおかげで成績も良く、2~3年生のときはずっと学年1桁の順位でした。勉強に没頭するあまり、成人式にも行かなかったくらいです(笑)

4年生のCBTが終わったあたりで、自分の勉強してきたことを後輩に残せたらいいなと思うようになりました。一番得意だったのがゴロ合わせを作ることで、周りからの評判も上々でした。それをまとめたものがたくさんあったので、ネットで公開したら全国の後輩に使ってもらえるなと思ったのがSNSで発信し始めた一つのきっかけでした。

もう一つは、就活のことを考え始めたときに薬剤師で留まっていいのかと思っている自分がいて……もしSNSで薬学の業界で人気になったら違う仕事もできるんじゃないかと淡い期待も持って、将来副業としてやっていけたらとぼんやり思っていました。

 

―そんな2人が知り合うことになったきっかけを教えてください。

西島 僕からべんぜんにコンタクトを取ったのがきっかけです。配信対象の薬学生は全国に66,000人くらいしかおらず、当然全員がYouTubeで勉強をするわけではないので、実際の閲覧数はごく少数になると思っていました。そのニッチな層を狙うためにインフルエンサーにPRを頼ろうと考えました。いくら競合がいなくても、広めてくれる人がいないと話になりませんからね。

InstagramやTwitterで頼れそうな人を探したところ、べんぜんを見つけました。最初は僕がべんぜんのことを動画で紹介するというスタンスで、返報を期待してDMを送りました。
ただ、べんぜんは顔、年齢、性別も分からなかったので、まさか同学年で同性で、一緒に事業をすることになるとは思っていませんでしたね。この最初の出会いから3ヵ月経ったくらいで初めてZOOMで顔を見て話しました。

べんぜん 西島以外にもいろんな方からメッセージを頂いていましたが、西島の動画を観て「これは伸びる」と確信したので、仲間になっていたほうが、自分自身が助かるなと思ったんですよね。尻に敷かれたいなと(笑)

何度か話すうちにフィーリングも合うと感じました。でも性格は違っていて、僕はどちらかというと守りのタイプで、西島は突き進むタイプ。アクセルとブレーキのような感じで、バランスが取れていると思います。揉め事もありません。

手探りの事業運営と学業両立の日々。

―2人で事業をされてきた中で一番思い出深い企画や成功体験はありますか?

西島 やっぱり公式LINE「Micelle」ですかね。薬学系でまだ公式LINEがまったく出回っていない頃にたまたま「公式LINEで面白いことができるらしい」ということを聞いて、導入してみることにしました。月3万円のランニングコストは学生にとってはすごく大きかったですし、それまで持っていなかった固定費という概念もそこで生まれました。右も左もわからない中での構築も、ものすごく大変でした。

なんとか作り上げてリリースまで漕ぎつけ、リリース開始1ヶ月で登録1,000人を目標に設定したところ、初日で1,000人を超えました。それが一番の成功体験で、とても嬉しかったですね。広告費はまったくかけず、自分たちが管理しているSNSだけで達成しました。

べんぜん 当時は5年生で勉強も研究室も忙しかったので、毎晩西島とZOOM
をつないで LINEの画面を作るなど、夜な夜な作業をしていました。けっこう大変でしたけど、いい思い出ですね。

 

―他にも楽しいと感じることややりがいを感じる場面について教えてください。

べんぜん 僕は学生の対面イベントのときに「べんぜんさんですか?」と声をかけていただけたり「いつも定期テストのときに助けられています」と言っていただけると、貢献できていることを実感できて嬉しいなと、もっと頑張ろうという気持ちになります。ある大学の教授が僕のゴロをサイトに紹介してくださったことも嬉しかったですね。

西島「一緒に写真撮ってください」と言われることも嬉しいです。普通に生きていたら、そんな機会ないですもんね。具体的な業務だと僕はとにかく公式LINEの構築が楽しいですし、YouTubeでの動画配信も、どう教えるとわかりやすいかなと考えることが楽しいです。

 

―ご自身たちも国家試験を控えられていました。事業をしながら勉強時間の捻出はとても大変だったと思いますが……

西島 僕の場合はYouTubeを配信するための勉強が国試対策勉強にもなっていてラッキーでした。公式LINEの構築も楽しくやっていたので辛くはありませんでしたけど、みんなが息抜きしたり勉強したりしている時間を事業に使っていたかな、という気はします。

べんぜん しばらくは睡眠時間も削ったと思います。契約書、請求書、領収書の作成や税金のこと、メールの打ち方一つとっても……ビジネス的なことは誰にも教わっていなかったのですべて自分たちで調べて勉強しました。でも全然苦痛ではなくて、必要に迫られて身に着けるすべてが新しい気付きでした。

とはいえ、おそらくみんながやっている半分ほどしか国家試験の勉強時間が取れなかったので、すごく不安でしたね。

西島 勉強のことを伝えている立場で国試に落ちることはありえないので、そのプレッシャーはすごかったです(笑) 6年生の冬は仕事も軌道に乗っていたので毎週末のように全国を飛び回り、週中にどれだけ集中して勉強するかという日々。今振り返るとよくやったなあ……。

 

事業一本集中で、薬学生向けサービスのトップに居続けたい。

―どうして、お2人のサービスがこれほど多くの薬学生から支持されているとお考えですか?

西島 あらゆる勉強コンテンツをハイクオリティかつ無料で提供しているからだと思います。薬学生は本当に勉強が大変なので「少しでも勉強の手助けになるなら登録(フォロー)しておこう」と考えるんです。今Micelleは13,000名くらいの薬学生にご登録いただいていますが、1円も頂かずに、僕たち自身が在学中に欲しかった勉強コンテンツを無料で提供しているので、そこを喜んでいただけていると思っています。

べんぜん 薬剤師になって数年経ってしまうと、その時々の学生の需要が分からなくなってしまうと思います。僕たちも1年前はまだ学生で、自分たちが欲しかった直近の情報・経験を残していっているイメージなので、学生に刺さるの
かなあと思います。

西島 とはいえ、薬学生だったら何年生のときはどんなことが大変だったとか、こういうものがあったら良かったなという普遍的なことはだいたい思い付いているので、直近5~6年くらいは満足していただけるコンテンツの提供はできるかなと思っています。
また、薬学生と食事に行く機会も増やしているので、そこでフレッシュな意見を取り込んで、自分たちが提供しようとしているものが需要から外れていないかどうかヒアリングをしています。

べんぜん ゴロも余裕ができたり新しいものを思いつくことがあれば更新していきたい気持ちはありますし、ほかにも優先順位をつけて、学生にとって一番良いもの・欲しいものをどんどんリリースできたらと思います。

 

―周りが薬剤師として就活を進める中、卒後独立することを選んだお2人ですが、進路選択の頃の心境について教えてください。

西島 僕たちも就活はして内定を貰っていました。当初Micelleは副業としてやろうと考えていたのですが、就職合同説明会を開催したところ想像以上に多くの薬学生からの登録があり手ごたえを感じたので、事業一本に専念することに決めて内定は辞退しました。

もともと目指していたMRをやっていたらどうなっていたんだろうと思うことは確かにありますが、今やっていることが一番楽しいので、後悔することはまったくありません。

べんぜん 僕は……5年生の終わりに一度、大きな契約がその年で打ち切られてしまう挫折があったのですが、正直すごくショックで将来が不安になったことがありました。ほかの契約していただいているクライアントからも全部切られてしまったらどうしよう、内定先に入社して安定を取ったほうがいいんじゃないかと揺らいでしまったときがありましたが、西島が止めてくれました。

西島 上がって落ちるを繰り返しながら右肩へ上がっていく成長曲線が普通ですよね。なので、契約を打ち切られてしまったことは僕ももちろんショックでしたが、事業を辞めようとは思いませんでした。仮にあのときべんぜんが辞めたとしても、僕は一人でもやっていたと思います。

べんぜん 今思えば、本業と副業の両輪でやっていくよりも一本集中でやっていったほうが事業も伸びやすいですし、今後似たような新しいサービスが他社から出てきたときに負けたくないので、事業に一本集中のほうがずっと一番で居続けられると思っています。

 

―そんなお2人の今後の夢や展望を教えてください。

西島 あまり詳しいことは言えないのですが、2023年の間に公式LINEの構築と運用サポートに特化した別法人を設立しようと考えています。「薬学系でLINEに一番詳しい人」で自分の名前が一番に上がるように活動していきたいと思っています。

べんぜん:Micelleとしての直近の目標は、Micelleをより良いものにしていくためのM&Aです。僕たちとしては満足して作りきったと思っているので、次はどこかの企業の一部として、僕たちができなかったような学生向けのサービスに活用していただけるようになることが次のフェーズかなと思っています。

個人的にはボランティアや地域おこし協力隊、もう一度大学へ行って違う業界の学びなおしなど……薬学とは違う分野でも興味があることがたくさんあるので、しばらくは学びの期間にしてもいいかなと思っています。

 

―最後に、学生に向けてエールをお願いします。

西島 これから就活の方は、必ず企業のインターンシップには行ってください。ハードルが高いかもしれませんが、インターンシップに行ってやっとその薬局や企業の雰囲気や社員の人柄、会社の温度感がわかると思うので、5件以上参加されることをお勧めします。そうすると広い視野を持てて発見も多くなり、進路を選ぶときにも比較しやすくなると思いますよ。

あとは、もちろん遊びも。勉強だけに固執しない6年間が大事だと思います。

べんぜん 起業や薬系以外の仕事に興味があってくすぶっている方たちがいるとしたら、チャレンジしたいことがあるならぜひやってみてほしいですし背中を押してあげたい気持ちです。西島も言っていましたが、僕も薬系以外に新卒カードを切って全然後悔はしていません。応援しています。