第12回 木村 将司さん(株式会社ソルステラ(そらいろ薬局) 代表取締役 薬剤師) 栗岡 恵一さん(株式会社COOLEXCOOLEX(マロン薬局) 代表取締役 薬剤師)
大学卒業後、製薬会社にMR職として3 年勤務。
中堅薬局に転職し管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用担当、人材開発委員会委員長などに従事。薬剤師業務以外にもさまざまな業務に積極的に取り組む。2023年7 月そらいろ薬局を開局。
栗岡 恵一さん(右)
大学卒業後、中堅薬局に入社。
薬剤師としての勤務の他、採用担当、社内の組織改革などを経験したのち社内独立し、外部への採用コンサルティング等
も行う。一般社団法人日本薬学生支援機構の理事も務める。2023年7 月マロン薬局を開局。
お2人は、実は元同じ職場の同僚!
ユニヴのコーディネーターよりお互いが独立することを知り、偶然にも開局年月が一緒ということで、5年ぶりの再会も兼ねて独立開局に至った現在までのお話を同時インタビューさせていただきました。
―今回お久しぶりの再会とのことですが、前職ではどのような接点がありましたか?
木村さん(以下木村):初めて栗岡さんと会ったのは、彼がまだ学生のときでした。当時私は採用担当をしていて、ものすごく元気で勢いがある学生がいるなと好印象でした。
薬剤師でこういうタイプの人は見たことがなくて、またちょうど社内を変える働きかけを考える中で彼がいてくれたら変わるのではないかなと思ったこともあり、頑張って口説きました。彼が現場に立ち、昇進して多くの人に影響を与えていくという未来も見えていました。
栗岡さん(以下栗岡):僕も、木村さんがいたから入社しました。木村さんの後任として採用担当を務め、木村さんが思い描いていたような社内の組織改革や薬剤師の働き甲斐向上のための取り組みに尽力しました。
―順番に、まずは木村さんが独立されるまでの経緯を教えてください。
木村:雇われ薬剤師として勤務していたときはさまざまなポジションで仕事をさせてもらいましたが、どんな仕事をしていても「自分だったらこうするのに」と思うことが多くありました。最終決定権がないので、自分の思うようには動けません。
それはある意味、大きな責任を逃れている、責任を分配しているということになるのだと思うのですが、だんだん「本当にそれでいいのかな。自分の人生でやり遂げたいことはこういうことなのかな」と疑問を持つようになりました。
当初から独立したいという思いはあったので、やはり独立しかないと思い立ちました。
独立を志し2 ~ 3年ほど案件を探していましたが、新規で開局してもあまり勝ち目が見えてこない中でなかなか良い話に巡り合えませんでした。子供が小さく単身赴任をすることは考えにくいこと、妻も薬剤師なので一緒にできる薬局が良いという思いからエリアを絞って探していたので、良い案件に出会うのに時間がかかりました。
今回頂いたお話はエリアと薬局の規模が理想に近く、門前の医師も評判が良いと知っていたので決めました。
また、国の方針が対物から対人へとシフトし始めるとの発表を受け、今後より対人スキルが重要になると思いコーチングの資格も取得しました。
“相手の可能性を信じる”というのが、コーチングの根底にあると考えています。これは患者さんとのコミュニケーションにおいて非常に大切なことで、こちらが相手のことをどう思っているのか、ちょっとした仕草や言葉遣い、姿勢などで案外伝わってしまうものです。
患者さんだけではなく他の医療従事者、薬局のスタッフ、卸さん……機械化が進んでいるとはいえ、医療には多くの” 人”が携わっています。人と良好な関係を築くスキルがコーチングで、私にとっては人生の根幹となっています。
―栗岡さんが独立されるまでの経緯を教えてください。
栗岡:父が医師、母が看護師なので医療系職種には昔から馴染みがあったことと、何か手に職をつけたいと思い薬剤師を目指してみようと思いました。
新卒ではドラッグストア併設薬局の会社に入り、店舗で薬剤師として2年半働きました。その後、社長から新卒採用担当の打診を受け、2年半採用担当を務めました。さらにその後、社内起業をさせてもらい社外への新卒薬剤師採用のコンサルティング業務もしつつ、社内では採用のサポートや組織改革、薬剤師の働き甲斐を向上させるような取り組みもさせていただいていました。
そのように働く中で、社員が良い意見を持っていても意見が通らず、上層部が社員の主体性を発揮させていない環境がすごく多いと感じていました。
「自由に楽しく働ける環境を、最高な仲間と一緒に創り上げたい」という気持ちから、独立への想いを持っていました。
そんな中で友人からユニヴさんを紹介していただき、案件を紹介していただいた翌日には会社に退社の意向を伝え、翌週にはTOP 面談と話が進みました。薬局を経営することになるとは思っていませんでしたが、前職の経験を通して「薬剤師がかっこよく働ける会社を自分で作ってみたい」という想いとタイミングがちょうど合ったので、薬局譲渡のお話を頂き、喜んでしたいと思いました。
木村:私が惚れたのはその行動力です! 普通の人にはなかなかできないと思います。薬剤師は頭でっかちで、いろんなことを考えてしまってなかなか行動に移せない方が多い気がしますが、彼は即断即決なんですよね。
栗岡:僕は決断が先で努力が後なんです。「努力するしかない」という状態を作っておいて、そこからどうやっていくか……それに向かっていきます。正直紹介していただいた時点では案件の具体的な内容はわかりませんでしたが、行動力だけは自信がありました。
―独立して良かったと感じるのはどういうところですか?
栗岡:自分の会社で事業を持てるところが良いところだと思っています。成果が会社に反映されることが一番だと思います。
木村:些細なことでも全部自分に跳ね返ってくることと思います。少しでもプラスになることをしたいと思い、お昼休憩もそこそこに、残った時間でできることをしたり休日も薬局に来て床を磨いたりしています。
雇われている立場だと、普通は休憩時間はしっかり1時間取りますし、休みの日に出てきて床を磨こうなんて思わないですよね。自分の会社だからこそ、こういった少しの心掛けを患者さんに気付いていただけて「綺麗になったね」「また来ます」と言っていただけることがとても嬉しいです。
栗岡:確かに雇われている立場だと、ぎりぎりまで休憩しますよね(笑) でも、木村さんは昔から薬局や患者さんのために動く方だと思います。一緒に働いているときも木村さんファンはたくさんいましたし、木村さんが店舗移動することになったとき、ついていく患者さんもいたくらいですから。
―独立して不安を感じることはありますか?
栗岡:門前に頼りすぎていることでしょうか。在宅も、最近やっとお1人訪問できるようになりました。施設の営業にも、まだまだ行けていません。
月曜から土曜の夜まで働いているので自由に営業に行ける時間が無く、社長としてお金を生み出す行動ができていないことがとても不安です。薬剤師としての業務以外で、自分の価値を見出せるところにまだ時間を割けていないと感じています。
木村:でも、まだ開局して1ヶ月ですよね。最初はこの店舗の雰囲気に慣れようとか処方せんに慣れようって感じだと思うのですが、すでに先を見て生み出すことを考えているのがすごいです。
私は開業当時から、資金繰りがうまくいくかどうかが不安です。開局1ヶ月が経った今、当初考えていたよりも売上は良く安心していますが、これから店舗にいろんな設備を導入することなどを考えると、そこに資金を充てるにはいろいろ利益を生み出していけるような活動をしていかなければいけないと思っています。
―大手調剤にはできない、個人薬局に求められることはどんなことだと思いますか?
木村:個人薬局は、すごく小回りが利くだろうと思います。大手では上層部の考えたものが現場に伝わるまでに時間がかかり、しかもそれを現場のスタッフ全員がしっかりと行動に移せているかというと微妙なところがあると思っています。
個人薬局の場合は、意思決定からやる・やらないの判断がすぐにできます。それが国の施策に反映できれば、国の流れに沿った運営や経営もできると思っています。
栗岡:この薬局の商圏を調べると、半径1.5km~ 2kmがマーケットでした。その範囲を本気で、薬剤師として地域の人間として関わることができるのが、僕らの強みかなと思っています。個人薬局での対応となると自分こそが薬局の顔だという意識で、責任を持って患者さんやお客さんに接することができます。
―今後の店舗展開のイメージや野望があれば教えてください。
栗岡:社員との距離を作りたくないので、程良いと感じる5店舗ぐらいまで広げたいと思っています。あとは社員の年収を上げたいですね。年収1,000万円の薬剤師を出したいと思っています。
社員の満足度を上げてから会社の売上が上がり、それから社長の給与が上がるという順番にしたいです。会社全体に余裕を持てた状態で、患者さんのために考えを巡らすことができる薬剤師たちと一緒に仕事をしていきたいと思っています。
冒頭でも少し話したとおり、僕は薬剤師が「かっこいい」って言われる世界や、そんな薬剤師を育てたいとも思っています。そういえば、木村さんも昔からずっと「かっこいい薬剤師を生みたい」って仰っていましたよね。
木村:” かっこいい薬剤師” って、なかなかいないと思います。巡り合えたらラッキーですが、そういう薬剤師を1から育てていくことも必要かなと思います。
私は、今は具体的に何店舗まで拡大したいとは考えていないですが、影響力を持ち患者さんから顔を覚えてもらえる薬剤師になりたいなと思っています。
処方せんがなくても「木村さんのところに行こう」とか、他職種から頼られるような自分であり薬局でありたい。そして同じ考え方を持った人と一緒に働きたいと思います。
栗岡:木村さんは患者さんからも従業員からも頼られていたので、昔からそういう想いを秘めていたのかなって思います。
木村:また、薬学部を目指す高校生を対象とした薬局見学や大学生の実務実習は当薬局でも受け入れたいと思っています。未来の薬剤師のこれからにつながることを薬局でやっていきたいですね。
栗岡:僕はケアマネージャーの方ともつながりたいです。在宅医療において患者さんの情報をすごく知っている中心人物だと思うので、そういう方々と知り合って何か力になれたらと思います。
―共通で出てきた”かっこいい薬剤師”とは、お2人としてはどんなイメージですか?
何か問題が起きたときに何かのせいにしてしまうと、その時点で問題解決はできないですよね。「自分がどうすれば」と考えられることが、問題解決の第一歩になると考えています。
ただ、自分がコントロールできないことに関しては他責にしてしまいます。例えば……阪神タイガースが負けたことに対して私は何もできないので(笑)自分を責めても擦り減るだけですから。応援するのみです(笑)
栗岡:僕が思う” かっこいい薬剤師” は、見た目がオシャレで、仕事も人生も楽しんで、地域の方や医療関係者に頼られるような薬剤師です。イキイキと仕事をしたり、テキパキと話したり行動したりする薬剤師だと考えています!
我々の業界は本気度=患者さんへの貢献度で、そこに対して報酬が支払われます。
本気で患者さんに向き合い、困っている人に対して貢献できると嬉しいですね。
木村:自分事にならない薬剤師が大半だと思いますが、独立することでそういう意識が確かに芽生えます。独立する人が増えればかっこいい薬剤師が増えて、もっと医療の質は上がるかもしれません。
薬剤師は、基本的には優秀でデキる人が多いので、自分事として本気になって考える環境さえ作ってしまえば、栗岡さんの仰るとおり薬剤師の地位や医療の質を上げていくことは可能だろうと思います。
金融機関の融資は受けられますが、そちらに労力を取られてしまっては他のやるべきことも手につかなくなりますし、資金面で目途が立たないことは精神的にも辛いです。
資金同様、時間も大切だと思います。独立までの期間はしっかりと確保したほうがいいですね。私の場合は2か月程度しかなく前職での勤務も続けていましたので、常にバタバタしていました。
栗岡:薬剤師としての知識や経験を積んでおくことはもちろんですが、独立する前に、採用職や営業職に携わることをお勧めします。僕は前職でどちらにも携わっていたのですが、独立してからそこで得たノウハウが全て役に立っています。
薬局経営も、対患者さん、対医療従事者……人と人とのつながりや信頼で成り立っています。信頼を勝ち取りつつ、自社と自分を売り込むことが大切だなと感じています。
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