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コーディネーター連載

“売り手市場”から“買い手市場”へ

かつては慢性的な人手不足が背景にあり、薬剤師が転職しやすい売り手市場でした。
しかし2025年現在、他業種では変わらず売り手市場。有効求人倍率が軒並み上昇、15分野中13分野で拡大傾向が見られるのに対し、薬剤師業界では企業側の採用意欲が鈍化しているため、求人倍率が低下傾向にあります。2015年では約7倍だった倍率が2024年には2.34倍に落ち、数値を見るだけでも転職活動の難易度は上がっているのが分かります。なかでも地域によって難易度に違いが生まれており、関東では3.55倍、関西で2.36倍と特に都市部での競争が激しく、一部地域では供給過剰傾向も見られます。

一方で転職を考えている薬剤師さんは全体の57.9%。特に20代では66.7%と高く、29.9%が過去1年以内に転職活動を実施しています。※1
なぜ6割近い人が転職を考えているのでしょうか?
※1:参考:株式会社リクルートメディカルキャリア

 

薬剤師業界の構造変化

現在、調剤薬局やチェーン薬局では、人事評価の細分化や新卒採用基準の強化が進められているところが多くあります。
なかでも大手チェーンなどはM&Aによる再編が活発化しており、統合後2 〜3年以内に給与システムや昇進基準が変更されるケースも多いです。そのため長年働いていたとしても雇用安定性に不安を持つ人も増え、年収・働き方の見直しを行う動きがあります 。
厚生労働省統計では、職場や専門性、地域によって薬剤師の年収は大きく異なるとされ、全体平均としては高水準でも、職場によるバラつきが拡大しています。

 

【職場別傾向】
◯大手薬局チェーン: 個人業績による評価が加味される仕組みに移行
◯ 中小薬局:経営規模の大小による待遇差
◯ ドラッグストア:管理薬剤師と一般薬剤師間での待遇差
◯ 製薬企業・CRO 等:専門性に応じて報酬が安定

 

“買い手市場”でも優位に転職しよう

転職をするからには事前準備や情報収集は大切です。現在の業界の流れやトレンドを抑えておきましょう。

 

■転職時に有利な経験やスキル

在宅医療、訪問薬剤師経験
高齢化社会により在宅業務は薬局運営をするためには必要不可欠になっています。それにともない、車の運転も必要となることが多いのでペーパードライバーの方は慣れておくと良いでしょう。


オンライン服薬指導対応力
オンライン上で患者様対応をするケースが増加してくると予想されます。

 

ICTスキル、デジタル媒体でのコミュニケーション能力
基本的なPC 操作はもちろん今は薬歴管理や、患者情報も電子を利用している所が多いです。


認定薬剤師等の資格保有
専門性のアピールになるため選考で有利になります。また加算の対象になる場合もあるので給与UPも期待できます。

 

■注目トレンド・薬局以外の人気転職先

在宅医療・オンライン薬局
高齢化への対応として訪問薬剤師やオンライン服薬指導の需要増加。


製薬企業・CRO・研究・教育分野
調剤業務からキャリアシフトしやすく、福利厚生・年収面で魅力的。


企業内薬剤師
薬事、品質保証など高度な専門性を活かす職種が人気。また、希望地域によっても求められる人材が異なってきます。

 

関東: 初めにもお伝えした通り求人倍率は低めなため薬剤師として+αの高い専門性(在宅・認定資格等)とコミュニケーション能力が重視されます。

関西: 在宅や認定資格を持つ薬剤師が優位な傾向があります。

地方: 地方となると比較的薬剤師が不足している地域も多くなるため未経験者でも採用されやすいです。ただ好条件求人は限定的になります。

 

転職活動を成功させるために

では本格的に転職活動をスタートする際、必要な事前準備を改めてお伝えします。

 

❶自身の働き方の優先条件を整理

土日休み、残業時間、有給消化率など希望するワークライフバランスを明確化しておきましょう。

❷ 地域・企業の変化をチェック

求職先のM&A 情報や人事制度、評価軸の変化などの情報をできる限り調べておきましょう。重要な転職判断材料となります。

❸ 職務経歴書・面接対策

上記2つを調べたうえで重要視してそうな資格や経験、デジタル対応力をきちんと整理・明記し、専門性があることをアピールできるとよいです。

 

より着実に転職を進めたい方、現職に時間をとられ準備をする時間が取れない方は転職サービスの利用がおすすめです。
手厚いサポートや個人では見つけられない非公開求人を得ることができます。

 

成功のための面接対策! 実践編

転職や就職活動において、面接は非常に重要なステップです。いかに優れた経歴や資格を持っていても、面接で自分の魅力をうまく伝えられなければ、内定には結びつきません。ここでは、薬剤師の面接におけるポイントや事前準備、よくある質問とその答え方、面接官が見ているポイントについて解説します。

1. 面接前の準備

①企業研究
まず基本となるのが、応募先の企業についての徹底的な情報収集です。以下のポイントを中心に調べておきましょう。


●企業理念・方針
●事業内容(調剤薬局、病院、ドラッグストアなど)
●取り扱っている業務内容(在宅医療、OTC販売、管理薬剤師制度など)
●店舗数や展開地域
●教育体制やキャリアアップ制度

 

企業のホームページや、求人票、薬剤師向けの求人サイト、口コミサイトなどを活用すると効率的です。
転職サービスを利用する方は担当キャリアコーディネーターにホームページに載っていない情報を聞いておけるとさらに好印象です。

 

②自己分析
面接では「なぜ薬剤師を目指したのか」「自分の強み・弱みは何か」「今後のキャリアプラン」などが問われます。これらに答えるためには、自己分析が不可欠です。自分が薬剤師としてどんな価値を提供できるのか、どのような職場が合っているのかを明確にしておきましょう。


自己分析を行うことでストレスなく働くことができる環境を見極めることができるようになるため転職を考える際はしっかり自分と向き合いましょう。

 

③履歴書・職務経歴書の見直し

履歴書や職務経歴書に記載した内容は、面接の質問の材料になります。記載内容に一貫性があるか、虚偽がないか、読みやすくなっているかを再確認し、質問されることを想定して答えを用意しておきましょう。

 

2. 面接でよくある質問と答え方

①志望動機

回答例:「 貴社は在宅医療に力を入れており、地域に根ざした医療を提供している点に魅力を感じました。以前勤めていた薬局でも在宅患者様との関わりを通して、患者様一人ひとりに寄り添った対応の重要性を実感しました。今後はより専門的な知識を深めながら、貴社で地域医療に貢献したいと考えています。」

ポイント:「なぜその企業でなければならないのか」を明確に伝えること。


②前職の退職理由

回答例:「 より多くの在宅業務に携わりたいと考えるようになりましたが、前職ではその機会が限られていたため、スキルアップのために転職を決意しました。」

ポイント: ネガティブな印象を与えないように注意しましょう。職場の人間関係や給与などが理由であっても、前向きな理由に言い換えるのが鉄則です。


③自身の強み・弱み

回答例(強み):「患者様の立場に立って話すことを常に意識しており、丁寧な服薬指導に定評をいただいています。」
回答例(弱み):「 完璧を求めすぎる傾向があり、業務に時間がかかることもありましたが、優先順位を意識して取り組むことで改善しています。」

ポイント: 強みは業務に活かせる内容に。弱みは改善努力を交えて話すことで好印象を与えられます。

 

④今後のキャリアプラン

回答例:「 5年後には管理薬剤師としてチームをまとめ、地域の薬局としての役割を果たしていきたいです。また、認定薬剤師資格の取得も目指しています。」

ポイント:長期的にどう働きたいかを問うことで、企業とのマッチングを見極められます。

 

3. 面接時のマナーと立ち居振る舞い

①服装と身だしなみ

薬剤師の面接では、スーツが基本です。清潔感のある服装、控えめなメイクや髪型、派手でないアクセサリーを心がけましょう。
カジュアル指定の場合は綺麗目な服装(男性であればシャツにジャケット、女性であればオフィスカジュアルのような服装)でいどみましょう。


②入室時・退室時の礼儀

●ノックは3回
●「どうぞ」と言われてから入室
● 名前を名乗り、軽く一礼して着席
●面接終了時はお礼を述べ、再度お辞儀してから退室
※企業での面接では上記ポイントを押さえておく必要がありますが、薬局・ドラックストア・病院ではカジュアルな面接も多いためリラックスしていどみましょう。

 

4. 面接官が見ているポイント

面接官は、以下のような観点で応募者を見ています。


コミュニケーション能力:患者や医療スタッフとの関係性構築に不可欠です。
※人間関係での退職も多いため一番重要なポイントになります。
誠実さ:薬剤師としての信頼性に関わります。
専門知識:最新の薬学知識や法令への理解度。
向上心・学習意欲:キャリア形成に必要です。
組織とのマッチ度:社風や理念との一致。


知識や経験だけでなく、「この人と一緒に働きたい」と思わせる人間性が重要です。

 

5. オンライン面接の注意点

コロナ以降、オンラインでの面接も増えています。


オンライン面接では以下に注意しましょう:
● 静かな場所を確保する。
● 背景はシンプルにしましょう。(バーチャル背景でも可)
● 事前に通信環境・カメラ・マイクの確認。
●カメラを見るように話すとアイコンタクトの代わりになる。
※オンラインでは雰囲気などは感じることができないため、可能であれば直接足を運んで自分の目で見ることを推奨しています。

 

まとめ

薬剤師の面接対策は、単なる質疑応答の準備にとどまりません。応募先企業への理解、自身の経験やスキルの棚卸し、そして社会人としての基本的なマナーが問われます。「なぜこの職場で働きたいのか」「自分は何を提供できるのか」を明確に、自信をもって臨むことが内定への第一歩です。    
準備を万全にして、ぜひ理想の職場を手に入れてください。

 

転職の軸の定め方も、弊社のカウンセリング面談にて行なっております。
是非お気軽にご相談ください。

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