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「四方よし」の買い物支援サービス

中山 達也さん(有限会社クリエイトホーム 取締役会長)

中山 達也さん(有限会社クリエイトホーム 取締役会長)

福岡県直方市を中心に新築・リフォーム業を行うと同時に「がんだ薬局」「ハート薬局」など、グループ店舗を合わせて8店舗を運営。

「患者さんのお宅にお邪魔させてもらうことが増えました。冷蔵庫の中も拝見しますが、どんな生活をされているのかがよく分かります。そこからご提案できることも多くなったんですよ」
そういきいきと話すのは、直方市にあるハート薬局在宅センターで働く薬剤師とヘルパー。試験中の「買い物支援サービス」を通して患者との距離が縮まる手ごたえを感じているという。

このサービスを立ち上げたクリエイトホーム取締役会長の中山達也さんに話を伺った。

手間は無し。訪問ついでのお届けで、必要とされる薬局・薬剤師に。

馴染みの患者から頼まれた買い物をして、在宅訪問時に届ける薬剤師がいるかもしれない。買い物代行サービスを実施している企業もすでにあるが、クリエイトホームが提供する「買い物支援サービス」は、ひと味違う。薬剤師がスーパーや商店に実際に足を運ぶことはしていない。訪問時にタブレットで商品を選んでもらい、商店がその注文商品を薬局へ届け、それを薬剤師やヘルパーが在宅訪問時に患者のお宅へ持って行く。もちろん軒先ではなく家の中まで運ぶが、お気づきのとおり、薬局にはほとんど何の手間もかかっていないのだ。

それはこの注文・納品フローをシステム化しているから。クリエイトホームは昨年、このビジネスモデルの特許を出願した。

 

「本心から、これを仕事やビジネスと呼びたくないんです。ただただ、これまで私たちの生活を支えてくれたご高齢の方々へ恩返しをしたいという一心です。地域単位で高齢者を守っていきたい。特許は申請していますが、同業他社をけん制するつもりはまったくありません。我々の想いに共感してくださる薬局が全国に広がって、地方でも都会でも、不自由な高齢の方々へ目が行き届くようになれば、もっと住みやすい日本になると信じています。そしてこのサービスが、薬剤師の地位向上やモチベーションアップに繋がることを願っています」(中山さん)

 

採算がどうこうではない、純粋に高齢世代を想う気持ちと医療従事者の中では陰に隠れてしまいがちな薬剤師の格上げを願う気持ち、そして地域活性を願う気持ちから、この買い物支援サービスが生まれた。まずは直方市モデルとして発信していくつもりだ。

スタッフが一緒に確認しながら注文するうえ、
選択画面はとてもシンプル。レシートはおくすり手帳に貼ることも。

“本当に必要なもの”を届けることで患者のQOL向上に。

例えば高齢の親と離れて暮らす家族の方の中には、毎月毎週通って重い飲料やかさばる生活必需品をあれこれ届けていたり日持ちのする即席の食料品を定期的に送っていたりする方がいるのではないだろうか。ただ、それは本当に親が必要としているものだろうか。感謝の気持ちはあれど、自分が本当に食べたい、欲しいと思っているものを自分で選べたほうがより良いことは間違いない。このサービスはそれが可能で、患者のQOL 向上に大きく役立つ。そして、薬局が定期的な訪問ついでに持って行くことで患者自身はもちろん、その家族の負担も減らすことができる。

また、田舎の地域であれば生活のために車は欠かせないもので、高齢ドライバーも多く存在する。薬局が定期的に買い物を届けることで高齢者の運転免許の返納率も上がることも期待している。昨今問題視されている高齢者が引き起こしてしまう交通事故を未然に防ぎたいという切実な願いも込められているのだ。

関わるすべてがWin-Winになれるサービス。

「患者だけでなく、サービスに関わる薬局、医薬品卸、商店すべてがwin-winの状態になれるのが一番」という中山さん。患者目線では自分が本当に欲しいものを家の中まで運んでもらえ、なおかつ手数料不要で店頭とまったく同じ価格で買い物ができる。週に1回の訪問があることで、万が一の急変などの発見も早くなる。薬剤師にとっては家の中に入ることで見える生活環境から患者の情報を得られ、選ぶ商品(食料)を見ながら飲み合わせを含む服薬指導ができる。同じ在宅訪問でも、ほぼ毎週買い物を持ってきてくれる薬局なら、それまでの薬局から乗り換えたいという患者もいるだろう。地域支援体制加算もつく。その情報を持って患者へ提案するケアマネージャー、介護支援事業所の人にとっては、患者との信頼関係を築くツールにもなりえる。

また卸企業とも協力しており、薬局が卸に加盟するという構図のため、卸が薬局と繋がるためのツールという側面もある。地元はもちろん、すでに4大卸にも話を持ち掛けている。現在試験中の商店からは期待を大きく上回る売り上げで、嬉しい悲鳴が聞こえているという。まさに患者、薬局、卸、商店すべてにとってWin-Win、”四方よし”だ。

 

「かかる費用として、薬局にタブレット購入費、ライセンス料(初回のみ)、月額のシステム利用料、メンテナンス料を加盟する卸さんに払っていただきます。当社は卸さんと契約するので、薬局や患者さんに直接請求することはありません。タブレットは最初から準備する薬局の負担を考えてのことですが、自前のタブレットを使っていただいても大丈夫です。Windowsのタブレットであれば基本的に何でもOKです」(中山さん)

 

このサービスは口コミで少しずつ広がり、長く薬局を経営している他市の経営者や若手経営者から参加を希望する声も増えてきたそう。「あまり利益ばかり追求したくはない。でもただ一つ、39点を取る薬局を増やしたいと思っています。すでに加算を取っている薬局には、その中でもより選ばれる薬局になるためにぜひこのサービスの活用を検討していただければと思います」と中山さん。
先行き不安な薬局業界と超高齢化社会の日本に、明るい光が見えるようだ。

ハート薬局在宅センターのスタッフの皆さま

 

【買い物支援サービスに関するお問い合わせはこちら】
 
有限会社クリエイトホーム
●福岡県直方市感田1388-1
●TEL:0949-26-4149
https://nogataheart.com/