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認定薬剤師制度を通して仕事の幅を広げよう②

外来がん治療認定薬剤師取得編

認定薬剤師制度とは、特定の医療分野等において高度な知識や技量、経験を持つ薬剤師を認定する制度です。薬剤師免許と異なり認定制度には更新があるため、継続的な自己研鑽を積んでいる証となります。資格取得を通して、薬剤師として更に自信を持ち、仕事の幅を広げられるとともに、社内での評価対象や転職時の判断基準にもなります。今回は、前回(第18号)の掲載で多くの反響を頂いた「外来がん治療認定薬剤師」の取得について、取得者2名により詳しくお話を伺いました。取得を目指される方は、ぜひ参考にしてみてください。

取得者アンケート

外来がん治療認定薬剤師:横山 敦さん(32歳・男性) *病院勤務 *2017年取得

取得を志した理由やきっかけ
外来化学療法室に配属され、外来でがん治療を受けている患者さんとお話する中で、薬剤師として患者さんをフォローしていくための知識や技術が多くの面で不足していると痛感し、また同時に外来という患者さんの日常生活に直結した環境での業務にやりがいを感じ、がん領域の専門性を高めていきたいと思い認定取得を目指した。
学習期間(勉強開始から合格まで)
約2年(2015年4月から2017年1月(最終面接試験)まで)
平日1日あたりの平均勉強時間
1時間
休日1日あたりの平均勉強時間
1~2時間
具体的な勉強方法(オススメの教材など)
日本臨床腫瘍薬学会主催のスタートアップセミナー、ブラッシュアップセミナー、Essential Seminar (A・B)を受講。日頃の勉強は、上記セミナー受講時のハンドアウト、および「がん専門・認定薬剤師のためのがん必須ポイント 第3版」「経口抗がん薬ハンドブック」(いずれもじほう出版)を中心に各がん種の概要、治療選択、レジメン内容、副作用などを学習した。特に後者の2冊は各項目にポイントが記載してあるためそれらを中心に理解を深めていった。主な勉強時間は通勤時間や就寝前の時間を利用した。
勉強するうえで大変だったこと
自分が行っている業務の中で関わることのない疾患や治療方法については学習するのに時間がかかった。特に、経口抗がん剤単剤の外来治療の場合、大半が院外処方であり薬剤師外来も行っていないため、実臨床での経験が少なく治療の流れや指導内容のイメージが湧かず理解に難渋した。
勉強するうえで工夫したこと
勉強するのは時間外や休日になってしまうが、日常業務を行う際に学習したことを意識して業務を行った。例えば、レジメンチェックや抗がん剤調製を行う際に、がんの特徴・どういった治療ラインか・副作用の内容・その他治療法はどんなものがあるか、などをイメージしながら業務をすることで学んだことが定着していった。
取得後、勉強した内容を実際の業務に活かせたエピソードなど
以前までは自分の知識に自信が無いため、他の医療スタッフへ質問や提案することをためらいがちであったが、認定を取得したことでその過程で得た知識や分からないことを調べる手段を知ったことで、積極的に他の医療スタッフや患者さんとコミュニケーションを取れるようになり、治療選択について医師との意見交換・支持療法の提案・患者さんへの説明や情報提供などの場面に活かすことができた。また、がん患者指導管理料ハが算定できるようになったことで病院に対しても薬剤師の存在をアピールできるようになり、がん関連業務をする時間、場所、人材などを確保することができた。
資格取得に際し会社からの補助や支援の有無など
無し(病院に申請すれば一部金銭的補助はあったが、個人の希望で認定取得を目指したため申請せず)
今後の目標
外来でがん治療を受ける患者さんが増えていく中で、治療方法はより多様化かつ個別化していくため、患者さん一人ひとりに合わせた説明や副作用モニタリングを行っていく必要がある。そのためには薬剤師の関与が重要であり、他の医療スタッフ、病院・薬局薬剤師が一丸となって患者さんをサポートしていけるようチーム医療や薬薬連携の発展に努めていきたい。

制度のおさらい
認定薬剤師制度とは、特定の医療分野等において高度な知識や技量、経験を持つ薬剤師を認定する制度です。薬剤師認定制度には①生涯研修認定制度、②特定領域認定制度、③専門薬剤師認定制度の3つがあります。今回ご紹介する外来がん治療認定薬剤師は、②特定領域認定制度に該当します。

外来がん治療認定薬剤師

各制度概要
認証機構 一般社団法人 日本臨床腫瘍薬学会
目的 外来がん治療を安全に施行するための知識・技能を習得した薬剤師/地域がん医療において、患者とその家族をトータルサポートできる薬剤師の養成を目指す
延べ合格者数 777名
試験実施 年1回・12月~翌年1月
試験内容

筆記試験

  • 各抗悪性腫瘍薬剤の添付文書情報、インタビューフォーム情報、適正使用ガイド情報
  • 適正使用ガイド記載の副作用対策薬剤の添付文書情報
  • 各抗悪性腫瘍薬剤に関する緊急安全性情報
  • その他、厚生労働省から配信される各種情報
  • 各がん腫および制吐剤などのガイドライン情報

面接試験
提出の「がん患者への薬学的介入実績の要約」(10例)から、数例について

条件
  • 実務経験3年以上
  • 日本臨床腫瘍薬学会会員
  • 日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師、薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本医療薬学会認定薬剤師、日本薬剤師会生涯学習支援システム「JPALS」クリニカルラダーレベル5のいずれかの認定を取得
  • がん領域の講習または研修を60単位以上履修
  • 外来のがん患者のサポート事例を10例提出
費用 試験・審査料:21,600円
登録料:10,800円
更新審査料:16,200円
更新 3年
直近試験合格率 41%(第6回試験)

※2019年4月現在

取得者アンケート

外来がん治療認定薬剤師:渡辺 直さん(43歳・男性) *調剤薬局勤務 *2018年取得

取得を志した理由やきっかけ
がんセンター前の薬局のため、がん患者さんが多く来局される。専門的知識を身に着け、患者さんが安心して治療を受けられるようにフォローしたいと考え取得を志した。
学習期間(勉強開始から合格まで)
約2年
平日1日あたりの平均勉強時間
1時間
休日1日あたりの平均勉強時間
2時間
具体的な勉強方法(オススメの教材など)
日常業務では「がん診療レジデントマニュアル」(医学書院出版)、「がん化学療法レジメンハンドブック」(羊土社出版)を活用し、患者さんがどの治療レジメンで治療しているのか、治療スケジュール、副作用、支持療法薬などを確認しながら業務にあたり知識を吸収していった。
勉強するうえで大変だったこと
筆記試験の出題範囲は幅広く、薬局では見ることのない注射製剤も出題範囲となる。参考資料の書籍を読み、病院で開催されるがん領域の勉強会には積極的に参加した。
勉強するうえで工夫したこと
日本臨床腫瘍薬学会では知識の取得を目標としたセミナー、外来がん治療認定薬剤師取得に向けたセミナーなど各種セミナーが用意されているため、自分の進み具合にあったセミナーを活用した。
取得後、勉強した内容を実際の業務に活かせたエピソードなど
認定薬剤師に合格したことで、自信を持って患者さんに寄り添ったケアやアドバイスができるようになったと感じている。また、がんと闘う患者さんを細やかにフォローするための処方提案ができるようになった。
資格取得に際し会社からの補助や支援の有無など
資格取得にかかる費用の一部負担。参加したいと思った学会や研修会には全て参加させてくれた。
今後の目標
がん治療を取り巻く環境が大きく変わり、病院の外でも副作用へのフォローが求められるようになってきた。かかりつけ薬剤師として、患者さんとの信頼関係を築いていけるように、更に知識を身につけていきたいと思っている。
その他
薬学的介入を行い患者さんの症状が良くなったとき、また感謝の言葉をいただいたときは大きなやりがいを感じる。