薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ |
第37回「検査値と生活指導②」
前回に引き続き、検査値についてまとめていきます。
今回はAST、ALT、総ビリルビン、γ―GTPについてです。
■AST(GOT)、ALT(GPT)
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)はアミノ酸のアミノ基転移反応に係る酵素の一種です。
ASTは心臓・肝臓・骨格筋・腎臓などに広く分布していますが、ALTはほとんどが肝臓に存在しています。
炎症などによって肝細胞が破壊されると血液中に漏れ出て、数値が上昇します。
つまり数値の上昇は肝臓がダメージを受けていることを示します。
ASTとALTの分布の違いから、その比率によって疑われる疾患が異なります。
アルコールの摂りすぎが原因の場合
⇒休肝日を決めたり、禁酒したりする必要があります。
肥満の場合
⇒食事や運動による減量が必要。
薬剤による肝機能障害が疑われる場合
⇒原因薬剤を中止します。
肝障害の報告の多くは医療用医薬品ですが、サプリメントや市販の漢方薬によるものもあります。
NAFLD/NASH診療ガイドラインにおいても食事と運動による減量が推奨されており、7~10%以上の減量で肝機能と組織像の改善がみられます。
■総ビリルビン(T-Bil)
ヘモグロビンの代謝産物であるビリルビンには間接ビリルビン(I-Bil)と直接ビリルビン(D-Bil)があり、これらを合わせたものが総ビリルビン(T-Bil)です。
寿命を迎えた赤血球が脾臓で破壊されることで生じるのが間接ビリルビン、それが肝臓に運ばれグルクロン酸抱合されると直接ビリルビンとなります。
検査では総ビリルビンと直接ビリルビンを測定し、その差から間接ビリルビン求めます。
ビリルビンは黄疸の指標であり、直接ビリルビンと間接ビリルビンどちらの方がより上昇しているかによって疑われる疾患が変わってきます。
激しい運動などによって細胞が壊れることでも上昇するので、検査前日や当日は大人しくしていましょう。
肝臓の修復を高めるためにタンパク質の摂取は大切です。
また、肝機能が低下しているとビタミンの代謝も低下してしまうので、バランスよく食べることでビタミンが不足しないようにしたいです。
急性肝炎などで黄疸症状が強く出ているときは脂質の摂りすぎに注意です。
■γ-GT(γ-GTP)
胆道から分泌されるタンパク質分解酵素であるγ-GT(γグルタミルトランスペプチダーゼ)は腎臓や膵臓、肝臓などに多く分布しています。
基準値は1つのみ記載していますが、男性の基準値の方が高く設定される場合も多いです。
上昇する要因としてはアルコールや薬剤による肝機能の低下や、胆汁のうっ滞や逆流などがあります。
アルコールの影響と思われる場合は約2週間の禁酒により数値が半減します。
健康診断前日だけアルコールを控えるようでは効果はありません。
日頃から健康的な食事を心がけたいですね。
※基準値は医療機関により異なる場合があります。
■参考
検査値ガイドブック第2版 第3部(p102〜193)生化学検査(江口正信、水口國雄 サイオ出版)
日本消化器病学会・日本肝臓学会 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第3版)