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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第41回「粒状錠ってどんなもの?エンレストについて」

2024年3月にエンレストの粒状錠小児用が承認されました。

エンレストの規格や適応、粒状錠服用の際の注意点をまとめました。

 

 

■作用機序

エンレストにはサクビトリルバルサルタンの2つの有効成分が配合されています。

 

サクビトリル:エステラーゼによって活性化されるとネプリライシンを阻害します。

ネプリライシン:ANPやBNPなどのナトリウム利尿ペプチドを分解してしまうため、ネプリライシンを阻害することで心血管保護に繋がります。

 

その一方でネプリライシンはアンギオテンシンⅡも分解する働きがあるため、阻害するとアンギオテンシンⅡの濃度は高まってしまいます。そこでAT1受容体阻害作用のあるバルサルタンも配合されています。

 

■規格と適応

現在、エンレストには錠剤の50、100、200mgと、新たに発売となった粒状錠小児用の12.5mgと31.25mgの合わせて5つの規格があります。

適応は慢性心不全(成人、小児)と高血圧ですが、全ての適応を持つのは100mg錠と200mg錠のみです。50mg錠は成人と小児の慢性心不全、粒状錠は小児の慢性心不全への適応しかありません

 

■用法用量

用法は、慢性心不全に用いる場合は1日2回投与、高血圧に用いる場合は1日1回投与という違いがあります。

※5/20 高血圧に用いる場合1日2回投与と誤った記載をしておりました。正しくは1日1回投与です。修正しお詫び申し上げます。

 

成人の慢性心不全

1回50mgから開始し、2〜4週間の間隔で1回200mgまで増量します。忍容性に応じて適宜増減しますが、いずれの量でも1日2回投与します。

小児の慢性心不全

40kg未満、40kg以上50kg未満、50kg以上という3つの区分で用量が定められています。それぞれ開始用量→第1漸増用量→第2漸増用量→目標用量が添付文書に記載されているので、処方が来た際には要チェックですね。

高血圧

通常量が1回200mgです。症状に応じて適宜増減しますが、1日1回400mgが最大量です。

 

■ACE阻害薬からの切り替えは要注意!

成人の慢性心不全においては、ACE阻害薬もしくはARBから切り替えて使用することとされています。また、高血圧に使用する場合もこれらの薬剤から切り替えということも多いと思います。

そのようなときに、ACE阻害薬からの切り替えでは、エンレスト開始まで36時間以上空ける必要があります。これは併用によりブラジキニンの分解が抑制されて血管浮腫のリスクが増大するためです。また、逆にエンレストからACE阻害薬に切り替えるという場合も36時間以上空けなければなりません。

一方で、ARBからの切り替えの場合は時間を空ける必要はなく、すぐに切り替え可能です。

 

■術前の休薬

添付文書では、手術前24時間は休薬することが望ましいとされています。RAS系の抑制による低血圧を防ぐためです。

 

■粒状錠のポイント

粒状錠は一見するとカプセル剤のような構造ですが、カプセルはあくまで容器なので、中に入っている錠剤を取り出して服用します。ってカプセルごと服用しないように要注意ですね。

 

ちなみに、カプセルに入っている理由は計数を補助するためだそうです。カプセルの中には、12.5mgだと4錠、31.25mgだと10錠が入っているので、全量服用します。

 

体重に応じた用量となるように12.5mgと31.25mgを組み合わせて投与しますが、組み合わせられる用量と体重での投与量の乖離が大きい場合は錠剤を懸濁液に調製して投与することも可能です。

 

■参考

エンレスト 添付文書、インタビューフォーム

エンレスト適正使用ガイド 慢性心不全