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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第38回「検査値と生活指導③」

検査値シリーズもラストです!

今回は脂質異常症関連の数値についてです。

 

■LDL-コレステロール(LDL-C)

「悪玉コレステロール」と言われるLDL-C。

肝臓から全身にコレステロールを運びます。

増えすぎることで血管壁にコレステロールが沈着し、動脈硬化や冠動脈疾患のリスクが高まります。140mg/dL以上で高LDL-C血症と判断されます。

目標値はリスクごとに異なっており、例えば一次予防で中リスクの場合140mg/dL未満と設定されています。

 

数値改善のために控えた方がいい食べ物としては飽和脂肪酸を多く含むものです。具体的には、

・肉の脂身部分や加工肉

・鶏卵

・乳類

などです。

 

逆に積極的に摂った方がいい食べ物としては

・青魚のように不飽和脂肪酸を多く含むもの

・緑黄色野菜

・カテキン含有食品

などです。

 

不飽和脂肪酸の中にはシス型とトランス型がありますが、トランス脂肪酸は摂りすぎると体に悪影響です。

 

 

■HDL-コレステロール(HDL-C)

「善玉コレステロール」と言われるHDL-C。

血管壁についた余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きをしています。つまり、HDL-Cが少ないと血管にコレステロールが溜まり、動脈硬化などのリスクになります。

40mg/dL未満で低HDL-C血症と判断され、管理目標値は40mg/dL以上です。

 

数値改善のためには食生活の見直しだけでなく、運動療法との併用が効果的です。

有酸素運動を中心にウォーキングや水泳、テニスなどの中強度以上のものを、1日合計30分以上×週3回以上実施することが望ましいです。

1日中座ったままの生活は避けましょう。

 

■総コレステロール(TC)

LDLやHDLのほか、カイロミクロンやVLDL、IDLに含まれるコレステロールの合計です。

加齢とともに上昇し、男性では40代ごろから、女性では更年期ごろから増加してきます。

コレステロールの中でも小腸由来(食事由来)のものは25%ほどで、肝臓で生成されるものが75%ほどです。そのため、検査結果への食事の影響は少ないです。

 

HDL-Cが高い場合でもTCは高くなってしまうので、脂質異常症の診断基準においてはTCからHDL-Cを引いた「Non-HDL-C」が用いられます。Non-HDL-Cが170mg/dL以上で高Non-HDL-C血症と判断されます。

 

TCを下げるためには食事や運動、禁煙など生活習慣の改善が大切です。

食事では同じ食材を使うにしても、炒めたり揚げたりするよりも茹でたり焼いたりした料理の方が望ましいです。またアルコールの摂取量を減らすことも動脈硬化の予防につながります。

目安としては1日のアルコール量を25g以下にすることが推奨されています。

※25gとはビールに換算すると大瓶1本分です。

 

 

■中性脂肪(TG)

脂肪酸とグリセリンがエステル結合したもので、体温を保つなど体のエネルギー源となっています。

エネルギー源として使われなかったTGは肝臓や脂肪組織に蓄えられます。

そのためTGが多すぎると脂肪肝になったり、肥満になったり、動脈硬化の原因となったりします。

 

空腹時採血で150mg/dL以上、随時採血で175mg/dL以上で高TG血症と判断されます。

 

基準が2つ設定されていることからも分かるように、食事や飲酒の影響を受けやすく、採血前は10〜12時間の絶食が必要です。

脂っこいものだけでなく、炭水化物や果糖含有加工食品の摂りすぎにも注意です。またバランスの良い食事をしているからといって食べ過ぎてはいけません。

 

適正体重を保てるように総エネルギー摂取量を制限しましょう。

 

※基準値は医療機関により異なる場合があります。

 

■参考

検査値ガイドブック第2版 第3部(p102〜193)生化学検査(江口正信、水口國雄 サイオ出版)

日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022