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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第45回「インスリンとGLPー1作動薬(注射)の保管方法を確認しよう」

8月に南海トラフ地震臨時情報が発表され、震災に防災グッズの確認をした方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、普段冷蔵庫で保管しているインスリン等は災害時どのようにしたらいいのか、まとめました。

 

 

■通常時の保管方法

インスリンやGLP−1作動薬は低温になっても高温になっても、十分に効果が発揮されなかったり有害事象の原因になったりしてしまうため、適切な温度で保管することが大切です。

 

未開封のものは凍結を避けて、2〜8度の冷蔵庫に保管します。冷蔵庫の中でも、吹き出し口から冷風が当たる場所は凍結の恐れがあるため避けた方が良いでしょう。もちろん、冷凍庫もNGです。

逆に適している場所は、ドアポケットと言われています。

 

そして、開封した後は30度以下(25度以下の製剤もある)の室温で保管します。使用中の薬剤を冷蔵庫で保存していると、注射した時に痛みを感じたり、室温⇆冷蔵を頻繁に繰り返すことで結露し故障の原因になったりしてしまいます。

ただし、一部の製剤に関しては開封後も冷蔵庫保存可能とされている薬剤もあります(下記)。

 

ノボラピッド注フレックスタッチ・フレックスペン

ライゾデグ配合注フレックスタッチ

フィアスプ注フレックスタッチ・バイアル

トレシーバ注フレックスタッチ

レベミル注フレックスペン

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ

 

注射をする時は15〜25度の常温に戻してから使用します。

 

 

■暑い時期の持ち運び

昼に注射するために持ち運びが必要な場合や、夏の旅行などで30度を超えてしまうような場合も想定されます。特に、真夏の車内など40〜50度にもなるようなところで、そのままの状態で保管すると僅か数時間で浮遊物等が生じる可能性があります。そういったことを避けるため、保冷剤と共にクーラーボックスや保冷バッグに入れて持ち運びます。

保冷剤は冷凍庫で冷やしたものだと凍結の恐れがあるので、冷蔵庫で冷やしたものにしましょう。また、直接薬剤に触れると結露による故障の恐れがあるためタオル等で包むと良いです。

保冷剤がない時は冷やしたペットボトル飲料などでも代用できます。

 

■寒い時期の持ち運び

気温が氷点下になるような時の持ち運びにも注意が必要です。

一度凍ってしまった製剤は成分が変性している恐れがあるため、解凍しても使用することはできません。そのため、外気に触れないように乾いたタオルで巻き、上着の内ポケットなどに入れるといった対策が必要です。

また、屋外や車内に放置することも避けましょう。

 

■旅行時の持ち運び

暑かったり、寒かったりに対しては上記の対応となりますが、それ以外に飛行機に乗る際にも注意が必要となります。荷物を預ける貨物室内は低温になって、薬剤が凍結してしまう恐れがあります。そのため、預けるのではなく、手荷物として機内に持ち込みましょう。

 

 

■冷蔵庫が使えないとき

災害時は冷蔵庫が使えない状況も想定されます。未開封の製剤は冷蔵庫保管が原則ですが、やむを得ない場合は一定期間室温での保管になってしまっても大丈夫です。

2011年の東日本大震災の際には、インスリンを製造しているノボ ノルディスクファーマ、日本イーライリリー、サノフィ・アベンティスの3社から、室温での保管になっても4週間は大きな変化が認められないため使用可能というアナウンスがされました。

製剤によって週数は異なりますが、変色や浮遊物の発生がないか確認して使用しましょう。

 

■参考

日本糖尿病協会 インスリンが必要な糖尿病患者さんのための災害時サポートマニュアル

 

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 製剤の保管・保存・廃棄に関する注意点

 

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 弊社糖尿病関連製品をご使用の皆様および医療従事者の皆様へ ー緊急時の保管についてー

 

ノボ ノルディスクファーマ株式会社・日本イーライリリー株式会社・サノフィ•アベンティス株式会社 東北地方太平洋沖地震にて被災された患者の皆様へ