薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ |
第46回「新たなインフルエンザワクチン「フルミスト」」
2024年10月、国内初となる経鼻インフルエンザワクチンが発売開始されました。特徴や、従来のワクチンとの違いについてまとめました。
■フルミストの特徴
①投与方法
投与方法が1番の特徴ともいえ、両鼻腔に1噴霧します。噴霧されたときに自力で鼻をすする必要はありません。
従来の皮下注射と異なり、針を刺さないので痛みがないという点が大きなメリットです。また、1シーズンにつき1回の投与で済むので、スケジュール確保の面でもメリットがあると言えます。
②対象年齢
国内では、2歳〜19歳未満への投与が承認されています。2歳未満に投与すると、入院や喘鳴のリスクが上昇したという海外の報告があります。
なお、海外では49歳までの適応があります。
③禁忌
フルミストはウイルスを弱毒化させた生ワクチンのため、発熱中など一般的な予防接種の禁忌のほかに、明らかに免疫機能に異常のある方、免疫抑制の治療中の患者、妊婦には投与することができません。
併用禁忌の薬剤としては、ステロイド(経口薬、注射薬)と免疫抑制剤(経口薬、注射薬)が挙げられています。
④注意点
・飛沫又は接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、ワクチン接種後1~2週間は、重度の免疫不全者との密接な接触はできる限り避ける必要があります。また、授乳婦がワクチンを接種した場合も1~2週間は、乳児との接触をできるだけ避けるように、と添付文書に記載があります。
・ゼラチンアレルギー、鶏卵・鶏肉アレルギーのある方への投与は注意が必要です。
・他のワクチンとの同時接種は可能です。また、医師の判断によりフルミストとインフルエンザHAワクチン(注射)を同一シーズンに両方接種することもできます。
■小児科学会からの推奨度
インフルエンザHAワクチン(注射、不活化ワクチン)とフルミスト(経鼻、弱毒生ワクチン)の間に効果における明確な差は報告されていません。そのため、フルミストの適応年齢である2~18歳において同等の推奨度とされています。
ただし、喘息患者や授乳婦、周囲に免疫不全者がいる場合はインフルエンザHAワクチンが推奨されています。また、適応年齢以外や妊婦等はインフルエンザHAワクチンのみが推奨されています。
■不活化ワクチンとの比較
違いを表にまとめたのでご覧ください。
免疫獲得の機序も異なり、フルミストは鼻の粘膜で気道分泌型IgA抗体を誘導することにより、特に小児において高い感染防御効果が期待されています。
■参考
・フルミスト点鼻液 添付文書、インタビューフォーム
・日本小児科学会予防接種・感染対策委員会 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方