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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第50回「点耳薬の基礎知識と使用方法」

点耳薬は、耳に直接作用させる局所治療薬です。外耳炎、中耳炎、耳垢の除去など、さまざまな耳の症状に対して用いられます。

初めて点耳薬を使用する患者さんには丁寧な説明が必要ですよね。基本の使い方や2種類の点耳薬を処方された場合の手順について確認しましょう。

 

点耳薬の種類と用途

点耳薬には大きく分けて以下の種類があります。

 

・抗菌薬点耳薬

細菌感染が原因の炎症に対して用いられます。

・ステロイド点耳薬

炎症やアレルギー反応を抑えるために使用されます。

・耳垢除去薬

耳垢の硬化、詰まり、聴力低下や不快感を引き起こす場合に用いられます。

 

 

点耳薬の基本的な使い方

◉使用前の準備

1.手洗い

点耳薬を使用する前に十分な手洗いを行い、清潔な状態で扱う。

2.薬液を温める

冷たい薬液は耳への刺激となり、めまいを引き起こす場合があるため、手のひらで人肌程度に軽く温めてから使用します。

3.耳の掃除

綿棒等で耳をきれいにします。

 

◉点耳の方法

⒈横になる

点耳する側の耳が上になるよう、横向きに寝ます。

⒉点耳薬を滴下する

耳たぶ(耳介)を後方に引っ張って外耳道を広げ、容器の先端が直接耳に触れないよう注意しながら、指示された滴数分だけ滴下します。

抗菌薬の場合、6〜10滴のことが多いです。

中耳炎等で中耳腔まで届かせたい時は、滴下後に耳たぶを後ろに引きながらゆすったり、唾を飲み込むようにしたりすると奥まで届きやすいです。

⒊横になってキープ

滴下後、そのままの姿勢を維持することで、薬液が十分に耳内に浸透します。時間としては、耳浴指示の場合は約10分間、点耳指示の場合は2〜3分です。

4.ティッシュ等を耳に当てながら起き上がる

起き上がって耳の外に出てきた薬液をティッシュやガーゼなどでやさしく拭き取ります。耳の中まで拭き取る必要はありません。

 

 

2種類の点耳薬を処方された場合の使用手順

場合によっては、異なる作用を持つ2種類の点耳薬が処方されることがあります。たとえば、抗菌薬とステロイド薬などです。

 

使用順序

医師の指示を最優先とします。特に指示されていない場合は、どちらから使用してもOKです。

薬剤間の間隔

点眼薬は一般的に5分、あるいは10分以上の間隔をあけるように言われています。これは目に入る薬液の量が限られているからです。

一方で、耳は眼よりも入る容量が大きいです。そのため、時間を空けずに連続して使用しても問題ありません。ただし、医師から点耳間隔の指示がある場合は、その指示に従ってもらいます。

 

2種類を同時に耳に入れてもいい?

時短のために、2種類ともまとめて滴下してから10分間待ちたいと思う方もいるかもしれません。医師からそれでOKと言われているのであれば問題はありませんが、基本的には別々に滴下してほうが両方の効果を十分発揮できるでしょう。

 

子どもへの点耳薬の使用方法

小さな子どもに点耳薬を使用する場合もあります。その際は膝の上で横になってもらって滴下します。

誰でもいきなり耳に水が入ってきたらびっくりするので、声がけが大切です。また、 薬液を温めることを忘れず、冷たさによる不快感を軽減しましょう。10分間の待ち時間はテレビや動画を見せる、絵本を読むなど何か別のことに集中してもらうことがおすすめです。また、赤ちゃんの場合は、横向きの状態を維持するために点耳後に授乳をするというのも一つの手です。