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スポーツファーマシスト学習記録

第14回「海外にもスポーツファーマシストはいるのか?」

こんにちは。新米スポーツファーマシストのシトロンです。

夏の暑さが終わり、季節はすっかり秋ですね。いや、もう冬の方が近いかもしれません。そして冬季スポーツの時期がやってきます。

 

私はスケートやアイスホッケーを一切やったことがないのですが、最近何かと関わる機会が多く、選手や関係者から話を聞くたびに競技への魅力を感じています。

私が一番面白いと感じているのは、シーズンのオン・オフについてです。冬季スポーツは雪 や氷などがある寒い環境で行うスポーツです。だから、試合期と練習期が季節ごとにしっかりと分かれています(海外遠征になると少し話が違ってきますが)。

また競技によっても異なります。大体は10~11月頃からシーズンが始まり、3月まで続くそうです。そのため冬季競技を専門にしている学生の中には、冬の間学校を公欠して試合に臨む人もいるそうです。

 

私はずっとテニスをやっていましたが、1年中試合がありました。なので、シーズンの区分けをあまり意識したことがなく、ひたすら次の試合に向けて練習していた記憶があります。

シーズンが分かれているのは短期集中できるし良さそうだなと思う反面、その時期にかかる負担はすごく大きいのだろうなと想像します。いずれにせよ、初めてその競技に関わるときには、その競技の特性をたくさん学ぶことが重要だと改めて思った出来事でした。

 

本題に移ります。今回のテーマは「海外でのスポーツファーマシスト」です。

第10回で資格取得後のギャップについて触れたとき、日本での認知度について書きました。スポーツファーマシストという資格はあまり知られていないのが現状である、という話をしたと思います。今でもあまり認知されていないなと実感することが多いです。

 

では、海外ではどうなのでしょうか?

まず前提として、薬剤師は国家資格です。なので、仕事の範囲は各国によって異なります。

例えば、アメリカやカナダの薬局薬剤師はインフルエンザの予防接種を行うことができま す。国によっては、薬剤師が自らの判断で処方せんを書ける「独立型処方権」が認められている場所もあります。日本の薬剤師制度と比べると、ずいぶん大きな違いがありますね。

 

そんな中、この「スポーツファーマシスト」は、日本が世界で初めて作った薬剤師の資格です。きっと海外で「I’m a sports pharmacist.」と言っても通じないでしょう。実際私も海外の方に言ったら、どういう仕事? と聞かれました(その後説明したら、きちんと理解してもらえました)。

かと言って、海外の薬剤師がアンチ・ドーピング活動に関わっていないわけではありません。例えば2012年のロンドン五輪では、選手村の薬局で100人の海外の薬剤師がボランティアとして活動しました。彼らは競技期間中の薬剤選択に関する助言や各会場の医療室での医薬品管理などに携わっていました。

また、各国で薬剤師がスポーツの世界に介入する「スポーツ薬学」に対する研究論文が発表されているため、注目はされています。

 

ですが、一方で薬剤師側の準備ができていないという意見も数多くあります。フランスの薬剤師を対象にした研究では、91%がドーピング防止に果たす役割があるとしたものの、内74%は対応する準備ができていないと回答しました。また、大学などの教育機関でスポーツ薬学を学ぶ機会が限られているという報告もあります。

 

【参考】

SienceDirect「Retail pharmacists and doping in sports: Knowledge and attitudes. A national survey in FrancePharmaciens d'officine et dopage: Connaissances et attitudes」2022年10月21日

National Library of Medicine「Current and Potential Roles in Sports Pharmacy: A Systematic Review」2022年10月21日

 

これはあくまで個人的な見解なのですが、日本はスポーツ薬学を学ぶ機会が他国より確保されているのかもしれません。今まで日本のことばかり考えていましたが、まだまだ知らないことが多いなと感じました。

 

将来的に考えれば、日本の資格制度が海外でも応用され、そのとき日本のスポーツファーマシストの経験が世界でも参考にされるなんてこともありそうな気がします。もっと英語の勉強頑張らないとなあ……。

 

今回の記事は以上です。 海外事情について調べてみましたが、楽しんでいただけたでしょうか?

もし他にも情報をご存知の方がいらっしゃれば、是非教えてください。 来月は実務講習の申し込み時期です。スポーツファーマシストの皆様、お忘れなく。

 

それでは、また次回。