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スポーツファーマシスト学習記録

第24回「エピペン注射液の使用について」

こんにちは。スポーツファーマシストのシトロンです。

学生の皆さまは夏休みいかがお過ごしでしょうか? 私は薬学生の頃、夏は部活の大会と合宿で大忙しでした。真剣に一つのことに打ち込める時間ってほんとに貴重ですね。

実習との関係上3年間しか部活に在籍することはできませんでしたが、今考えるとあの期間があったからこうしてスポーツに関わっているのだろうなと思います。

……思い出を語りだすと長くなるのでここでは割愛させていただきます。

 

前回は夏らしい話題として虫除けについて触れました。もうすぐ季節が秋に変わりますが、蚊のシーズンはまだ続きます。

引き続きしっかりと対策を取りましょう。そして虫除けを購入する際には商品の裏にある製品表示を確認していただければ、なお嬉しいです。

 

ここからが本日の話題です。

今回は「エピペン注射液」についてみなさんと一緒に学んでいきたいと思います。

 

早速ですが、ここで問題です。

Q.「エピペン注射液」はドーピング禁止物質に該当するのでしょうか?

A.該当します。

 

正確にお伝えすると、S6「興奮薬」の分類に含まれるため、競技会(時)に禁止されます。

じゃあスポーツ選手はエピペンが使えないの? と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけではありません。エピペンは命を救うために必要なお薬です。そんなときに思い出していただきたいのがTUE申請です。

アナフィラキシーの場合、不測の事態がいつ起きてしまうかわかりません。なので、事前申請ではなく使用した後に遡及的TUE申請を行って良いと認められています。申請方法や流れは事前に申請を出すときと同じです。

ちなみに、医師から処方されたエピペンを持ち歩いているだけであればTUE申請は不要です。

 

ご存知の方も多いと思いますが、エピペンとは食物や虫刺されなど起因物質によって起こるアナフィラキシー反応に対して用いられるお薬です。海外のデータではありますが、食物によるアナフィラキシー発現から心停止までの時間はわずか30分であると報告が出ています。症状が起きたらできるだけ早期に対応する必要があります。

エピペンは症状が起こってから医師の治療を受ける間、症状の進行を一時的に緩和する補助治療剤です。なので、使用した後は必ず救急車を呼びましょう。

症状は人によってさまざまですが、エピペンを使うべき症状として以下の例が挙げられます。

消化器系 繰り返し吐く・持続する強い腹痛
呼吸器系 喉や胸が締め付けられる・掠れ声・持続する咳・息がしにくい
全身性 意識朦朧・唇や爪が青白い・脈不規則
参照: エピペンについて(マイランEPD合同会社)

 

注射薬なので少し抵抗感を感じる方もいるかもしれませんが、命を守る行動として症状があった際はためらわず使用してください。

試合期間中はいつもと違う生活環境になることが多いため、特に注意しなければなりません。私も実際に選手対応をしていますが、選手によって対応しなければいけないレベルが異なるため、なかなか一筋縄ではいかないなと感じています。「いかに選手が納得する形でリスクを下げるか」が、現場で対応するときの鍵になると思います。

 

いかがでしたでしょうか?

アナフィラキシーは命に関わる状態です。けれどいざ対応しなければならない状況になってしまったら、不安は大きいでしょう。そこで薬の知識を持っているスポーツファーマシストが介入することで、選手だけでなく監督・スタッフの不安が少しでも解消されたら、私たちの存在価値が高まると思っています。

 

では本日はここまで。

まだまだ暑い日が続きます。無理せず前向きに乗り切りましょう!

以上、シトロンでした。