第11回 薬剤師の奨学金事情と収支最適化について解説!
木元 貴祥(きもと たかよし)さん
パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/
1986年生まれ 滋賀県出身
日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。
●運営サイト
- 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト - メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説 - パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト
●著書
薬剤師国家試験の病単、薬剤師国家試験のための薬単、同効薬おさらい帳
パスメド –PASS MED- を運営している木元 貴祥(きもと たかよし)です! 新入社員が入ってくる時期ですね。新入社員の頃からお金の勉強はしておきたいものです。余談ですが、2022年1月に法人化し、株式会社PASS MED(パスメド)として新スタートました! 今後も精進していきます。
さて今回は薬剤師と奨学金について解説しています。実は私も学生時代に奨学金を借りていて、今も返済中の身です。
卒業後に重くのしかかる奨学金
薬学部の学費は非常に高額ですよね。授業料が年間200万円、そしてそれが6年間……。スムーズにいったとしても、学費だけでも総額1,200万円かかります! 高い!!
そんな学生生活を支えてくれるのが奨学金。
しかし、借りた分だけ卒業後に重くのしかかってきます……。貸してくれたことに感謝をしつつ、しっかりと返済をしていかないといけませんね。
ちなみに、借りた奨学金の一般的な平均額が313万円(中央労福協「奨学金に関するアンケート報告書」2015年)に対し、薬剤師の平均は438万円(リクナビ薬剤師:みんなどうしてる? 薬剤師と奨学金の関係を徹底調査!)という結果です。薬学生を対象とした別のアンケートでは、約7割の方が700万円以上の奨学金を借りているとのデータも!! 1,000万円以上も約4割という結果でした。
奨学金の利子
日本学生支援機構では無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金があります。多くの方が、第二種奨学金を借りていると思います。
ただ、この第二種奨学金であったとしても利子は微々たるもので、2019~2021年の利子はおおよそ0.1%未満です……!!(低い!!)
1,200 万円を借りた際、年間の利子を0.1%、20 年で返済するシミュレーション (※)では、
●総返済額:12,124,800円
●返済月額:50,520円
となり、利子の部分に該当するのは、20年間で12万円程度です。
(※)簡易シミュレーションのため、実際とは異なります。ご了承ください。
通常利子は、返済期間が長ければ長いほど負担となるのですが、奨学金の場合は非常に低率で設定されているため、そこまで返済を急がなくても良いと思います。
大事な貯金を奨学金の繰り上げ返済にドバっと使うのではなく、貯金は転職や結婚などのライフイベントに備え、手元に置いておけた方が、きっと安心につながるでしょう。
ただ、毎月の返済額5万円が「厳しい!」「苦しい!」と感じる場合、すぐにでも支出と収入を見直して最適化を行ってください。
1~2 万円は支出の最適化、残り3~4 万円は収入の最適化で乗り越えていきましょう!
支出の最適化:固定費から削減していこう
まずは支出の最適化です。ただ単に食費や生活費や娯楽費をカツカツに削って倹約してしまうと、心身に悪影響を及ぼします。
従って、普段何気なくお金を払っている「固定費」から削減していきましょう! ここで紹介する固定費を削減したところで、ほぼほぼ実生活に影響がありません。
うまくできれば月1~2万円の削減につながりますよ! ざっと図にしたものはこちらです(図1)。
代表的なものはやはり光熱費と通信費でしょう。電力自由化・ガス自由化によって、さまざまな業者が参入してきました。それに伴い、電気・ガス代も安くなってきています。
また、アンペアを少し下げる(例:30A→20A)だけで基本料金が安くなることもあります。例えば、東京電力なら基本料金は30Aで858円、20Aで572円です(2022年現在)。
通信費はMVNO(いわゆる、格安 SIM)の登場でかなり安くすることが可能になりました。 以前は大手キャリアで月6,000~7,000 円ほどでしたが、MVNOに乗り換えることで今では月1,500~2,000円ほどです。つまり、乗り換えるだけで月5,000円ほどの節約効果があるということ!! これはマジででかいですよ。
その他、意外と落としがちなのが保険料と所属学会です。
あなたに「もしも」のことが起きた場合の必要保障額は、独身時代・結婚時代・子育て時代、とそれぞれのライフイベントに応じてまったく異なります。子供が産まれたとしても、独身時代に加入した生命保険・医療保険をそのままズルズル加入しっぱなしのことはよくあります。 おおまかなライフイベントと保険の考え方は図にまとめましたので参考にしてみてください(図 2)。
あと、認定薬剤師などの資格維持のためには日病薬などに加入していることが条件とされています。しかし、奨学金の返済が苦しいのに年会費を支払い続ける意味はあるのでしょうか? 資格を取得することで給与の上乗せがある場合にはいいかもしれませんが、多くの職場は手当の支給がありません。
人によっては資格維持のために年間10万円前後支出している方もいます。あなたの所属している学会の年会費、本当に必要ですか? 今一度考えてみましょう!
もちろん、薬剤師としての専門性を高める目的もありますので、その場合はぜひ継続して所属しておきましょう。
収入の最適化
続いて収入の最適化です。月の収入を3~4万円UPさせるということは、年収換算でおおよそ50万円。年収を50万円UPさせるための方法としては以下の3つがありますね。
●今の職場で年収を上げる:管理薬剤師や役職に就く
● 副業で年収を上乗せする: 単発派遣や短期アルバイト、メディカルライターなど
● 転職で年収UP:地方や管理薬剤師への転職
具体的なことについては割愛します。
まとめ
●薬剤師の奨学金は1,000万円を超えることも珍しくない
●利子は微々たるものなので返済を焦る必要はない
●毎月の返済が厳しいようなら支出と収入の最適化を行うべし
●代表的な支出の最適化には「水道光熱費」「通信費」「保険料」「学会年会費」などがある
今や薬学生の半数が借り入れをしている奨学金。
学生時代にはあまり返済まで意識が回っていないこともしばしばありますが、働きだすとその重さにびっくりする方もいらっしゃることでしょう。しかも返済期間は20年ほどと長期に渡ります。
今回の記事を参考にしていただき、ぜひ支出の見直し、そして収入UPの方法を試していただければ嬉しく思います。行動するなら早いうちにした方が得策です! 実際に私もMVNOや電力自由化の乗り換えで支出はかなり削減できましたよ。
本記事の詳しい解説は以下で配信中!
●メディカルタックス:薬剤師で奨学金が返せない・キツいと感じるなら収支を最適化しよう