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連載:教えて!お金のあれこれ

第18回 出産前後にかかるお金の話について解説!

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/

1986年生まれ
滋賀県出身日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。

●運営サイト

  • 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
    新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト
  • メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
    医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説
  • パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
    無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト

●著書

  • 薬剤師国家試験のための薬単・病単・薬問・病問
  • 薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本
  •  薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳:
    こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック 
  • 新薬情報オフライン 新薬の特徴がよくわかる!              
    既存薬との比較と服薬指導のポイント

 

株式会社PASS MED(パスメド)の木元貴祥です!

2024年の新年度がスタートしました。心機一転で励みたいと思います。


さて、2023年12月22日には、政府全体の子ども施策の基本的な方針等を定める「こども大綱」が閣議決定され、話題となりました。

その中では、「育児休業制度自体についても多様な働き方に対応した自由度の高い制度へと強化する。」と記載されています。


今後は、男性の家事・子育てへの参画の促進、企業の福利厚生の充実を図ることにより、女性に一方的に負担が偏る状況を解消。女性と男性がともにキャリアアップと子育てを両立できるよう、官民一体となった環境整備が進められていくと予想されます。


そこで今回は、現時点(2024年4月)における出産・育児関連の制度とお金に関する内容を紹介していきます! 今後、益々良い方向に制度改定が行われると期待したいところですが、まずは現状の制度を知っておきましょう。

 

妊娠がわかったらするべきこと

妊娠していることがわかったら、まずは各自治体の窓口で妊娠の届出を行いましょう!

母子健康手帳の交付、保健師などによる相談、母親学級・両親学級の紹介、各種の情報提供とともに、妊婦健診の補助券を受け取れます。通常、妊婦検診は全額自己負担ですが、検査費用の一部(自治体によっては全額)を補助してくれます。

また2023年4月から、全ての妊婦や子育て家庭が安心して出産・子育てができるよう、身近で寄り添って相談に応じ、必要な支援につなぐ「伴走型相談支援」と、出産育児関連用品の購入や子育て支援サービスの利用における負担軽減を図る「経済的支援(出産・子育て応援ギフト)」が実施されています。

 

「出産・子育て応援ギフト」については、妊娠時・出産時にそれぞれ5万円相当(合計10万円相当)のギフトが支給されます。自治体によっては独自に上乗せ(例:東京都は出産時に5万円の上乗せ)を行っていることもありますので、各自治体に確認してみましょう。

 

 

出産前後の給付金制度

続いては、出産前後に貰える給付金の制度についてです。

「産休」や「育休」という名前は聞いたことのある方が多いと思いますが、どれくらいのお金がどれくらいの期間貰えるのかも知っておきましょう。

制度の全体像について、下図にまとめました。順に概要を紹介していきます。

 

 

①産休(産前産後休業)と出産手当金

出産前42日・出産後56日の間(産前産後休業=産休)に会社を休んで十分な給与が出ない場合に受け取れるお金が出産手当金です。


サラリーマンなどの第2号被保険者が加入している健康保険から支払われるため、個人事業主などの第1号被保険者は対象外です。また、男性も対象外です。出産手当金の金額は、1日につき「給与1日分」の3分の2が支払われます。

 

②出産育児一時金

国民健康保険・健康保険から出産1児あたり50万円を受け取れるのが出産育児一時金です。一旦は窓口で出産費用を支払い、後日申請することで受け取れます。

また、「直接支払制度」の対象病院でしたら、窓口負担を直接50万円差し引くことも可能です。

出産育児一時金は個人事業主などの第1号被保険者(国民健康保険)も対象です。一般的な出産費用は約46万円*のため、ほとんど自己負担なく出産できるというわけですね。

 

*参考:第136回社会保障審議会医療保険部会 出産育児一時給付金について

③育児休業(育休)と育児休業給付金

原則、満1歳になるまで(最長2歳まで)の間(育児休業=育休)、子育てで会社を休む場合に雇用保険から受け取れるお金が育児休業給付金です。雇用保険はサラリーマンなどの第2号被保険者が加入しているため、個人事業主などの第1号被保険者は対象外です。
育児休業給付金の月額は、期間によって異なります。


育休開始から180日:「休む前の給与1日分」×支給日数(通常30日)×67%

育休開始から181日以降(最長2歳まで):「休む前の給与1日分」×支給日数(通常30日)×50%

 

育休は夫婦ともに取得可能です! さらに、2022年10月1日からは「育休の分割取得(2回まで)」や、子の出生後8週間以内に4週間取得できる男性版産休制度の「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新設されました。

 

出生時育児休業の対象は男性で、通常の育休にプラスして取得可能です。

 

④産休・育休中は社会保険料が免除

産休・育休中は、厚生年金保険料や健康保険料の支払いが免除されます。免除でも通常どおりの健康保険の給付を受けることができ、免除された期間分も将来受け取る年金額の減額などはありませんのでご安心ください。


また、この期間中に受け取る①出産手当金、②出産育児一時金、③育児休業給付金は全て非課税所得のため、年収として算入されません。その年の年収は低くなるため、年収201.6万円(合計所得金額133万円)以下なら夫の配偶者控除・配偶者特別控除が適用できる可能性が高まります第16回所得控除の人的控除について解説!を参照)

夫側の年末調整で適用できるため、忘れずに行うようにしましょう。

 

その他の手当:児童手当・児童扶養手当・特別児童扶養手当

 

ほかにも、子育て関連手当として子どもの年齢に応じた児童手当(第15回 児童手当と所得制限について解説!を参照。)や、ひとり親世帯を対象とした児童扶養手当、精神・身体に障がいを有する児童を対象とした特別児童扶養手当などがあります。

いずれも扶養親族数や所得制限がありますので、お住まいの自治体に問いあわせるようにしましょう(児童手当は、2024年10月支給分から所得制限が撤廃される見込み)。

 

復職後の勉強

薬剤師として産休・育休を取得し、いずれ職場に復帰すると思いますが、1~2年ほど現場から離れてしまうと、その間に上市された新薬の勉強等が疎かになってしまうこともしばしばあります。


そんな薬剤師の参考になるのが、2024年2月に出版した『新薬情報オフライン ~新薬の特徴がよくわかる! 既存薬との比較と服薬指導のポイント~』です。

私たちのWEBサイト「新薬情報オンライン」で注目度の高かった30個の新薬について、疾患概要・類薬との比較・服薬指導のポイントまでをコンパクトにまとめました。また、ピックアップしきれなかった15個の新薬についても概要を掲載しています。

新薬の勉強をサクっとまとめて行いたい薬剤師には最適な一冊ですので、ぜひご覧いただけると嬉しいです!

 

まとめ

今回は、出産・育児関連の制度とお金に関する内容を中心に紹介しました。

 

妊娠・出産時には出産・子育て応援ギフトとして10万円相当額が支給される。

産休時の出産手当金は健康保険から給与の3分の2相当額が支払われる。

出産育児一時金は国民健康保険・健康保険から1児あたり50万円が支払われる。

児休業給付金は雇用保険から半年間は給与の67%、以降は50%相当額が支払われる。

産休・育休中は社会保険料が免除される。

今回紹介した内容はほんの一部です。また、今後は「こども大綱」に沿って様々な支援制度が拡充されていくと予想されます。

 

制度が変更になる可能性もありますので、その時その時の制度をしっかりと確認することが大切ですね。