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連載:教えて!お金のあれこれ

第20回 薬剤師に適した投資の考え方

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/

1986年生まれ
滋賀県出身日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。

●運営サイト

  • 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
    新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト
  • メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
    医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説
  • パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
    無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト

●著書

  • 薬剤師国家試験のための薬単・病単・薬問・病問
  • 薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本
  •  薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳:
    こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック 
  • 新薬情報オフライン 新薬の特徴がよくわかる!              
    既存薬との比較と服薬指導のポイント
  • 知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金の強化書

 

株式会社PASS MED(パスメド)の木元貴祥です!
第17回の記事「新しいNISAについて解説!」では新しいNISAの概要についてご紹介しました。NISAが良さそうなのは理解していただけたと思いますが、「実際どんな金融商品に投資したらいいの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一言で「投資」と言っても、NISAの中で購入できる投資商品は、株式や投資信託など、さまざまな種類があります。今回は特に薬剤師に適した投資の考え方について紹介していきます。
また、2024年9月に新発売した『知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金の強化書』(株式会社じほう)の内容からも一部抜粋しています!

 

投資における大切なキーワード4つ

金融庁の資料において、投資における元本割れの可能性を軽減することができるキーワードは「分散」、「積立」、「長期」、「非課税」の4つとされています(図1)。

非課税については、iDeCoやNISAであれば実現可能でしたよね。

 

 

薬剤師は投資の専門家ではないため、投資に対して不安になることもあるかもしれません。そんな薬剤師だからこそ、上記のキーワードを実践するだけで、失敗するリスクは大幅に低減するでしょう。

今回はその裏付けとなる根拠データを示しながら解説していきます。読み終わったあと、少しでも「あ、私でも投資が始められるかも……!」と感じていただければ大変嬉しく思います♪

 

分散投資に適した金融商品は「投資信託」

まずは、分散投資から解説していきましょう。

一言で「投資」と言っても、何に投資するのか、投資対象は様々です。株式投資、マンション投資、FX投資、金(ゴールド)の投資、ビットコインなどの仮想通貨の投資などなど。

 

投資の世界では、「卵は1つのカゴに盛るな」という有名な格言もあります。卵を1つのカゴに盛ると、そのカゴを落としてしまった時には、すべての卵が割れてしまいます……が、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの1つのカゴを落として卵を割ってしまったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずに済むという意味合いです(図2)。

 

投資はリスクヘッジ(リスクを低減するための対策のこと)が大切です。例えば、全財産をFXに投資して、FXが失敗すると全財産を失います。

 

そのため、FXは1割、投資信託は5割、株式は2割、債券は2割……、といった具合で投資対象を分散するのが分散投資です。分散投資は、最も合理的かつ有効なリスクヘッジと言えるでしょう。

 


さて、世の中には投資対象となる多くの金融商品が存在しています。NISAやiDeCoの中でも購入可能な主な金融商品は(図3)の3つです。


このうち、投資初心者の薬剤師に適した金融商品は「投資信託」一択です! 株式や債券は聞いたことがあると思いますが、いずれも「1単位の購入で、投資先は1つ(株式なら1社、債券なら1つの国または1社)」です。

つまり、株式や債券を1単位だけ購入しても、分散投資はできないということになります。株式投資で分散をするならば、個別に10社や100社の株式を購入してく必要があるのです。

 

一方、投資信託の商品は、国内だけでなく全世界の株式や債券、不動産などを組み合わせたパッケージ商品です。お菓子のアソート詰め合わせパックをイメージしていただければわかりやすいと思います。1箱買うだけで、チョコ、クッキー、日本のお菓子から海外のお菓子までパッケージされているイメージです。

つまり、投資信託は「1単位(1つの投資信託商品)の購入で、投資先を複数に分散」することが可能です!

1つの商品で全世界に分散して投資できるようなものもありますね。できれば、日本だけでなく、米国、そして全世界に分散して投資することをおすすめします。

 

積立投資は「あらかじめ決まった金額」を「続けて」投資する

続いて積立投資についてです。

投資をするならば、できるだけ安い価格で購入して、高い価格で売却したいところですよね。しかし、素人が安値と高値を見極めるのは非常に困難です。そんな素人が一度のタイミングで多額の投資をしてしまうと、価格変動の影響をモロに受けてしまいます。

 

ですので、投資を始めるなら、「あらかじめ決まった金額」(少額でもOK!)を毎月毎月「続けて」投資しましょう。このような定期・定額で行う積立投資のことを「ドル・コスト平均法」と呼び、自動的に安値の時は多くの投資を行い、高値の時は少ない投資をすることが可能になります。

 

その結果、定量で購入するよりも購入単価を下げることにつながり、投資するタイミングによる(値上がり、値下がりといった)リスクを抑える効果があります(図4)。

 

長期投資によってリスクを低減させる

最後に長期投資についてです。長い期間にわたり投資を続けると、投資資金を運用して得られた利益が更に運用されて増えていく「複利」の効果が大きくなる傾向があります。

(それを裏付ける資料については、第17回「新しいNISAについて解説!」の図3を再度確認してみてくださいね。)

買い付け後の保有期間が5年(短期)の場合ではその時代の浮き沈みの影響を受け元本割れになることもありますが、保有期間が20年(長期)の場合では概ね年率2~8%でのプラスになるとされています。長期であればあるほど、損をする可能性がどんどん低くなるということを理解しておけばOKです。

 

薬剤師とお金・投資の勉強

薬剤師は一生勉強と言われていますが、お金のことも一生勉強が必要です。これからは薬剤師飽和の時代です。「薬剤師になれば定年まで給料は右肩上がりで退職金もいっぱいもらえる」という時代は終わりました。それに伴い、薬剤師の生き方も多様化しています。


若い薬剤師なら投資のことはもちろん、将来の働き方・稼ぎ方まで考えておく必要があるのです。

そんな若手薬剤師の参考になればという想いから出版したのが
『知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金(マネー)の強化書』(株式会社じほう)です。

薬剤師に関連するさまざまなお金の話を、FP資格を有する2名の薬剤師、税理士、薬剤師イラストレーターと共に書き上げました。イラスト・図表・漫画を多数使用しているため、直観的でわかりやすい内容です。これ1冊で薬剤師とお金に関することが体系的に学ぶことができます。