第21回 薬剤師に適した投資信託の商品の選び方とは
木元 貴祥(きもと たかよし)氏
パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/
1986年生まれ
滋賀県出身日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。
●運営サイト
- 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト - メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説 - パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト
●著書
- 薬剤師国家試験のための薬単・病単・薬問・病問
- 薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本
- 薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳:
こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック - 新薬情報オフライン 新薬の特徴がよくわかる!
既存薬との比較と服薬指導のポイント - 知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金の強化書
株式会社PASS MED(パスメド)の木元貴祥です!
前回の第20回の記事「薬剤師に適した投資の考え方」では、普段忙しい薬剤師が投資を行う上で大切なポイントは「長期」、「積立」、「分散」、「非課税」の4つであることを根拠とともに紹介、それに適した金融商品が「投資信託」であることを解説しました。
NISAで投資信託商品を毎月積み立てることで大切な4つのポイントは実現可能でしたよね。とはいっても、NISAで購入できる投資信託の商品は多数あります(NISAのつみたて投資枠で購入可能な商品数は300種類ほど)。
そこで今回は、実際に投資信託商品を選ぶ際のポイントと、おすすめの投資信託商品をご紹介していきます!
投資信託商品の選び方
投資信託商品を選ぶコツは以下の3点です。
①手数料の低い商品を選ぶ
②インデックスファンドを選ぶ
③複数の国と資産に分散されている商品を選ぶ
順に解説していきましょう。
①手数料の低い商品を選ぶ
2000年代初頭までのかつての投資信託は、例え運用で利益が出ていても、「販売手数料」と「信託報酬(≒運用手数料)」によって、投資家への還元は微々たるものという印象でした。そのため、株価下落などのリスクのほうが上回ると判断し、投資信託に対して消極的な人が多かったです。
しかしNISAのつみたて投資枠で購入可能な投資信託の商品は、基本的に全て販売手数料はゼロ(ノーロード)です。また、最近では信託報酬が低い(0.5%以下)良質な投資信託が増えてきています。
信託報酬が0.1%前後の商品もありますので、初心者が最初に投資信託を購入するのであれば、「信託報酬0.2%未満(0.1%未満ならなおヨシ)」のものから選べばよいでしょう。
次項で解説するインデックスファンドであれば、ほとんどの商品が信託報酬0.2%未満です。
②インデックスファンドを選ぶ
投資信託には大きく分けてインデックスファンドとアクティブファンドの2つのタイプ(表)があります。
インデックスファンドとは、簡単にいうと「株の大企業セット」とお考えください。運用する際に基準となる指数(例:日経平均株価や米国S&P500)など連動することを目指す投資信託です。インデックスファンドは一般的に、日々の指数の変動にあわせられるよう自動化されたシステムによって運用されます。そのため、よくも悪くも平均的なリターンが得られます。コスト(信託報酬)も低いことから、「高いリスクは負いたくない」という慎重派に向いた投資信託といえるでしょう。
一方、アクティブファンドとは、専門家が独自の観点から調査・分析を行い、基準となる指数を上回る運用成果を目指す投資信託です。値動きは激しい傾向にあり、インデックスファンドに比べてリスクはあるものの高いリターンを得られることもあります。その分、信託報酬も高めです。こちらは「リスクを恐れずにリターンを狙いたい」という積極派に向いた投資信託といえますね。
この両者ではインデックスファンドのほうが信託報酬は低く、また、アクティブファンドに劣らない実績を残しているケースが多いことから、薬剤師が投資信託を始めるならば圧倒的に「インデックスファンド」をおすすめします。
③複数の国と資産に分散されている商品を選ぶ
日本の少子高齢化が進む一方で、世界はそうでもありません。私が子供の頃は世界の人口は60億人と学んだものですが、いつの間にか80億人を超えていますね。基本的に、「人のいるところ」に「技術」や「お金」が集まります。なので、日本だけでなく、世界に向けて分散投資を実践していくのがよいでしょう。具体的な投資信託の商品名は控えますが、投資信託を探すなら日本国内だけでなく、先進国や新興国まで幅広く投資できる「全世界分散型」の商品がおススメです(下図左グラフ)。「新興国はちょっと不安……」とお考えでしたら、先進国のみを対象とした商品もあります。
また、資産が分散されている投資信託もあります。例えば、株式40%、債券40%、不動産(REIT(リート)20%という具合に、投資する資産が分散されているタイプのものです(下図右グラフ)。
おすすめの投資信託商品
それではおすすめの投資信託商品です! 前提として、個人個人の考えもありますし、未来は誰にもわからないので、「万人に適した金融商品」はありません(汗)。
でも、家族や友人に勧めるなら「コレ」という具体的な金融商品を紹介します。
●eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
全世界の株式に投資できるインデックスファンドで、信託報酬は0.06%ほどと驚異の低さです。よく、略称の「オルカン」などとよばれています。「eMAXISSlim」と名の付くものは、業界最低水準の信託報酬を目指しているシリーズです。リターンを狙った長期投資では、最も一般的なものがこちらです。
●eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
日本以外の22の先進国に投資できるインデックスファンドで、信託報酬は0.1%ほどと非常に低めです。複数の先進国に投資できるものの、投資先の約70%は米国です。先進国は、戦争や紛争によるリスクが比較的低く、安定した運用が期待できます。
● 楽天・全米株式インデックスファンド(楽天VTI)またはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)
楽天投信投資顧問が運用しているインデックスファンドで、信託報酬は0.162%と低めです。投資対象は米国の企業です。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)という類似した投資信託もありますが、こちらは投資対象を米国の500の優良企業に絞っています。一方、楽天VTIは全米の企業を幅広くカバーしているため、これまで利益をあげられなかった小さな企業が大躍進を遂げたときに、その収益を拾うことができます。とはいえ、両者の運用成績やコスト面に大きな差はありません。どちらも優れたファンドです。
まとめ
投資である以上、元本割れのリスクはゼロにはできません。ですが、本記事で投資に対して前向きに考えられるようになったら、SBI証券や楽天証券などのHPから証券会社の口座を作ってみましょう。とにもかくにも、行動に移すことが大切です! ぜひ、行動に移していただけると嬉しく思います。
なお、本記事の内容および、もう少し踏み込んだ具体的商品の紹介については、拙書『知らないと絶対損する薬剤師のためのお金の強化書』(じほう)で解説していますので、ご参考にしてみてください。