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7月のアドバイス「服薬指導にちょっとした工夫を」

投薬の回数も少しずつ増え、患者さんと接する機会も増えてきている頃だと思います。少し嫌味なことを言われたり怒られたり、投薬回数を重ねていくと必ず嫌なことも起こります。

しかし薬剤師として服薬指導に少し力を注ぐことで、患者さんとの関係性を広げることもできます。そのためのちょっとした工夫をご紹介します。

薬剤師としての役割を自覚しよう

患者さんに、安心して正しい薬を正しく飲んでいただくために、欠かせない仕事はたくさんあります。

  • 患者さんが間違った飲み方をしない・自己判断で中止しないように注意を促す
  • 薬に対する理解度を測るための残薬確認をする
  • 病気の治療に対する意識向上を促す

などなど、例を挙げるときりがありません。

これらを行うためには、患者さん一人ひとりに合わせた服薬指導が必要です。皆さんは今、患者さんに合わせた服薬指導はできているでしょうか? 自分の服薬指導を振り返ることはあるでしょうか? 画一的な服薬指導では患者さんに想いは伝わりません。

一人ひとりの既往歴に応じたアドバイスを行う

患者さんの中でも、いつもの薬(一般的にDO処方)を受け取りに来る場合は「もう分っているから長々と説明されても鬱陶しい」と感じる方がいらっしゃいます。

そういった方に「朝食後に2種類を1錠ずつ、夕食後に2種類を1錠飲んでください。何か気になることはありますか?」などと説明したところで「はいはい、もうわかってますよ」といった返答をされてしまいます。毎回同じ薬に同じ説明では説得力がありません。

これを解決する方法の1つとして、薬の説明以外に季節に応じた説明を入れると少し印象が変わります。3つの例を挙げますので、ぜひ参考にしてください。

 

①糖尿病

一般的にお盆、年末、お正月などの連休中は血糖値が上がりやすいと言われています。

「休みが続く場合、食生活が乱れやすいため気を付けてください」や、秋など甘い果物が美味しい季節であれば「果物を食べ過ぎないようにしてください」など、一言付け加えてみてください。

ただ、何が何でもダメと言ってしまうと患者さんは反発します。どれくらいなら大丈夫か、検査値が分かるようであれば検査値をもとに詳細な説明できれば満点です。

②高尿酸血症

高尿酸血症の方であれば、5月から7月にかけて痛風発作が起こりやすいと言われています。そして高尿酸血症の薬は、実際に飲んでいても効いているかどうか自覚症状がほぼありません。血圧測定器とは異なり、血液検査以外では尿酸値が分からないのです。そのため、痛風発作が起こってから受診され、治療を開始したものの、途中で離脱される方も多いです。

そのような場合は、痛風発作の予防以外にも、心臓・腎臓の保護作用など付加効果の説明も併せて行うことが大切です。

また、5月から7月にかけては体から水分が出ていくことが多くなり、痛風発作も起こりやすいと言われているため「こまめに水分摂取をするように心がけてください」といったアドバイスも有効です。

③高血圧

高血圧の方は、夏場に下がり、冬場に上がる傾向があります。夏場に下がったことで、血圧の薬を飲まなくなる方も中にはいらっしゃいます。また反対に冬場に血圧が上がってきたとき、薬が効いていないと言われることがあります。

季節に応じて、血圧の変動などを理解しておくことも服薬指導の役に立ちます。

服薬指導でやってはいけないこと

急に患者さんから答えが分からない質問をされたとき、知ったかぶりの対応・医師への丸投げ・無視をするなどの対応をしてしまうと、患者さんからの信用を失うこととなります。何より、薬剤師の必要性が疑われてしまいます。

自分では分からない質問をされた場合、分からなくても少し時間を頂いて自分で積極的に調べる、もしくは誰かに相談するなど、患者さんが「自分のために一生懸命頑張ってくれている」と思える姿を見せることが信頼を得るきっかけとなります。

加えて、分からないことを調べて解決することで1つの知識となり、自分の財産になります。面倒だと思わず、患者さんのため、自分のためと思って問題を解決することを心がけましょう。

7月特有の要注意事項

この時期は湿気が多く、蒸し暑い時期でもあります。人によって体感温度が異なり、暑がりの方もいれば寒がりの方もいます。そのため、エアコンの温度調節に関して薬局内で意見が分かれることがあります。

自分自身が暑がりであれば、エアコンの温度を自分に合わせて下げるのではなく、タオルを持参して汗などをぬぐい、周りの方に衛生上不快感を与えないように心がけてください。反対に寒がりであれば、何か1枚羽織るなどして、寒さ対策をするようにしてください。

あまりにも自分の体に違和感がある・支障があるなどあれば、上長に相談して至適温度にしていただくように提案してみてください。

勝手に温度を変えると薬局内に新たな火種が生まれることがあるため、気を付けてくださいね。