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医薬品開発担当者の視点からお届け るなの気になる!医療ニュースメモ

第11回「製薬会社の社名の由来って?」

新型コロナウイルス感染症もなかなか落ち着かない中、新年度を迎えましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

最近は少し重めのテーマが多かったので、今回は閑話休題ということで、製薬会社の社名の由来からちょっと変わったものを何社か紹介させていただきます。みなさまは何社ご存じでしょうか?

 

■エーザイ

エーザイは、アルツハイマー型認知症のお薬、アリセプトで有名な日本を代表する製薬会社の一つです。

設立は1941年で、エーザイという社名は1955年に決まりました。それまでは「日本衛材株式会社」という名前だったのです。

由来について目星はつきましたか? 「衛材」をカタカナで「エーザイ」にしたのですね。

名前変更理由は、下記のように説明されています。

・書くのに手間がかかる。

・電話帳で引いても「日本」という字が何ページも続いていて見つけるのに骨が折れる。

・衛材の字が包帯材料業なるかのごとき印象を与えやすい。

 

私はカタカナのイメージが強かったので、もともとが漢字から来ていたというのは全く想像していませんでした。

エーザイと言えば、アルツハイマー型認知症の新規治療薬アデュヘルムが、アメリカにて公的保険の適用範囲が大きく制限されてしまったことが話題ですね。

なかなか厳しい状況ですが、次の治療薬候補もありますし、頑張ってほしいなと思います。

 

■アステラス製薬

アステラス製薬は2005年に山之内と藤沢が合併してできた会社です。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が有名でしょうか。

漢字+漢字=カタカナということで新たに誕生したアステラス製薬、どんな由来があるのでしょうか。

 

「アステラス」という名称は、「星」を意味するラテン語の「stella」、ギリシャ語の「aster」、英語の「stellar」によって、「大志の星 aspired stars」「先進の星 advanced stars」を表現したものとなります。また、日本語の「明日を照らす」にもつながるのです。

5文字のカタカナにたくさんの思いが詰め込まれていますね。

「明日を照らす」というのは有名かと思いますが、それ以外の意味はご存じなかった方も多いのではないでしょうか。

アステラス製薬は遺伝子治療薬にも力を入れていますが、AT132が治験ストップで少し躓いてしまいました。しかし遺伝子治療薬への取り組みを弱める考えはなく、これからも開発を進めていくようです。

画期的な新薬の創出に期待したいですね。

 

■ノバルティス

次に、外資の製薬会社ということでノバルティスを見てみましょう。

ノバルティスと言えば、1億円を超える薬価がついたゾルゲンスマが記憶に新しいかと思います。ディオバン事件なんてものもありましたが、現在も優れた医薬品を多数上市している世界的な製薬会社ですね。

ノバルティスは1996年にスイスのチバガイギー社とサンド社が合併してできました。さて、名前の由来はなんでしょうか。

外資は人の名前が由来になっていることが多いですが、ノバルティスは違うのです。

ノバルティスは、「新しい」(Nova)と、「芸術、技術」(Artis)のを組み合わせてできた社名です。

医薬品の開発成功率は年々低下しており、そんな医薬品の創出はまさに芸術と言えるのかもしれませんね。世界の患者さんを救う素晴らしいイノベーションに期待したいですね。

 

■ギリアド・サイエンシズ

次にギリアド・サイエンズを取り上げます。

ギリアド・サイエンシズは1987年にアメリカで創業された会社で、比較的新しい会社と言えるかもしれません。

最近ではCOVID-19治療薬レムデシビルで一般の方にも有名になりましたね。それまではあまりご存じなかった方もおられるかもしれません。

しかしギリアドは少し前にC型肝炎治療に革命をもたらした偉大な会社なのです。C型肝炎を「治る病気」に変えたのは、非常に大きな功績ではないかと私は思います。

さて、ギリアド・サイエンシズの社名の由来ですが、こちらも人の名前ではありません。

ギリアドの名前の由来は、古代より「治す力」があると知られていた木、「ギリアドバーム(Balm of Gilead)」なのです。

カナリア諸島原産でハーブやポプリに使われているそうです。ちなみにギリアドバームはシソ科になります。だからギリアド社のロゴがシソっぽい葉っぱ(木の葉)なのですね。

 

■モデルナ

最後にCOVID-19関連ということで、mRNAワクチンで一躍有名となったモデルナをご紹介しましょう。

モデルナは2010年にアメリカで創業した新進気鋭のベンチャー企業でした。現在はみなさまもご存じのとおり、COVID-19のワクチン開発に成功し、大きく飛躍しましたね。

ニュースにおいて大手製薬企業と紹介されていて、時代の変遷を感じたものです。

モデルナはCOVID-19のワクチンが有名ではありますが、HIV等の他疾患に対するワクチンの開発も進めており、またmRNAを用いた医薬品の開発も行っています。

mRNAを用いた医薬品やワクチンの開発は他の企業でも進められており、近い将来、モデルナ製にとどまらず、もっと多くのmRNA製剤が上市されることになるかもしれませんね。

そんなモデルナ(Moderna)の社名の由来は、「modified」(修飾する)と「RNA」の造語なのです。

mRNAを修飾する技術を用いて、医薬品やワクチンの開発にいそしむモデルナには、まさにぴったりの社名と言えるかもしれませんね。

 

■最後に

今日は製薬会社の社名の由来を少し取り上げてみましたがいかがでしたでしょうか。

薬局にMRさんが来られた際に、社名の由来を聞いてみると面白いかもしれませんね。薬学生の方は就活の時に調べてみると、企業理念と密接な関係があったりするなど、なかなか深い意味があったりして面白いですよ。

ぜひ社名の由来、調べてみてくださいね。