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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第19回「手根管症候群」

今回は手根管症候群についてです。最近、偶然この疾患の患者さんが続いていたので、どんな疾患なのか特徴や治療についてまとめました。

 

手根管症候群とは

さまざまな原因によって起こる正中神経障害の総称です。正中神経は手根管内を通っており、手根管が腫れることで圧迫されて痺れに繋がります。原因は不明のことが多いですが、女性で特に更年期以降に多く発症しています。

 

症状

手の痺れや痛み、手の使いにくさが現れます。この痺れの特徴として、痺れが見られるのは親指、人差し指、中指、薬指の半分(中指側)のみで、薬指の半分(小指側)と小指は痺れないという点が挙げられます。これは通っている神経が違うためです。

また、この痺れは夜間から明け方にかけて強くなり、手を使うことで増強し、手を振ることで軽減します。手の使いにくさに関しては、正中神経が親指を動かすための筋肉(短母子外転筋)にも影響するため、手で摘んだり掴んだりすることが難しくなる場合があります。

 

原因

先程も述べましたが、原因は不明のことが多く、もともと手根管が狭い方の手に物理的な負荷がかかって発症すると考えられています。続発的なものとしては骨折や関節リウマチ、透析、ガングリオンなどが挙げられます。また、女性に多いこと、ホルモンバランスが変動する妊娠中や授乳中の発症も見られることから、女性ホルモンが関係していると考えられています。

 

診断

夜間早朝に増悪する手の痺れと疼痛、短母子外転筋の筋力低下、Tinel徴候、Phlen徴候などから診断されます。

・Tinel徴候……手首を叩くと指先に痺れがくる

・Phalen徴候……手首を強く折り曲げることで痺れや痛みが悪化する

 

治療

まずは、手を酷使せず安静にすることが大切です。症状が軽く筋萎縮がない場合は、安静にして経過観察したり手首から指の付け根を固定して休ませるスプリントを装着したりします。痛みがコントロールできておらず、鎮痛がすぐに必要な場合はステロイドの内服や、ステロイド注射を2週間を目処に行います。

他にもビタミン剤や利尿剤、超音波療法などもありますが有効性を確立するエビデンスはありません。そして、重症やステロイドが効かない場合は手術が勧められます。

 

調べてみて

今回は手根管症候群についてまとめました! 手が使いにくくなることは日常生活での不便もとても多いと思うので、痺れだと軽く捉えずに整形外科を受診することが望ましいですね。

 

【参考】
・標準的神経治療:手根管症候群(日本神経治療学会)手外科シリーズ 1.手根管症候群(日本手外科学会)