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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第21回「電解質その2」

前回はナトリウムとカリウムについてまとめましたが、今回は電解質第2弾としてカルシウムとリンについてまとめます!

カルシウム

筋収縮や酵素活性、ホルモン分泌、血液凝固など様々な重要な場面に関与するカルシウム。多くが骨組織内に存在し、血中に存在するわずかなカルシウムのうちアルブミンと結合していないカルシウムイオンが生理活性を示します。

ヒトは通常の食事で1日に1000mgのカルシウムを経口摂取し、小腸から吸収、腎臓から排泄しています。この吸収と排泄のバランスは副甲状腺ホルモン(PTH)とビタミンDによって調節され、正常濃度が維持されています。

低カルシウム血症

摂取不足や吸収不足、過剰排泄などにより体内カルシウムが減少することありますが、通常は減少するとPTHやビタミンDによって補正されます。しかし、副甲状腺機能低下症やビタミンD欠乏症などではうまく補正されず低カルシウム血症になる可能性があります。

主な症状としてはテタニーや知覚異常、不安、イライラなどがあります。慢性的な低カルシウム血症の場合、食事と薬物療法でカルシウムとビタミンDを補充します。なお、テタニーが見られる場合はグルコン酸カルシウムの静注を行います。

 

高カルシウム血症

高カルシウム血症は過剰な骨吸収によって血中にカルシウムが放出されて起こります。この骨吸収の原因となるのが過剰なPTH分泌やがん、骨疾患などです。他にもカルシウムやビタミンDの過剰摂取によっても高カルシウム血症になる可能性があります。軽症では無症状の場合もありますが、口渇や多尿、食欲低下、筋力低下などの症状が現れる場合もあります。

これらの症状は特異的な症状ではありませんが、重度になると心電図でQT短縮が見られるようになります。治療は原因疾患の治療、水分摂取やループ利尿薬による排泄促進、リンによる吸収阻害などが行われます。重度の高カルシウム血症では血液透析が必要になる場合もあります。

 

リン

骨や細胞内に存在し、それらの形成をしたり核酸、細胞膜リン脂質などの重要な物質の構成要素になったり、エネルギー代謝に関与したりと体内にはかかせない存在です。食物から摂取されるリンには有機リンと無機リンがあり、有機リンはタンパク質の多い肉や魚、卵や乳製品など食材に元々含まれているものです。一方、無機リンとはベーコンやインスタント麺、缶詰などの加工食品に添加物として含まれています。

低リン血症

低リン血症には急性に濃度が低下する場合と時間をかけて濃度が低下する慢性的な場合があります。急性低リン血症は重度の低栄養やアルコール依存症、熱傷などの病態から回復する際に大量にリンが消費されることで発症する可能性があります。

慢性低リン血症は副甲状腺機能亢進症や利尿薬の長期使用などによって腎臓からの再吸収量が低下することが原因となります。通常、低リン血症は無症候性ですが、重度の状態が続いていると骨軟化や筋力低下といった症状が現れます。治療は原因の除去とリンの摂取です。症状や重症度に応じて経口投与もしくは静注します。

高リン血症

重度の腎機能障害や副甲状腺機能低下症などによって腎臓からの排泄量が低下することで起こる可能性があります。他にも横紋筋融解症や敗血症、腫瘍崩壊症候群などによって腎排泄量を上回る大量のリンが細胞内から放出されることでも起こります。低リン血症同様、無症状の場合が多いですが、低カルシウム血症を併発しているとテタニーなどの低カルシウム症状が現れます。

高リン血症ではリンを多量に含む食事の制限やリン吸着剤、血液透析で治療していきます。リン吸着剤としては炭酸カルシウムや炭酸ランタンなどがあります。

 

今回はカルシウムとリンについてでした。次回、電解質ラストです!

 

※基準値は医療機関によって異なります。今回は江口正信著『検査値ガイドブック第2版』(サイオ出版,2017年2月)を参考にしました。